表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/177

3  願いを確かめて

うわっ…!?

マルコシアス隊の平均年齢低すぎ…?

~一週間後~


 「ゲートキーパー」を制圧してから一週間が経った本日、


偵察部隊(いつもの)が来る逆の方向から向かって来る中隊規模

 の駆逐艦艦隊を感知した。」


 との報告を受け、哨戒担当をガイウスと代わって管制室(コントロールルーム)に赴いた。


『こちらキャトラス宇宙軍本隊所属、第21駆逐艦

 中隊。

 マルコシアス隊、聞こえるか?』


 駆逐艦の通信距離に入ると、味方(キャトラス)軍の所属が告げられた。

 思った通り、キャトラス軍本隊の先駆隊が予定通りに到着したようだ。


「こちらマルコシアス隊、聞こえている。

 進路そのまま、開放しているハッチから入港してく

 れにゃ。」


 先駆隊は駆逐艦12隻、アンカーヘッドを係留しているドッグに余裕で収まる数だ。


『了解した。

 全体に先立って言わせて貰う、良くやったな。』


「…グスッ…。」


 21駆隊の言葉に涙ぐむユキ伍長とメグ軍曹。

 この一週間、ディックとトーマスがそれぞれフォローして何でもないように振る舞っていたが、やはり精神的にくるものがあったようだ。

 まだ終わりではないが、仲間内(マルコシアス隊)以外からの賞賛の言葉は、そんな状況の区切りを実感させるものだった。


(こういうのはお偉方のより響くんだにゃ。)


 お偉方からの賞賛は名誉ではあるが、立場の近い者の言葉の方が嬉しかったりする。

 何はともあれ21駆隊に「ゲートキーパー」の管理を引き継ぎマルコシアス隊は一連の任務を完了、ピコの独自采配による通常哨戒任務へ移行した。


















~アンカーヘッド ピコ自室~


 21駆隊に「ゲートキーパー」を引き継いで一週間。

 間も無く七月、キャトラス中央都市は本格的な夏に入るだろう。

 季節の無い宇宙は、相変わらず全てを黒に染めている。


「何か変わったものはあったにゃ?」


 バスローブを纏いドギヘルス産の紅茶を飲んでいたミーコが、宇宙を眺め黄昏るピコに尋ねる。


「変わらないように見えて変わっているようで、やっ

 ぱり何も変わらないと思ってにゃ。」


 毎年繰り返す季節、流れる時間。

 でも宇宙では流れる時間すら曖昧だ。


「何にゃ、それ?」


 フフと笑ったミーコは小馬鹿にしたようにピコに聞いた。


「……何だか良く分からないにゃ。」


 改めて質問されると、明確な説明の出来ない感覚の話になってしまう。


「来年でこの戦争が始まって300年になるらしい

 にゃ。」


 ミーコが個人携帯端末のニュース画面の見出しを読んで言う。

 明確な開始がはっきりしていないこの戦争は一般的には「300年戦争」となっている。

 というのも、資源帯を巡り初の大規模軍事衝突が起きたのがおよそ300年前だかららしい。

 それから50年ごとくらいに大規模な軍事衝突があり、このドギヘルス侵攻は6回目の大規模軍事衝突となっている。

 そう考えると「250年戦争説」を唱える意見が正しいようだが、途中50年程休戦していた時期も「終戦していない」との理由で「300年派」が大多数なのだ。

 ちなみに最初の大規模軍事衝突以前、具体的には調査団殺害事件を戦争の発端とする「350年派」も存在していたりする。

 それはおいといて、ピコはミーコの次の言葉にはっとする。


「確かに結局は何も変わらないのかも知れないにゃ。

 でも私たちは今、300年終わらなかった戦争に終

 止符を打とうとしているにゃ。

 ピコが何を不安に思っているか知らないけど、これ

 は確かな事実にゃ。」


 言われて見ればピコは不安だったのだと自覚した。

 情報では、この先にある最終要塞「ゲート」に詰めかけた敵軍の総数はキャトラス宇宙軍全体の三倍に登る。

 それだけでなく敵の後方には更に多くの兵力が控え、対するこちらは補給線が延びきっている。

 そんな不利な状況で策があるとは言え、敗北すればケットシーの滅亡が確実となる戦いにエース部隊として参加するのだ。

 20代前半の若僧であるピコは、本人も知らぬ内にプレッシャーを感じていたのだ。

 愛するミーコの言葉は弱った心を軽くし、ピコの闘志に火を付けた。


(ああ、順序が逆になっていたのにゃ。)


 守るために戦いに身を投じたピコだが、エース部隊として祭り上げられ、戦いに勝利することで守るという思考に陥っていたようだ。


「ありがとうにゃ、ミーコ。

 終わりがはっきりして少しナーバスになっていたみ

 たいにゃ。」


 靄がかかったように思考が纏まらなかった頭が今ではスッキリしている。


「うん、それでこそピコにゃ。

 …自分一人で抱えないで、私たち(マルコシアス隊)がいるにゃ。」


 前にも「仲間に頼れ」と注意されたことを思い出す。

 

(もう迷えないにゃ。)


 周囲が自分たち(マルコシアス隊)をどのように見ていようが関係無い。

 ピコたちはこれまでのように、降り掛かる火の粉を全力を以て振り払うために戦うのだ。

 勝利などそのための戦いの副次作用に過ぎないのだ。


「ミーコ、わたし決めたにゃ。

 必ず全員で生きて帰る。

 無理に敵を倒すことはしないにゃ。

 いつも通り、方針は「命大事に!」にゃ。」


「うんうん。

 それじゃあ明日みんなに伝えないとにゃ。

 「本部の作戦は関係無い。

  皆が無事に帰ることが命令。

  死ぬことは死んでも許さない。」

 ってにゃ?」


 ミーコが(おそらく)ピコの真似をして話した言葉がまさにそれである。

 謎の熱血キャラに一頻り笑いあった後、二人は久々にベッドを伴にしたのであった。

トーマスの被弾にミケコのトラウマをえぐってしまったピコでした。

ミーコはカウンセリングもお手の物です。


さらっと戦争の発端の話が出ましたが設定だけ考えて出しておりませんでした。

要望か機会があれば本編完結後、過去編として投稿できたらと思っています。


次回「集結!両陣営」

お楽しみに!


いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆評価、いいね等、

よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