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閑話 day3 脱出の壁

今回も午前0時の更新です。

主人公がちらっと出てくるけど閑話です。

~ドギヘルス徴用者臨時編成哨戒隊~


 要塞「ゲート」周辺宙域。

 十数時間前まで弾丸の嵐が吹き荒れていた場所を、ディスクレーダーを背負った輸送艦が巡航していた。


『はぁ~~…。

 めんど臭ぇなぁ。』


 その輸送艦の船倉内、ポッドに待機する徴用兵の若者が溜め息を吐き愚痴を溢す。


『全く…、その通りだな。

 正規兵様らは休みなのによ。』


『仕方ないよ。

 徴用兵部隊(僕ら)はあまり消耗していないんだから…。』


 若者に同意を示すもう一名に、仕方ないと言いつつ複雑そうな青年。

 

『大体よぉ、敵さん(キャトラス軍)もいないじゃないか。』


『お前たち、作戦行動中だ。

 暇ならレーダーでも監視していろ。』


 青年に言い返す若者だったが、上官に注意され口を閉じる。


(んなこと言われてもそのレーダーが役立たずじゃ

 ねぇか…。)


 輸送艦のディスクレーダーとリンクしたポッドのレーダー表示は、ノイズが多くまともに機能していなかった。

















~マルコシアス隊~


 キャトラス軍軍事活動臨時大拠点「ゲートキーパー」周辺宙域。

 ピコを始めとするマルコシアス隊上官クラスの面々は、先ほど届いた電子文書(メール)を前に話し合いを行っていた。


「将官クラスから“態々”依頼とはにゃ。」


「主力が動かせない以上、我々のような隊(独立部隊)が動くしか

 ないのでしょう。」


 タマのやや棘のある言い方に、バリー大尉が推察を述べる。


「依頼者はチェンバー小将。

 依頼内容は敵軍領域外縁の偵察。

 指示としては現状妥当だと思われます。」


「あんた、アイリス…だったけか?

 チェンバーはウィングの敵対派閥の小飼だ。」


 アイリス中尉はビルフィッシュ時代から艦にて戦況観測官と分析官を兼任し、その類い希なる能力を発揮して部隊をサポートしている。

 そんな情報処理能力に長けるアイリス中尉の意見を、出自の関係で知った特殊な情報を捕捉して否定するシン。


戦場(こんなとこ)まで来てまでやるにゃ?」


「やるとしたら「だからこそ」だからだろうな。」


 敵軍を前にして尚目的を違えている可能性が高いことに嘆くピコに、ガイウスは現実的なことを言う。


「「「「「……………。」」」」」


 依頼に対して否定的な意見が多く挙げられ、ブリーフィングルームの空気は重くなる。


「……では却下でよろしいですか?」


 バリー大尉が沈黙を破り、隊の方針の決定を問う。


「………。」


 再編が完了すれば否応なしに次の戦いが決戦になる。

 ならば敵軍が何かを仕込んでいないか等を確認しておきたいところであるのは分かる。

 また、仮に権力闘争(そういうの)の一環であったとして後ろから撃たれるわけでもない。


(……あれ?

 もしかして裏がどうでも変わらないにゃ?)


 思考の結果、差は無いという結論に至る。

 

「隊長、我々(マルコシアス隊)は隊長の決定を支持します。」


 ピコが思考に沈んでいる間に話しあったのだろう。

 バリー大尉の言葉に異を唱える者はいなかった。

 自身を除く全員の視線が集中し、ピコは無駄に緊張しながら口を開いた。


















~ドギヘルス徴用者臨時編成哨戒隊~


 自軍領域外縁をなぞるように移動すること数時間、哨戒隊の輸送艦は何事も無く復路を航行していた。


『あ~~っ…。

 無駄に疲れただけかよ。』

 

 行きと同じように始まる会話、まともに機能しないレーダーを見ての警戒は歩哨任務の何倍も精神的な負担がかかった。


『でもよ、戦闘になったところでどうするってはなし

 だろ?』


 哨戒隊はポッドの中隊。

 哨戒隊の規模としては大きく、当然武装もしている。

 

『機動戦闘の経験なんて無いですからね…。』


 青年の言うことが全てを物語っている。

 徴用が行われたのは「ゲート」攻略戦の直前、元々戦場に出ることを考えられていない徴用兵に訓練の時間は無きに等しい。

 数がいたとしても正規兵相手に機動戦闘など出来るわけがなく、それゆえ彼ら(徴用兵)のこれまでの戦闘は二回とも後方からの長距離武器での支援射撃に限られていた。

 

『お前らはまた

 『ビビ-ッ!ビビ-ッ!』

 出撃準備!』


 またもや私語をし始めた部下への注意は警報で戦闘支持に変わる。


『敵部隊を探知!

 小型艇(ボート)1にポッド4!』


『全機発進!

 近接装備(ショットガン)標準装備(マシンガン)長距離装備(レーザーライフル)での敵ポッド一機

 につき3機一組(スリーマンセル)であたるぞ。』


 彼らが発見したのは、今まさに脱出しようとしていたバレット小隊。

 偶然にもキャトラス軍とドギヘルス軍の戦力比そのままの相対となった。


















~バレット小隊~


 相対する合計16機のポッド。


シュルルルッ!


 4対12に分かれた戦いは、脱出艇からの飛翔物により始まった。


『ミサイルかっ!?

 迎撃!』


ビシュッ…、ビシュッ

ダダダダダッ

ドンッドンッ


 これに対しドギヘルス側の指揮官は撃墜を指示。

 通常実体弾、散弾、レーザービームが、たった一発の飛翔物目掛け放たれる。


ドッ、ボフンッ!


 マシンガンの弾が命中し飛翔物は爆発、広範囲に濃い粉塵を撒き散らす。


煙幕(スモーク)だと?

 …しまった!』


 敵の行動に訝しげにする哨戒隊隊長であったが、意図を察して焦る。


『見えなくてもレーダーが…何!?』


 レーザーライフルを装備した機体のパイロットは、レーダー表示を見て勘撃ちしようとして困惑する。


『隊長、レーダーに不調が!』


『周辺警戒!』


『うわぁっ!』


ズッ…!


『なっ、こいついつの間に』


ザンッ!


『下がれ、一機速いのがいる!』


 復活したドギヘルス軍機のレーダーには、隊列後方に回った敵一機と9機に減った味方機が戦況の変化を示していた。


『ひぃっ、来るな!』


『誰かあいつを援護しろ!』


『駄目だ、味方に当たっちまう!』


 接近する敵機に対処しようとするパイロットだが、長距離装備(レーザーライフル)で近接戦に対応できる技量は無い。

 更に不幸だったのは、徴用兵に与えられた機体にはFCSなど積まれておらず、標準装備(マシンガン)の機体が迂闊に援護出来なかったことだろう。


ズパッ!


 そして遂にレーザーブレードがライフルの銃身を切り落とす。

 再び振りかぶられるブレード。


『ぁぁ…、「刃持ち」…。』


ザッ!


 抵抗の手段を失ったその機体は、パイロットの諦観の言葉を最後に伝え、溶断されたのであった。

 

Topic

 脱出艇は敵の攻撃対象から外れるように一切の攻撃手段を持たない。

 唯一の装備である4発の煙幕弾は特殊加工された粉塵が使用され、視界を奪うだけでなくレーダーも一時的に妨害が可能である。

 これにより生存率が高められているが、ポッドの台頭により元々少ない有効活用されるケースが更に少なくなっているらしい。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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