13 反攻の狼煙
後半はユキ視点。
最近三人称視点っぽかったので、久々に(?)一人称の語り口調となっています。
形が変わろうが、サイズが大きくなろうが所詮は兵器。
機獣であれば負けることはない。
それが傲りであることをピコは実感する羽目になっていた。
異形の敵機に飛び掛かった機獣であったが、敵機はサイズからは予想だにしない機敏さで退いたのである。
「このっ…!」
名指しで前に出てきた以上それなりに勝機を見出だしているのだろう。
そんな敵の新型に正面から仕掛けるのは愚策であったと考え直すも、感情が言葉として漏れるのは仕方がない。
ピイッ!
「っ…!」
退いた機体を追おうとすれば、すかさず別の機体のレーザーが行く手に放たれ牽制された。
ヒュルッ
ベシイッ!
完全に攻撃圏内から外れた最初に狙った機体か牽制してきた機体のどちらを標的とするか迷えば、また別の機体のケーブルが機獣を叩く。
「くぅっ!」
その攻撃は機獣にこそダメージは無いが衝撃はピコに伝わり、物理的な足場の無い機獣は体勢を崩される。
『死ねや、オラッ!』
ピピピイッ!
そして4機目が複数方向からレーザーを同時発射。
以前似たような装備のポッドがいたが出力不足で脅威とはならなかった。
ヒュバッ
『『『『!』』』』
奥の手の跳躍を使っての回避。
新型であろうが跳躍の動きまでは追えなかったようだ。
『どこに!?』
必殺の連携反撃だったのだろう。
理外の手段で回避された新型の小隊がまごついた。
『墜ちろ、デカブツ!』
そこに他部隊所属の友軍機が急襲する。
『お前が墜ちろ!』
ピイッ!
意外なことに、射撃を回避され一番隙を晒していた機体がいち早く反応しレーザーを撃つ。
ジッ!
『うお!?』
反撃のレーザーにパルスガンの銃身を溶断され、急襲した友軍機が止まる。
「止まっちゃ駄目にゃ!」
ピイッピイッピイッ!
警告するも友軍機が動き出すよりレーザーが放たれるのが早かった。
ジッ、ジッ、ジッ!
『うわわっ!』
機体側面の武装、アームに接地脚、そしてスラスター。
何度か放たれたレーザーはそれらを次々に溶断していく。
『や、止め』
ピイッー!
助けに入る間も無く、反撃も移動も出来ないよう球体部分のみにされた友軍機にレーザーが集中する。
ボッ…
そして爆散した球体部分。
友軍機が撃墜された場所には、レーザーで先に解体されたパーツが宇宙空間に漂っていた。
(「う…。」)
目の前で友軍機が撃墜されたことに悲しみ、後悔、怒りなどが混じり合う複雑な感情に動きを止めたくなる。
(『…ふむ、見えたにゃわたし。』)
私に見えたのだからわたしにも見える。
通常機すらレーザーを集中しなければ撃墜には至れない。
機体が大型化したことで出力不足を解消出来るジェネレーターを搭載したようだが、MM製かつ機動力のある機獣であればレーザーは決め手にはならない。
(『ほら、行くにゃ。』)
「仕方の無い…。」というように私が促す。
(「分かってるにゃ!」)
ここで止まっても状況は悪くなるだけである。
弱気を振り払い敵機に向かう。
『そうだ、英雄はそういう奴らだよ。』
新型の小隊の(推定)隊長の言葉は、黒く濁ったドロリとしたものが多分に含まれていた。
~ユキ視点~
バシュウッ!
グラスフィールド機の右アームに保持された携行ロケットランチャーから弾が発射される。
ボンッ
ロケット弾はグラスフィールド機に向かっていたドギヘルス軍のポッドに命中し撃墜する。
『ユキ伍長、敵機は無視して良い。
大尉たちが露払いしてくれる。』
「は、はいっ!」
私はガイウス班長に返事を返すものの、ドギヘルス軍の機体が自分に向かって来ると、つい恐怖から引き金を引いてしまいたくなってしまいます。
(うぅ…、どうしてこんなことに…。)
心の中でそう嘆きますが半年前の自分の選択の結果なので諦めるほかできません。
元々情報の扱いが得意という自覚があり進路が明確に決まっていなかった私は、世情から事務官候補として軍に入隊しました。
その時の研修で行った、軍で利用され始めたポッドの戦闘シミュレーション。
軍に入隊するまで軍事的な情報に触れて来なかった私は、
(戦闘シミュレーションを行うことで兵士の方の視点
を得るわけですね!
ならば本気で取り組みましょう!)
と、同期の方が首を傾げていたことなど気にも留めずシミュレーションを行いました。
限りなく実戦に近い動作をするとは言えシミュレーションです。
敵機の動作の法則を見つけた私は、同期の中で圧倒的に高いスコアを出しました。
教育担当官が何故か頭を抱えていたことが、何か不都合があったのかと印象的でした。
それから数日後のことでした。
私のみが事務長官に呼び出され転属の通知、何が何だか分からないまま宇宙に上がりマルコシアス隊の方々から教導を受けていました。
……、あれ?
振り返って見れば私あまり悪くありません?
事務官候補がシミュレーションの結果が良いからパイロットに転属っておかしいです!
シミュレーションにしたって、結果によって転属の可能性があるなんて説明もありませんでした!
…………、分かってます。
必ずしも希望通りにならないことは。
軍全体がそういう動きになっていただけなんです。
それに今では慣れ……ては居ませんが、隊長を始めとした精鋭の皆さんに助けられここまで無事に来ました。
『ガイウスさん、今っす!』
ディック曹長の声に状況を確認すると、周囲に敵影は少なく正面には岩肌の建築現場が見えています。
『よし、目標敵要塞砲!
撃ちまくれ!』
ガイウス班長の指示にトリガーを引きました。
ポッドの武装のあらゆる攻撃が建設中の要塞砲に降り注ぎ、そして
ドゥウゥンッ
『ザザーッ…』
「!」
高エネルギーの波動が戦場全体に抜けた直後、私を含めマルコシアス隊に、その他のキャトラス軍ポッドが停止しました。
戦いはまだ終わらない。
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