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22 戦いの軌跡

~タマ視点~


オォォン…


「うっ…!」


「くっ!」


 現状で出し得る速度での衝突。

 その衝撃は構えていても耐えきれるものではないらしい。


『ビビ-ッ!』


「…っ!

 敵の砲撃、来ますっ!」


 衝撃から立ち直り切れていなくても職務を全うする分析官の言葉に、右レバーのトリガーを引く。


ガゴォッ!


 艦首アンカー「グレイプニール」が射出され、反動で船体が後方に押し出される。


ドドドンッ!


 間一髪。

 衝突時に艦の後方が浮いていたこともあり、押し出されたアンカーヘッドは敵の砲撃から免れた。

 ここまでは読み通りの行動が出来ていた。

 しかし戦闘には予測不能事態(イレギュラー)が付き物であった。


(アンカーが…!?)


 余程深く刺さったか、敵艦が頑丈だったのか、敵艦の砲撃の威力が低かったのか。

 様々な理由が上げられるだろうが、本来ここで外れる筈のアンカーが引っ掛かってしまっていた。


(この程度でっ!)


キュオォォッ!


 停止していた第三、第四エンジンを出力最大で再起動。

 敵艦に刺さりっぱなしのアンカーだが、本体とはワイヤーで繋がっているだけだ。

 

キュルルルルッ


 ワイヤーが猛スピードで延ばされ、アンカーの刺さった敵艦を支点に艦自体が振り子のように動き出す。


グッ、ググンッ


 慣性で身体が座席に押し付けられる感覚と共に、モニターに映る景色が上から下へと流れて行く。


(ここにゃ!)


グルン、ゴウゥッ!


 両舷格納庫ブロックを180°回転、艦に制動をかける。

 制動をかけられた艦は狙った通りに、前後と上下を先ほどとは真逆にし、モニターには衝突した敵駆逐艦を挟んだ向こうに敵巡洋艦の正面を捉えた。


(もう一仕事…!)


ギュルッ、ギュルルルッ!


 ワイヤーリールが作動し、アンカーの回収が始まる。


ズズッ…


 ピンと張ったワイヤー。

 しかしアンカーは抜けず、逆に艦が引かれる。


(重い!?

 なら…!)


グル、ゴオゥッ!


 格納庫ブロックを更に90°回転、2基のエンジンが艦の前方に向いた。

 中型エンジン2基の推力は従来型駆逐艦一隻に匹敵する。

 その推力と艦を振り子に出来る頑丈なワイヤーは、推力の無いドギヘルス駆逐艦を横転させ得た。

 それにより巻き付いたワイヤーが一直線に張る。


「ミケコ、充填率(チャージ)は!?」


「100%、何時でも!」


 流石は中型ジェネレータ-を丸一つ武装に回している艦だ。

 だがまだ安全装置(セーフティ)がかかっている。

 撃つためには砲口を露出する必要がある。


「開けえぇっ!」


 叫び、レバーを操作する。

 気合いで機械性能(マシンスペック)が向上することなど無いことは理解している。


バキンッ!


 金属柱が折れる音が嫌に響いた。



 
















~ドギヘルス貴族私兵連合艦隊~


「主砲一番から三番、装填完了しました。」


 砲手が次弾の装填完了を告げる。

 しかし標的艦は火煙から飛び出すと、男爵の艦を盾にするように回り込んでしまっている。


「当てられるか!?」


 伯爵は砲手に、標的艦に直接攻撃が可能か問う。


「無理です!

 射線が完全に重なってしまっています!」


 モニターには辛うじて標的艦の後部が映るのみであり主砲は配置の関係上、モニターに映る範囲の約7割しか射線に収められない。


(男爵すまんな…。

 ここで退く訳にはいかんのだ。)


「なら構わん!

 敵艦が自由になる前に確実に当てろ!」


 伯爵が特に冷酷とかということではない。

 男爵の艦は原形を留めているものの、敵艦の衝角が突き刺さり行動不能であることが明らか。

 更にその敵艦は障壁を破る装備をしており脅威となる。

 ならば衝角の回収に掛かりきりの内に男爵の艦ごと撃つことが戦略的には正解なのだ。


「しかし閣下…。」


 だがこの場の者達は私兵であり軍隊では無かった。

 自分たちより下の者には武力を行使することには躊躇いは無いが、爵位が自分たちの主より下と言えど貴族に砲を向けることなど恐ろしい。

 自己の保身を考えての躊躇。

 それが明暗をはっきりとしたものにしたのは皮肉だろうか?


メキメキメキッ


「閣下、あれをっ!」


 いち早く気付いた副艦長が伯爵にモニターを見るよう促す。


「なんだ!

 …なっ!?」


 話に割り込まれ怒鳴り返す伯爵であったが、モニターに映る光景に言葉を失う。

 いや、言葉を失ったのは伯爵だけでは無かった。

 見た者全てが言葉を失う光景。

 それはいつの間にか横転していた男爵の駆逐艦が、敵艦の衝角が刺さった部分の内側から“開いて”いく光景であった。


キラッ


 そして開いた駆逐艦の向こう側、伯爵は光を見る。


(不味いっ!)


「う、撃て!

 早く!」


 危険を察知したのは伯爵だけでなかったようで、先ほどまでの躊躇いは何処へ行ったのか?

 固まっていた砲手はトリガーに指をかけ狙いを定める。


カッ!


 デブリ帯に閃光が迸った。

















~タマ視点~


ベキッ、メキメキッ!


 最初に響いた切断音を皮切りにアンカーの(クロ-)が開いていく。


「これ程のパワーが…。」


 元々は敵の巨大ポッドから着想を得たクロ-部である。

 想定されていた使い方としてはクロ-部で敵艦を保持しての至近砲撃や、巻き取り機能を利用しての緊急離脱等であった。

 そのため閉方向の力は保証されているが、開方向の力の程が未知数であった。

 そして結果として、艦をへし折るクロ-のパワーは開閉どちらであっても健在であることが判明した。


『ビーッ!!』


 クロ-がある程度開くとブザーが鳴り、モニターには


[THOR HAMMER ALL GREEN]


 の表示。

 敵巡洋艦の主砲がアンカーヘッドに向く。

 

(判断が遅かったにゃ。)


雷鎚(トールハンマー)、撃て。」


「トールハンマー、照射!」


カッ、ブツンッ


 モニターがホワイトアウトの後切断(ブラックアウト)する。


キュゴオォォッ!


 様子の分からないまま、雷神の怒鎚(いかづち)の名をつけられたレーザー砲が数秒間照射されていたのだった。

 

 

艦隊戦決着!

あとはダイジェスト的な?



いつも読んでいただきありがとうございます。


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