閑話 ○○の今
スノウの主人公的むーぶ
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~ケートス隊 12番機 スノウ視点~
『ネレイド9、標的をロック。
…FOX2。』
分隊長の機体が放ったミサイルが、ドギへルス軍の自動資源採掘プラントに向かって飛翔して行く。
『……。
ミサイル、標的を破壊。
任務完了です。』
『了解。
帰投する。
全機、基地に帰還!』
「了解!」
『了解!』
………………。
………。
「よう!
スノウ、今回もお疲れさん!」
基地に帰還し、コックピットから降りると11番機に乗る先輩がそう言い、歩いて来る。
「先輩もお疲れ様です。」
そう、会釈する。
「ははっ!
すっかり訛りも抜けちまって。
お堅くなったな!」
先輩が朗らかに笑う。
配属からもうすぐで5ヶ月が経つ。
出撃回数は軽く10を越え、階級も少尉となった。
「そろそろ、1ヶ月の健診だろ?
街に降りたら、飲みに行かないか?」
そういえば、通達が来ていた。
高速戦闘機を頻繁に操縦する、前線のパイロットは1ヶ月毎の簡易健診と、半年毎の精密健診がある。
「そんなこと言って、また、如何わしい店に連れて
行くつもりですか?」
この雄は、今まで一番軍歴が浅かったせいか、もう1つ上の先輩曰く、自分に世話を焼きたがる。
そのせいで、前回は、とても驚かされた。
「悪かったって。
でも、スノウ少尉も雄だろ?」
確かに、雌の娘には興味はある。
雌の娘といえば…。
………………////
「少尉?
顔を赤くして。
誰を想像してるんだ?」
「(はっ!)
別にっ!
誰でも!
というか、先輩が変な事を言ったんじゃっ…!」
思い浮かべていた顔を振り払い、ニヤニヤとする先輩に抗議する。
「まっ、そうゆう事にしといてやるさ。
健全で一安心したよ。」
「~~~っ!」
こうなってしまえば、何を言っても無駄になる。
「中尉!
それに少尉も!
次の任務です。
すぐに作戦会議室に向かって下さい。」
作戦補助官に呼ばれる。
次の任務だ。
~宇宙軍第二士官学校 スコット視点~
『貴様っ!
一体何度注意されている!
弛んどる!
罰として、訓練場外周10周!
さっさとやれ!』
外で教官が怒鳴っている。
ここに勤めて、何十年になるか。
これまで、多くの若者たちを迎え、鍛えてきた。
士官候補生には、跳ね返りが多く、規律を叩き込む事に苦労するのは毎年のことだ。
しかし、今年送り出した士官たちは、そのあたりの指導は、随分と楽に行えた。
と言うのも、彼らの同期に、軍閥の名家出身者が2名在籍していたことが理由になるだろう。
その2名自身、素行がよく、差別をしない性格も後押しし、それに倣うように、軍関係者も規律を守るようになった。
この時点で、彼らの目に良く留まることができれば、出世できるかもしれない、といった下心も有るだろうが…。
トントン トントン
そんな風に今までの教官生活を振り返っていると、扉がノックされる。
「ボス教官長、失礼します。
本部より、教官長宛ての資料です。
今期生の初回の活動報告になります。」
事務官が告げる。
ああ…。
もう、そんなに経ったか。
「ご苦労。
そこに置いてくれ。」
執務机を示す。
届いた資料には、指導指針の参考にする事を目的として、新規赴任者の、配属から現在までの活動記録が記されている。
毎年、この資料を読む時は、憂鬱になる。
時勢にもよるが、軍全体での新規赴任者の三年未満の殉職率は3~4割、士官に限ると2~3割になる。
つまり、今期生60名の内、10~20名が三年以内に殉職する計算になる。
……………………。
……………。
………。
…半数の資料を読み終える。
今のところ、奇跡的に、殉職者は居らず、命に別状のある負傷をした者もいない。
少し、気分が軽くなる。
負傷により現場から退いてから、若者の犠牲を減らす為に、教鞭を振るっていたが、成果は出ているようだ。
次の資料を開く。
氏名 ピコ・フローレンス
年齢 18
性別 雌
・
・
・
この者の印象は強い。
学力、実技の成績は、ともに平均より少し上。
操縦技能の成績が突出しており、射撃の成績が壊滅的でなければ、エース級の戦闘機部隊に配属されたであろう人物だ。
性格は、活発的ではあるが、好戦的ではないと感じた。
本人も、後方勤務を希望した為、人手が不足している第七宙域への配属となった。
………………。
………。
うむ。
現場での評価も良い。
作業用ポッドの操縦が卓越しているようだ。
……。
資料を読み終え、ファイルに綴じる。
コンコン コンコン
「教官長、失礼します。
たった今届いた追加資料です。」
次の資料に手を伸ばしそうとしたところで、先ほど資料を届けてくれた事務官が再び、やってきた。
「ご苦労。」
資料を受け取る。
「フローレンス伍長の資料か。
丁度いい。」
封筒から、資料を取り出し読む。
………。
…!
「馬鹿な!
何故っ!」
不意に入ったその報告に、呆然となった。
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