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9  帰還

主人公の活躍は次回から

因みにここ数話の後書きのTopicは作者のノリです

~マルコシアス隊~


「わたしは受けようと思うにゃ。」


 これまでの話し合いを無駄にするような結論を出すピコに、集まったメンバーは分かっていたように頷く。


「ま、そう言うと思ったにゃ。」


「お人好しにも程があるがな。」


 タマとシンは言葉とは裏腹に、喜悦や闘志を滲ませる。


「ここで退くのは俺たち(マルコシアス隊)らしくないしな。」


「中佐は最初(臨補時代)からそうでしたね。」


 ガイウスとアイリス中尉が言うように、マルコシアス隊は「危険だから退く」ということをしていなかった。

 これは危機管理が出来ていないわけではなく「目前の危険から退いた結果もたらされる更なる危険」と天秤に掛けた結果なのである。

 だからこそマルコシアス隊は英雄(エース部隊)と呼ばれるに至ったのだ。


「それでは敵軍領域外縁偵察任務、受領します。」


 ………………………。

 ……………。

 …。


 というやり取りが数時間前のこと。


ドオォ!

 

『くっ…、退け!

 撤退だ!』


 母艦を沈められたドギヘルスの哨戒部隊の生き残りが離脱していく。

 マルコシアス隊は要塞「ゲート」の守備領域に時折侵入しつつ、偵察任務に支障の無い範囲で友軍の救助活動を行っていた。


『助かった、もうだめだと思っていた。』


 離脱していった部隊に攻撃を受けていた脱出艇と護衛のポッド2機を収容作業が開始される。

 ポッドも脱出艇も大きな損傷があり、もう少し遅ければ助からなかったことは想像に難くない。


『無事で何よりです。』


 案内役をかって出たバリー大尉が代表して答えた。

 脱出艇に乗れなかったクルーや撃墜されたポッドのパイロットがいる以上無事とは言えないと思う者もいるだろう。

 だがそれ(犠牲者が出ること)が戦争であり、帰還できたことを喜ばない理由にはならないのだ。


『収容完了、周囲に救難信号無し。

 アンカーヘッド、前進します。』


 ポッドのパイロット2名、脱出艇の乗員37名を救助し、アンカーヘッドは進み出す。


『おーい!

 その艦待ってくれ、俺らも載せてくれ!』


 どうやらパイロットは5名に訂正する必要があるらしい。


 
















~ドギヘルス徴用者臨時編成哨戒隊~


 キャトラス軍正規部隊との遭遇戦、一気に3機撃墜された哨戒隊は及び腰になっていた。


『「刃持ち」ってマジかよ!?』


『何でこんなとこに!?』


『落ち着け!

 そんなわけないだろ!』


 情報が規制される中でもキャトラス軍のエース部隊の噂は一般市民の間でも話される。

 そして情報が規制されていることで実態は隠され、結果として徴用者等の元後方配置の兵には近接装備(ブレード)=「刃持ち」という認識になるのもおかしいことでは無い。

 

『このっ!』


ダダダダッ!


 先ほどは同士討ち(フレンドリーファイア)を避けるため撃てなかった機体が、敵討ちとばかりにマシンガンを放つ。


…ヒュン、ゴォッ!


 しかしFCSの補助の無い射撃は高機動仕様機を捉え切れず、回避したキャトラス機が射撃した機体に迫る。


『させん!』


ダダッ!


 そこに哨戒隊隊長機が割り込み、キャトラス機は一旦離脱する。


MG(マシンガン)3機は俺とこいつ(高機動機)の相手だ!』


(SGとLR)はどうする!?』


LR(レーザーライフル)は母艦まで下がれ!

 SG(ショットガン)は他3機の相手だ!』


 当初の予定と異なる指示。

 中距離火器を装備した正規軍3機に、近距離火器装備の4機では圧倒的に不利である。

 

『無理だ、死んじまう!』


 当然、該当する機体のパイロットから抗議が上がる。


『撃墜しろとは言わん!

