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4  集結する両陣営

会話多めの閑話的なパートです

~ドギヘルス軍最終要塞「ゲート」~


 貴族私兵団の大艦隊が守備していた「ゲートキーパー」が電撃制圧されてからおよそ1ヶ月。


『キャトラス軍はいつ攻めて来るんだろうな?』


『分からないよ…。

 けどアレが完成する前には確実に始まると思う。』


 歩哨任務につく徴用された若者達は話す。


『数はこっちが上なんだ。

 こっちから仕掛けないのか?』


 そう話す彼は「ゲートキーパー」にキャトラス軍が集結し始めた当初からこの意見を変えていなかった。


『またそれか。

 ちまちまやるより一気に片付けたいんだろ?』


『その通り。

 出る回数が少なければ、それだけ生き残れるって

 な?』


 実際はキャトラス軍集結の初期に、正規の部隊が駆逐艦大隊で襲撃を仕掛けたりしたのだが、キャトラス軍が制御する「ゲートキーパー」の火砲の餌食となっていた。

 皮肉なことに「ゲートキーパー」の堅牢さを体感することとなったドギヘルス軍は、結果としてキャトラス軍の集結を指をくわえて見ているだけとなったのだ。


『おい!

 貴様ら、真剣にやれ!』


 それを知る正規軍兵士のポッドが通りがけに叱って行った。


『はっ、申し訳ありませんでした!

 ………。

 …ちっ、下っ端が偉そうにしやがって。』


『お前らが不甲斐ないから俺らみたいなのが引っ張り

 出されるんだよ!』


 正規兵がいなくなると不満を口にする二名。


(言い過ぎだ。

 それには同意するけどね…。)


 歩哨部隊で一番若い青年は思う。


(…母さん、心配してるんだろうな。)


 ドギヘルスでは軍事関連は全て軍が管轄している。

 徴兵に関しても「一般企業の設備を軍が使用するため」という理由が「軍需品生産の正規兵を前線に配置するため」という理由と半々になっていた。

 強制徴用されても不満が高まるだけで済んでいるのは結局のところ「戦うのは正規の兵士」という意識があるに他ならない。

 こうした不正は雑に隠蔽され、しかしその齟齬は後にドギヘルスの永きに渡る傷をもたらす要因となったのだ。


















~キャトラス軍制圧下「ゲートキーパー」~


「つまり要塞「ゲート」を守備する部隊の大半が弱兵

 だということか。」


『はい、残念ながら。』


「下手に長引くよりは犠牲も少なかろう。

 そちらはどうだ?」


『シバ-ズ家当主の呼び掛けた貴族家は全て協力者と

 なりました。

 当初の予定より多くの兵員が確保できましたが、物

 資が不足気味です。』


「ならば追加で物資を支援しよう。

 早急にリストを送るように。」


『はい、こちらでも物資の調達を続けます。』


「うむ、物資はあるだけ良い。

 物資を必要分調達でき次第動くように当主に伝えて

 くれ。

 手筈通りに頼むぞ。」


『了解しました。

 それでは失礼します。』


「ああ、新しいキャトラスとドギヘルスの友誼を。」


















~ガウルフ王家~


「陛下、シバ-ズ家と周辺各家、その他辺境領に不審

 な動きありとの報告です。」


「……王領領域線に兵を配置しろ、精鋭を回せ。

 王都の守備も拡充するぞ。」


「しかしそれでは対キャトラスの攻撃隊が…。」


「既に三倍の兵力を置いているのだろう?

 構わん。」


「しかし今更作戦の変更など!」


「煩いな。

 王都の守備が最優先だと言っている。

 …衛兵、連れて行け。」


「なっ!

 陛下、私はドギヘルスのためを思って!

 お考え直しを、陛下ぁ…っ!」


「………。

 最後まで煩い奴よ。

 我を前に「ドギヘルスのため」とは。」


(まさか身近に謀反人がいたとはな。)


「軍の精鋭を王都の守備にする。

 領域線は貴族どもに守らせろ。」


「…はっ。」


(うむ、新しい軍務卿は忠臣だな。)


 近衛兵数名以外がいなくなった謁見の間で、ガウルフ王は新たな宰相につける忠臣の思案を開始した。


















~ピコ視点~


 マルコシアス隊が「ゲートキーパー」を制圧してから1ヶ月以上が経ち、カレンダーは8月となった。

 この期間にキャトラス軍は集結を完了し、いつでも要塞「ゲート」攻略を開始可能な状態を整えていた。


「何でまだ待機しているんだ?」


 日課のトレーニングを終え、アサメイ小尉を連れて談話室にやって来たシンが、部屋に入るなり言う。


「何か調整しているみたいにゃ。

 …てか、シャワー浴びて来いにゃ。」


 シンに答えたピコだが、汗の臭いに顔をしかめ談話室から出ていくようにジェスチャーをする。


「あん?

 …わりぃ、そうする。」


 ぞんざいな扱いに文句を言おうとしたシンだが、談話室にいたミーコやナナサ、メグにユキといった雌の面々(女性陣)のジト目に気付き退室していった。

 退散したシンを追って退室する際小さく頭を下げていたアサメイ小尉に、ジト目をしていた雌の面々(女性陣)は苦笑いで返した。

 

「何か分かりあってる雰囲気っす。」


「仲が悪いよりは良いと思う。」


「立場に腕っ節は関係無いからな。」


「うわぁ…。」


 以上が一部始終を目撃していたディック、トーマス、ガイウス、トムの会話だとか。(ハンナ談)

 というかトム、ドン引きって何?(圧)


 …………………。


 …………。


 …。


 そんな戦場にありながらの平和なやり取りのあった一時。

 しかしそれは嵐の前の一時。


「ドギヘルスで反乱が発生!?」


 キャトラスとドギヘルスの長きに渡る戦争。

 その戦争におそらく終止符を打つ大決戦。

 その火蓋は「ドギヘルスでクーデター発生」との報により慌ただしく切られたのだった。

母親思いの青年、うっ!頭が!


一般企業が軍に関連する生産活動をすることを法で禁じている(→民の反乱対策)ので、徴兵という体をとっているだけという話ですね。

実際雄全員を戦闘要員にしても圧倒的に武器が足りないので。




いつも読んでいただきありがとうございます。


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