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11 キャトラス軍、前進せよ!

~マルコシアス隊~


『どらあぁっ!』


ゴスッ、パァン!


 機獅子の前肢がドギヘルスのポッドを捉え弾けさせる。


「はあっ!」


スパパッ!


 機獣の爪がリーチを無視して敵艦を分断する。


『この化け物め!』


 母艦を墜とされた部隊が機獣に銃口を向ける。


ヒュッ


 しかしそれらは弾丸を吐き出すことは二度となかった。

 ドギヘルス軍ポッド部隊を横切った物体、機獣から離れ飛び回る斬艦ブレードが全ての機体を横一文字に断ったのだ。


『くっ、下がれ!

 後方の部隊と合流する!』


『進め進め!

 ドギヘルスの悪逆非道を許すな!』


 アンカーヘッドの砲撃に2体の機獣の猛攻。

 マルコシアス隊が崩した戦線を立て直すためにドギヘルス軍は後退を繰り返し、キャトラス軍は士気高く前進する。

 戦闘開始から数時間。

 マルコシアス隊を含むキャトラス軍敵要塞砲破壊部隊は、自軍の3倍以上の数の敵防衛部隊を蹴散らし、破壊目標である超巨大レーザー砲の建設現場を目前に捉えた。

 

















~要塞「ゲート」要塞砲「偉大なる(グレート)栄光(グローリー)」防衛隊~


ビッ!


…ボッ


『よし、当たった!』


 長い銃身から閃光が放たれ、一拍後に遠方で爆発が起きる。


『またか!?

 やっぱりお前才能あるな!』


『いや、FCSのおかげだよ。』


 昨日バレット隊と交戦した徴用兵の彼らは、FCSを搭載した正式な軍用機が与えられ戦闘に参加していた。


『正規兵様らが星に下がっちまったおかげでな!』


 青年タロの少し年上の若者ジロは、昨日帰還してから聞かされた作戦に不満がある。


『…僕もそう思うよ。』


 これまでジロが不満を溢す度に宥めてきたタロも、さすがに宥める気にはなれなかった。


 “消耗した敵軍を練度の高い部隊が撃退する”


 単純な物量差を存分に活かしたこの作戦、その前提部分を徴用兵(彼ら)と一部残された正規兵が担っているのだ。


『おい、お前ら下がれ!

 前線が崩れた!』


 命令違反の罰を理由に残された、哨戒隊隊長であったタロ達の小隊を率いる正規兵のフウレンが後退を指示する。


『後退したら建設現場が敵の射程になりますよ!?』


 タロはフウレンの指示が命令に違反することを心配した。


『このままここに居ても敵に殺されるだけだ。』


 戦死か命令違反の後の懲罰か。

 別に誇りがあるわけでもない一兵卒のフウレンが選ぶのは決まっていた。

 ついでに部下を生き延びさせるのもそう(命令違反)することに対する理由付けになるのだ。

 

(まぁ、後があるかすら不明だしな。)


 押し込まれて行く戦線に、少なからず軍略の知識があるフウレンはドギヘルス軍の敗北を薄々感じていた。


















~要塞「ゲート」大ハッチ前戦場~


タタタッ!


『わっ!』


ボンッ


 パルスガンの射撃を受けてドギヘルス軍ポッドが墜ちる。


ゴォ


 そしてドギヘルス軍ポッドを撃墜したキャトラス軍ポッドの前を、ドギヘルス軍ポッドが不用心に通過する。


グルンッ


『貰った!』


 キャトラス軍機のパイロットはすかさず機体を旋回させ、通過したドギヘルス軍ポッドにパルスガンの狙いを定める。


『しまった!?』


 ドギヘルス軍機のパイロットも自機が狙われていることに気付いた。


カチンッ


ゴオォッ…


 長時間の戦闘は両軍を確実に消耗させていた。

 特に一機あたりの負担が敵軍機の3倍以上であるキャトラス軍機にはその影響が顕著に現れていた。


バッテリー()切れっ…!?』


 狙いが正確に付けられていたパルスガンからは弾が発射されず、不用心なドギヘルスパイロットは無事に離脱して行った。


『おりゃあぁ!』


 そして弾切れのキャトラス軍ポッドに、また別のドギヘルス軍ポッドが突撃を仕掛けた。


ダダダダダッ!


『はあっ!』 


グリッ


 対するキャトラス軍ポッドは進行方向の急転換で銃撃を回避。

 速度を急激に落としたキャトラス軍ポッドと、突撃を仕掛けたドギヘルス軍ポッドが急接近する。


ビュンッ


『うわあぁ!』


 そのまま衝突する瞬間ドギヘルス軍機のパイロットが目撃したのは、キャトラス軍ポッドのアームから延びたレーザー。


ズンッ…!


 衝突した両機。

 しかし動き出したのはキャトラス軍ポッドのみ。


『おい、大丈夫か!?

 …無理せず一旦補給に下がれ。』


 新たにやってきたキャトラス軍ポッドは補給から戻ってきたようだ。


『ああ、ここで死んでられないしな。

 後は頼んだ。』


『任せな。

 なるべく早く戻ってこいよ。』


 手短に互いの武運を祈って離れるキャトラス軍ポッド2機。

 その場に残されたドギヘルス軍ポッドのコックピット部には、レーザーナイフによる穴が開いていた。

 数の上でキャトラス軍を大きく上回っているドギヘルス軍。

 しかし十分な訓練を受けここまで残ったキャトラス軍の正規兵を相手に、ろくな訓練すら受けていない徴用兵はその数を次々に減らしていくのであった。

 

 
















~???~


「接続完了、コンディションオールグリーン。」


 要塞「ゲート」。

 その隠された格納庫内では王の密命を帯びてやってきた小隊が出撃間近であった。


『ああ、痛みが消えた。』


『これが俺たちの新しい身体か。』


『任務は……、ターゲットの捕獲?』


『関係()ぇ、毛玉野郎は皆殺す。』


 マルコシアス隊が攻略する巨大レーザー砲の建設現場近くのハッチ、4機の異形は密かに発進する。

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