 援護させなければ良い!』


『隊長!』


 哨戒隊隊長が指示に気を取られていると、敵高機動機に仕掛けている機体のパイロットに呼ばれる。


『なんだ!』


ボンッ


 レーダーを見て指示を出していた哨戒隊隊長が顔を上げると、ちょうどモニターにはMG装備機が一機撃墜されたところだった。


















~バレット小隊~


タタタッ、タタタッ!


『畜生、当たらん!』 


タタッ、タタッ、タタッ!


『回避だけは一丁前かよ。』


 バレット小隊の二番機、三番機は脱出艇と敵母艦の中間、単機敵陣で戦う隊長の援護のため敵機の数減らしを試みていた。


ビッ!


『おっと!』


 近づいてしまえば早いのだが、時折飛んで来るレーザーがそれを躊躇わせていた。

 一発程度ならポッドに問題は無い。

 ただ脱出艇はそうもいかないためターゲットを切らせるわけにはいかないのだ。

 

『隊長も流石にヤバそうだ。』


 隙を見て一機撃墜したきり、チェンバー機は敵部隊の隊長を含めた3機に囲まれ反撃出来ないでいた。

 ここに戦力比が4対8での拮抗が発生している。

 しかしこの場にはそれ以外の要素があり、それが拮抗を大きく崩した。


ボフンッ、ボフンッ!


 チェンバー機と敵MG装備機の戦闘が行われている直中と、射撃するB2、B3機の前方に二度(ふたたび)煙幕(スモーク)が焚かれた。


『今だ、撃ちまくれ!』


 部下に指示を出したハロルド小尉は咄嗟にキャプチャーしたレーダー情報を頼りに、煙幕で視界の悪い中機体を迷いなく進める。


ぼやっ…


ズバッ!


(一つ、)


 レーダーからさほどずれていない位置で見えた影を切りつけ次に向かう。


すうっ


『おわっ!』


ズバッ!


(二つ!)


 煙幕が薄れ視界が戻って来るがもう一機を切り伏せる。

 

『お前を倒せば!』


『!』


ドパンッ!


 煙幕を利用し持ち場を離れて来ていた機体の散弾がチェンバー機を捉えた。


『やった!』


バキン…


 チェンバー機の装甲が砕ける。


ブンッ


『は?』


ザッ!

 

 しかし振るわれたレーザーブレードに、パイロットが油断していたSG装備の機体は分かたれた。


『全機離脱!』


『なっ、それが目的かっ!?』


 ハロルドが発した指示に、身構えていた哨戒隊隊長は己の判断ミスを覚る。

 レーダーにはいつの間にか離脱していた脱出艇と3機に減ったドギヘルス軍のポッド。

 マシンガンでは追撃が不可能な位置まで離れた敵部隊は、見事自軍の領域から逃げおおせた。


『まだっ!』


ビッ!


 マシンガンでは追撃不可能な距離、唯一残った青年のLR装備機が最後の一発を撃つ。


『!』


『隊長!』


 ダメ元での一撃。

 しかしその一発は離脱する部隊の最後尾を行くチェンバー機に命中し、レーザーブレードが宙に舞った。


『問題無い、アームが飛んだだけだ。』


 キャトラス宇宙暦3023年8月13日。

 再編が完了したキャトラス軍に、作戦行動中行方不明であった兵の一部が生還。

 特に脱出艇を連れ自力帰還を果たしたバレット小隊隊長のハロルド・チェンバー小尉は、ドギヘルス軍機6機をレーザーブレードで撃破したことから「切り裂き(リッパー)」として、ドギヘルス軍資料に名を残した。

Topic

 キャトラス軍ポッドの仕様は主に、高機動、高火力、高速、狙撃、長期戦補助の5種。

 とはいえ追加部品には互換性があるため、任務内容や個人の好み(小尉以上)で様々なバリエーションが選択可能。

 ハロルド・チェンバーは元々火力寄りを好んでいたが教導後は高機動仕様をベースとした機体に搭乗している。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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