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25 ゼロ

主人公視点ちょっぴり

遅刻したけど許して下さい。

~トーマス視点~


 作戦開始から早々に発見され、対艦ライフルを二丁持ちして敵ポッドと戦闘をしてしばらく。

 アンカーヘッドの砲撃に敵が気を取られた隙を突いてデブリに身を隠した。


『ピッ!』


 少し落ち着いた時、レーダー更新の通知音。

 先ほど一瞬確認した時は6つの目標(おそらく敵駆逐艦だ)が強調表示されていた。


(最優先目標?)


 今度の更新は、重要な目標を示すマーキングがされたらしい。

 6つの強調表示された内の一つ。

 ナインテイル諜報官と隊長の通信記録から、それが貴族の乗る艦の可能性が高い艦であることを察する。


(とりあえず待機、かな?)


 貴族の艦である以上、障壁をどうにか出来ない限りはどうにも出来ない。

 しかし隊長やディックが敵艦に集中出来るように、敵ポッドの排除等の支援を行えるように近寄っておく。


(え!?)


 待機ポイントを探して周囲の確認を行っていると、メグ軍曹の機体が推定貴族艦に接近していた。

 サンライト機の接近を認めた敵艦は加速し、メグ軍曹は敵艦の正面に回り込み攻撃を行う。


(ダメだっ!)


 こうなった以上、待機などとは言っていられない。

 攻撃が通用しないまでも足止めをしなければ逃がしてしまう。

 案の定サンライト機の攻撃は障壁に弾かれていた。


(何をして!?)


 攻撃が通用しなかったサンライト機は何故か離脱する様子を見せず、迫る敵艦は砲を向ける。


「メグさんっ!」


 一応呼び掛け、敵艦砲の射線からサンライト機を押し出す。

 

『キャアッ!』


 メグ軍曹の悲鳴が聞こえた。


(すみませんっ!)


 多少乱暴であったため心の中で謝罪をしながら、自機の退避の操作を行う。


(間に合わない!?)


 サンライト機を押し出したことで失われた速度。

 通常機より上とは言え、ブースターも高推力スラスターも装備していない機体では離脱に足る速度は得られなかった。


(一か八かでっ!)


バヂンッ!

ドッ!


 破壊された装備の破片が散り、機体が爆煙に呑まれた。

















~ピコ視点~

 

 あれから更に何機かの敵機を相手にして急行した先で見たのは、最優先設定した敵艦の正面に起こった爆発。


(遅かった!)


『隊長、トーマスセンパイがっ…!』


 事態が良くない方向に進行していることを理解させられた直後に、動転したメグ軍曹の通信が入った。

 レーダーで把握していた動きから推察するに、優先目標のピンを見て先走って危機に陥ったところ、トーマスが救援に入ったというので間違いはなさそうだ。

 初めて目撃した仲間の被弾、しかもそれが自分が原因となるとかなりキツいのだろう。

 

「落ち着くにゃ。」


 だから努めて冷静にメグ軍曹に見落としを告げる。


「トーマス曹長の機体反応はまだ“消失(ロスト)していない”

 にゃ。」


 それどころか動き始める。


『…え?』


 メグがその事実を確認し間の抜けた声を出した時、


ばっ


 身軽になったポーター機が敵艦に向かって飛び出した。


















~トーマス視点~

 

 僕はどうやらまだ戦えるらしい。

 至近弾による爆発ダメージを知らせるモニターを見て現実であることの認識を強める。

 

(FMM機で何とかってところか。)


 いくら耐久性が高いFMM製と言ってもポッドだ。

 艦主砲の至近弾を食らってノーダメージとはいかない。

 これが外装は軍用合金製のメグ軍曹の機体だったらと思うとぞっとする。


(使える武器は……コレだけか。)


 直撃を回避するために咄嗟に機体背部のバッテリーパックを緊急パージした。

 パージ時に作動する爆発ボルトの爆破の勢いに機体を任せることで回避距離が稼げたが、代わりにパックに直結していたパルスガンやその他固定武装が使用不可能となってしまった。

 使える武器は携行していた二丁の対艦ライフル。

 しかしその片方は爆発の盾にしたので破損している。

 奇しくも隊長に対艦ライフルを渡せなかったことで無手(武器無し)にならずに済んだ。


(…後一発、帰れるか?)


 それでも戦闘を継続するには絶望的な残弾数。


『ピピッ!』


 帰還が頭に過っていた時、接近警告に敵艦の存在を思い出す。

 ……後になって考えると何故その行動を取ったのかと思う。

 接近する敵艦、最優先で撃破するべき標的、残り一発しかない対艦ライフル。

 冷静なつもりで実は動転していた僕は、見当違いに思考を廻らせた。


(敵艦の障壁は射撃(間接攻撃)が効かない。

 でも障壁と敵艦の間には僅かに空間がある。

 ………やってみる価値はありそうだ。)


 射撃武器で障壁持ちの敵艦を撃破する。

 そう決めた僕は一発しかない対艦ライフルを大事に抱え、向かって来る敵艦に真っ向から突撃をかける。


『ぬおぉっ!?』


 撃墜したと思っていた敵機が突撃して来て驚く敵艦の艦長。


『だがその機体で何が出来る!』


 驚きはしたが向かって来た機体の装備の貧弱さに強気を取り戻す敵艦長。

 仮にポッドで体当りを敢行しても障壁で軽減されてしまうのだろう。

 実際に、


ガツッ!


『残念だったな?

 そして死ねぃ!』


 敵艦のブリッジに接触するも破壊には至らず。

 相対的に止まった機体に敵艦砲が向けられる。


「その台詞、そのまま返すよ!」


 売り言葉に買い言葉。

 言いたいことを言って抱えた対艦ライフルをブリッジに突き立てる。


『貴様、何を!?』


ズドンッ!


 対艦ライフル最後の一発。

 放たれた弾丸はブリッジから少し後方の艦底までの斜め下を貫いた。

ちなみにピコであればメグの救援、敵艦砲の回避、ブレードで反撃からの撃沈までをこなします。


タイトルの「ゼロ」はゼロ距離射撃のゼロと、残る敵(ドギヘルス貴族)がゼロという意味でした。


いつも読んでいただきありがとうございます。


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