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8  無意味な奮闘

ほぼダイジェストで流します

~本隊第一分隊所属特別攻撃高速化艦隊~


ビシュウッ!


ドッ…ドゴオォッ!


 レーザービームが射線上のドギヘルス軍ポッドを消滅させながら、目標であるドギヘルス軍巡洋艦に命中。


ドオォッ


『何っ、巡洋艦が!』


『あの火力は何だ!?』


 一撃で轟沈した自軍の巡洋艦に、防衛のポッド部隊が戦慄する。

 この攻撃を行ったのは「アーチャーフィッシュ」。

 1ヶ月前に完成した「キャノンヘッド型強襲艦」の三番艦である。

 この艦は、本来本隊所属の予定であった一番艦(「キャノンヘッド」)がホワイトケートス母艦となったため、本隊所属艦として急遽建造されたのだ。


「周囲の敵艦を全て排除しました。」


「特速所属部隊に告ぐ。

 当艦隊は現地点を確保し後続と合流する。

 まずはエリア内の敵機を掃討。

 その後は接近する敵艦を迎撃せよ。」


 この指示により高速化改修が施された駆逐艦9隻は一辺を4隻とする三角陣形に展開。

 部隊旗艦「アーチャーフィッシュ」を中心とした10隻のキャトラス軍艦は、重巡洋艦や戦艦で形成される後続が到着するまで鉄壁の守りを見せたのであった。


















~マルコシアス隊~


 攻防戦が開始されて暫く。

 本隊の主力艦隊も合流し、戦闘は激しさを増していた。


『第5駆逐艦大隊が全滅。

 残存する部隊がこちらに向かって来ています。』


 初期から戦闘が継続されているこのエリアは最前線。

 敵艦隊の砲火に要塞からの長距離攻撃に、駆逐艦が堪えきれる筈も無く戦線の一角が崩壊する。


「了解にゃ。」


 敵軍は第5駆逐艦大隊の残存部隊を見送りはしないだろう。

 じきに撤退する部隊を追って、敵の大部隊がやって来る。


『どうするんだ、隊長?』


 その前に後退して戦線を立て直すか、追撃される部隊の救援に向かうか、シンの言いたいことはこういうことだろう。


「マルコシアス隊は撤退援護に向かうにゃ。

 ポッド班は必要があれば艦で補給。」


 後退したところで現在相対している敵部隊と追撃部隊が合流するだけである。

 であれば第5駆逐艦大隊を全滅させたことで油断している部隊を、あえて前進して攻撃することで不意を突いた方が有利になるだろう。

 それとは別に一点。


「シン、なるべくポッドで戦うにゃ。」


 この日は全域で混戦の模様で決着が着かないことは明白であり、引き上げの際のために戦う力は温存するべきだ。

 特にピコやシンの使用する四つ足形態は激しく体力と魔力を消耗する。


『余裕があればな。

 行くぜ、金獅子(ネメア)!』


「ちょ!?」


 注意したにもかかわらずシンは機獅子となり単騎、追撃を行う敵部隊目掛け宇宙を掛けて行った。


「ああもう!

 補給の必要のない者は行くにゃ!」


『了解っす!』


バチンバチンッ!


 空荷となった弾倉箱を分離(パージ)する。


ゴォッ


 多少軽くなった機体は大型スラスターの推力に押し出され急加速。

 シン、ピコ、ディックの三名が先行しての、マルコシアス隊による追撃部隊迎撃が行われたのであった。


 

 















~キャトラス軍本隊主力艦隊~


 キャトラス軍総大将が指揮する超弩級宇宙戦艦「リヴァイアザ-」。

 作戦指揮本部を兼ねる軍艦の一室、そこにある円卓にキャトラス軍とドギヘルス軍が相対している様子が簡易図で示されていた。

 

「第5駆逐艦大隊の全滅により左翼部戦線後退。

 また右翼部、中央部ともに損耗拡大中。

 特に中央部の駆逐艦大隊複数からの連絡が途絶えた

 ままです。」


 戦況観測官の報告と同時、円卓に写し出されている簡易図が更新される。

 

「………………、むぅ…。」


 更新前と比較して全体的に僅かに後退した前線と、前線から消えた各艦隊を示すマーク。

 特にキャトラス軍側に大きく折れた左翼部の前線と、前線に残ったマークの大半が元より縮小していることを読み取り、タシロ将軍は小さく唸る。


「これ以上の戦闘は無意味だな。」


「何を仰る!?

 戦争の勝利は目前なのですぞ!」


 撤退を仄めかした将軍に食って掛かる好戦派の中将。

 そして発言はしないまでも同意するように頷く数名。


「ならば貴官らが前線に赴くか?」


「おお!

 俺は名案だと思うぜ?」


「「「「………。」」」」


 徒に犠牲が増える手を推す好戦派の将官らを睨みながら問うウィング中将と、半ば本気でそう思っていそうな表情で同意を示すキングハート中将。

 直令の件から何かと協調するようになったキャトラス軍の二大巨頭の発言に、黙りこくるしかない好戦派の面々。

 それもその筈。

 好戦派の面々の思惑はこの戦争で実績を作ることで、戦後にあると思われる直令に関する査問で減刑されることであった。

 この期に及んですら保身を考えるような者達に、自らが前線で戦う覚悟などありはしないのだ。

 

「……反対意見は取り下げか?」


 タシロ将軍の確認に、継戦を唱えた中将は渋々頷く。


「将軍、それでは?」


「ああ…。

 全軍に通達!

 本日の作戦行動を即時終了。

 各部隊、準備が整い次第速やかに撤退せよ。」


 キャトラス宇宙暦3023年8月12日。

 未明のドギヘルス軍航空機部隊の急襲に端を発するこの日の戦闘は、戦況が芳しくないと判断したタシロ将軍の指揮によりキャトラス全軍が撤退。

 この戦闘では初日の半分に満たない戦闘時間にもかかわらず、両軍合わせ初日に匹敵する戦死者が出たと記録されている。




 

本文中の「全滅」は部隊の三~四割が損耗したという意味合いです。

二日目のキャトラス軍の犠牲はほぼ駆逐艦隊が占めていたり…。




いつも読んでいただきありがとうございます。


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明日(2024.2.3)の午前0時に閑話を投稿します

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