24 奴を探せ!
後半はモブ化していたマルコシアス隊メンバーの視点になります。
お知らせ
本日21時にマルコシアス隊メンバーの階級纏めを投稿します。興味のある方は是非。
『残存する駆逐艦級をピックアップします。』
我が隊の敏腕分析官が、ピコが指示する前に必要な操作を行う。
『ピピピピッ』
アンカーヘッドの広域レーダーにリンクしたポッドのレーダーが、入り乱れた敵駆逐艦を残らず強調表示する。
(この中のどれかに目標が…。)
強調された表示は十数はある。
『ホントにいるのか?
全部同じに見えるが。』
実は障壁持ちとそうでない艦の見分けは簡単である。
というのも障壁持ちの艦は障壁を常時展開している都合上、薄らと光の幕に覆われているのだ。
また障壁の電磁波が干渉するのか、カメラに捉えた際に若干のノイズが走るという点でも特定可能である。
シンが言っているのはこれらの特徴が無いということであり、貴族以外が艦長の障壁持ち駆逐艦が存在した以上、障壁無しの艦に貴族が搭乗している可能性がほぼ無いということだろう。
『可能性が高いから逃がすなってことにゃ。
やることは同じにゃ。』
ナナサが言っているのは、あくまでも「その可能性が非常に高い」という話だ。
元々敵艦は掃討する予定ではあったが、一隻とて逃がすことがなくなっただけである。
(こうなると少数精鋭も考え物にゃ。)
この際足の遅い輸送艦は除外しても、逃がしてはいけない標的はマルコシアス隊の総数より多い。
幸い敵はこちらの総数を把握出来ていないため、安易に一隻ずつ分かれて逃走するという手段を取れないでいた。
しかし2班の対艦ライフルの残弾も僅か、2発撃てれば良い方だ。
(怪しい動きをする艦は…)
万が一逃走した敵艦を長距離から止められる手段は最大6回使用可能として、確実に有効打を与えるためには障壁持ちへの射撃を回避しなければならない。
(中央の4隻は除外。)
障壁を消して一般の駆逐艦に紛れる貴族艦だ。
自己保身を優先する者が重りとなる輸送艦を守ることはあり得ないとして、輸送艦隊を囲む駆逐艦隊をリストから除外。
(後は……、これとこれ。
…あとこれもにゃ。)
次に除外したのは戦場に散る駆逐艦の中で、艦載機を示す光点が重なり消失した3隻。(先に除外した4隻と同じような理由だ。)
強調表示された駆逐艦は残り6隻。
それぞれに一発ずつ狙撃を当てれば貴族艦は判明する。
しかし確実性を上げるためにもう少し絞り込みをしたい。
(どれが……、ん?)
散った光点を凝視していると、一隻の駆逐艦が徐々に戦域の端に寄って行っていた。
戦場の外縁部にいるという点であれば、他にも元々2隻が位置していた。
ならば何故ピコの目に留まったのか?
(直掩が居ない?)
外縁に位置していた2隻の駆逐艦には数機のポッドが周りで、それぞれシンとディックと交戦しているようであった。
(これにゃ!)
目立たぬよう護衛を排し、配置を放棄した移動で戦場の外縁に向かう。
明らかな逃亡者に優先目標のピンを打つ。
(一番近いのは…、メグと
っ!)
『おおおぉっ!』
レーダーの操作に疎かになった機体操作に、それを隙と捉えた敵機が突進して来る。
すっ
『おぉ!?』
ガズッ!
向けた特に鋭いというわけでもないブレードの切っ先。
近づいて確実に当てようという魂胆であっただろうその敵機は、自らの突進の勢いで突き刺さった。
多少機体操作が疎かであったとはいえ、敵機の動きはレーダーに捉えていたし、何より奇襲で声を出すのはNGだろう。
だがこの攻防が別の攻防に影響していたことを、ピコは作戦終了後に知ることとなった。
~メグ視点~
『ピッ!』
「んん?」
ドギヘルスの貴族の大艦隊を相手にするという馬鹿みたいな作戦。
軍に志願した時は不足した後方で適当に仕事していれば良いと考えていた。
でもポッドの操作適正があるとかで戦闘部隊の訓練に放り込まれた。
そこで手を抜けば良かったものの、格好を馬鹿にしてくる雄共に反発するように本気で訓練したのが運の尽き(?)なのかも知れない。
マルコシアス隊の特別教導に選ばれて、そのまま入隊して今になる。
新素材やら新装備がふんだんに使われた特務仕様のバトル・ポッドは、ドギヘルスのポッドが相手にならない性能だった。
だから調子に乗った。
強調表示されたレーダーの点、その中で自分が一番近いピンの打たれた艦。
その艦は孤立していてポッドの一機も引き連れていなかった。
(逃がさない!)
突然加速したその艦を遮るように、進路の前に躍り出る。
進路を変えず接近して来る駆逐艦は大きい的だった。
タタタタタタッ!
ブリッジに向けて、貸与されたパルスARを全連射で撃つ。
バチイィッ
「嘘でしょっ!?」
沈む筈の敵艦はパルス弾を弾き接近して来る。
『邪魔だ、どけえぇいっ!』
敵艦の砲が向けられ、恐怖にポッドの操作が覚束無い。
(墜とされる!)
『メグさんっ!』
ドンッ!
「キャアッ!?」
訪れる死に目を閉じようとした瞬間、トーマスセンパイが呼ぶ声と衝撃。
ドッ!
そしてモニターに映った敵艦の砲撃の爆煙に、自分がトーマスセンパイに庇われたのだと気が付いた。
隊長っ、ポーター曹長が!
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