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23 ジョーカー

ピコ視点がかえって来ます

~タマ視点~


ザッ、ザザッ…、パッ


 ブラックアウトしたモニターにノイズが走り、やがて何事もなかったかのように艦外の様子を映し出す。

 映し出された映像には敵駆逐艦の船首とエンジンの一部の赤熱した残骸しか確認出来ない。


「レーダーにゃ。」


 モニターの故障や敵の新機能等、仕留めていない可能性を確認する。(レーダーも万能で無いことは百も承知している)


「周囲に敵艦の反応はありません。」


 「周囲に」ということはポッド班(ピコ達)が相対している敵艦載機の母艦部隊は捉えているということ。

 つまり艦の機能に支障は無いということになる。


「敵主力艦隊撃破、ポッド班の支援に移行するにゃ。」


 先程は敵が隠している機能を示唆したが、ナインテイル中尉が引き抜いたドギヘルスの情報には、そのようなものは無かった。

 現に攻撃が無いということは敵の目的からして、存在していないという証拠になる。


「これは扱いが難しいねえ…?」


 ミケコの呟いた通り、発射光でモニターがシャットダウンする過剰威力だ。

 乱戦に使用すれば味方に退避を勧告しても、艦載機は余波だけで行動不能になるのは想像に難くない。


「まあ、通常の最終手段ってやつにゃ。」


 障壁持ちの艦隊を一蹴したアンカーヘッドは、未だ戦闘を継続するポッド班のもとへと凱旋するのであった。


 
















~ピコ視点~


 戦闘区画を掠めた閃光。

 そして消し飛んだ射線上の物体。

 一直線の空白と、その両脇に纏められたデブリが余波の凄まじさを視覚から訴えて来る。


(これがトールハンマーの威力…。)


 対艦隊極大口径レーザー砲「トールハンマー」。

 新造艦「キャノンヘッド型艦」に搭載された戦略兵器。

 ベースは以前ピコ達が実射実験を行った艦用レーザー砲。

 射撃までのチャージ時間と砲自体の耐久性に難がありそのままでの採用は見送られた。

 しかし硬度特化MMの本体と、大型コンバーターを転用することにより課題をクリア。

 武装用のジェネレータ-を搭載予定であった新造艦に組み込まれたというわけだ。

 大型化した結果として、射撃をほぼ無効化する障壁を張った艦隊を一片の欠片も残さないという威力になった。


『ななな、何だ今の光は!?』 


『レーザー!?

 敵艦の砲撃だと!?』


『デブリ帯が割れてるぞ!?』


 トールハンマーの一撃から数秒、やっと状況を理解できた敵部隊が騒ぎ出す。


ズガッ!


 未だ状況を理解できず呆けていた敵機が串刺しにされる。

 

『『『!』』』


 味方がやられたことで戦闘中であることを思い出したように動き始める敵部隊。


ドドッ、ドドドンッ!


 更に後方の敵艦載機母艦数隻に重火砲の射撃が撃ち込まれる。


ドオッ、ドオォォッ


『索敵部隊、何をしていた!?』


『何処から!?』


『見ていた奴はいないのか!?』


 射撃は弱点を撃ち抜いていたのか、攻撃を受けた艦は全て轟沈し、後方部隊にも混乱が広がる。


『落ち着け、落ち着かんか!』


 こういった戦闘の混乱に慣れていないとしても貴族の擁する私兵団。

 いち早く冷静になった者が部隊の立て直しをはかる。


『閣下が戦死し作戦の失敗は明白。

 本艦はこれより撤退する。

 動ける者は当艦に続け!』


 伯爵の私兵団所属らしいその艦は、所属に限らず周囲のポッド部隊を率いて撤退を開始する。

 やがてその艦を先頭に四、五隻の駆逐艦と多数のポッドが合流、統率の取れた混成艦隊を形成した。

 だが狩る側と狩られる側が逆転した戦場で、有能さを見せればどうなるか?


ビシュウッ!


 答えは「優先的に狩られる」。

 艦隊を引率していたその駆逐艦は数機のポッドを巻き込んで、船首から船尾までをレーザーで貫かれたのであった。


ドッゴオォッ


 仮に駆逐艦でなくても撃沈するダメージを受けた船体は、レーザー熱による急激な気化膨張で破裂するようにその姿を消した。


『うわぁあぁ!?』


『こっちに来たぞ!』


『散れ、散れ!』


 レーザーを撃ったのはアンカーヘッド。

 この惨状の立役者の強襲に、せっかく集まった艦隊は反撃することなく離散する。


ビシュウッ……ビシュウッ!


 そしてアンカーヘッドは、散り散りになって逃走する駆逐艦に充填率の低いレーザーを連射して追撃している。

 

『待たせたにゃ、ピコ。

 作戦はどうにゃ?』


『ばっちりにゃ。

 あとは残った敵の掃討にゃ。』


 通信する余裕があることからわかる通り敵は最早組織立った戦闘が不能であり、一部のポッドは戦域から離脱していた。

 任務の内容にはドギヘルス貴族私兵団の妨害の排除とあった。

 

『閣下って呼ばれてたこの艦隊の総指揮と男爵の艦は

 墜としたにゃ。』


 ピコと同じことを思ったのか、タマが付け加える。

 ならば逃げる敵を追ってまで掃討する必要は無い。


『待って下さい!

 この艦隊には三種類の所属を確認しました!

 少なくともあと一隻、貴族階級の指揮する艦がある

 筈です!』


 慌てたナナサの忠告。

 どうやら作戦はまだ完了していないらしい。


 

戦況を引っくり返す雷鎚と、隠れた貴族がジョーカーです。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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