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20 オペレーション3

本日分の更新になります。

3時休憩のお供にどうぞ。


ガギィンッ!


『おごっ!?』


 また一機の敵機を鉄屑に変えた。

 パルスガンで退避ルートを潰せば、敵機に追い付き撃墜することが楽になる。


『くそっ!

 弾切れだ!』


『一旦退け、補給するぞ!』


『了か…、っ!

 おい、あれを見ろ!』


 声音からこちらの意識を逸らすような意図は無いと判断して、レーダーの表示を広域にする。

 レーダーには敵を示す光点が、大きく陣形を崩す動きが示されていた。


『閣下は何を!?』


『まずい!

 墜とされる前に補給をするんだ!

 急げ!』


ゴゴォッ


 余程焦ったのか脇目も振らず、交戦していた敵部隊は撤退して行った。

 ピコの周辺には戦闘の気配が無くなった。

 

(それにしてもこの敵艦の動き…。)


 それは想定されているものであり、対抗策も用意されている。

 しかし他の作戦と異なり、リスクが段違いに高い。

 母艦(アンカーヘッド)のクルーは初めて経験する艦船格闘戦になる。

 しかし彼らはやってくれる。

 

(ミーコはいつもこんな気持ちだったのかにゃ?)


 だが確信に近い信頼があることと、心配が無いことは(イコール)ではない。

 作戦(オペレーション)3。

 それはピコらキマイラ(ポッド)部隊が敵艦隊の艦載機部隊群(ポッド、輸送艦、その他駆逐艦等)を担当し、母艦(アンカーヘッド)が敵艦隊司令艦を撃滅するというものだ。

















~タマ視点~


 敵艦隊の3割を撃滅し、作戦1の成功の目処が経った時、


「艦長、敵艦隊の一部が突出して来ました。」


 その報告は想定していた事態であったが、それはピコ(隊長)が渋っていた作戦3の発動を意味していた。


「全乗員に告ぐ、本艦はこれより作戦(オペレーション)3を実行する。

 固定具(ハーネス)を着用。

 総員衝撃に備えるにゃ。」


ジャッ


 艦内に通達を出し、自分もハーネスを着用する。


ジャコン


 艦長席の肘掛けから、艦基礎(フレーム)に直結するMM製の操縦(コントロール)(レバー)を引き出す。

 左右で二本のレバーに手を置くと、艦と繋がった感覚。


「それじゃ、完全に針にかけるにゃ。」


 そのためにはまず第三、第四エンジンを停止(カット)する。


「アンカーヘッド、速力低下しました。」


 詳しい説明をしていないにもかかわらず冷静な分析。

 流石はマルコシアス隊(ピコの部隊)だ。

 

 枷の外れた奇才(タマ)居心地の良い場所(マルコシアス隊)を守るため、その才を全力で発揮する。


















~ドギヘルス貴族私兵連合艦隊~


「標的艦、減速しました。」


 分析官からの報告。

 しかし散々煮え湯を飲まされた伯爵は警戒する。


(逃げ切れないと覚っての抗戦するつもりか?

 いや、普通ならあり得ん。

 しかし奴らは普通じゃない。)


 ループする思考、しかし事態は一刻毎に変化する。


「標的艦、両舷部のエンジンが停止しているもよう。」


(エンジンが停止?

 故障か?

 被弾も無しに両舷が?)


 明らかな不自然さ。

 しかし伯爵は敵艦の意図が掴め無い。

 そして標的艦は、更に困惑する行動をとる。


「両舷が可動、停止したエンジンが下方を向いていま

 す…。」


 報告する分析官も困惑している。

 標的艦の両舷部がカタパルト機能を有し可動することは、艦載機が発艦していたことから判明している。

 そのため後方に向いたのであれば、新手が出てくると思っただろう。


(この状況で戦力の温存はあり得ない。

 それにどこかで見覚えがあるような…。)


 標的艦の態勢に既視感を覚え、記憶を探る伯爵。

 

(そうだ!

 あれは試作艦載機の垂直離着陸態勢だ!)


 いつか伯爵に売り込まれた艦載機の実働コンペ。

 地上部隊はともかく、宇宙艦隊には不要な機能として不採用とした。


(着陸するところなど…、いやデブリが…。

 しかし着陸してどうする?

 艦を棄てる?)


「駆逐艦クラスが着陸可能なサイズのデブリをピック

 アップしろ。」


 とりあえず可能性があるため、確認の指示を出す伯爵。


「メインモニターに表示します。」 


『ピンッ』


 電子音とともに、稼働している機体しか表示されていなかったレーダーにいくつかの光点が追加される。


(少しずれているが、あれか?)


 標的艦の進路前方左に追加された光点があった。


(何かを隠している!?)


 先ほど戦力の温存は無いと思ったが、実際に伏兵が潜んでいたことを思い出した伯爵。

 艦を放棄する程の兵器の存在の可能性に戦慄する。


「閣下、やりました!」


 分析官の喜色満面の報告に、伯爵の思考がリセットされる。


「どうした!?」


 まだ標的艦を捉え切れていないというのに勝利を確信したような分析官に、伯爵は詳細な報告を求める。


「お忘れですか?

 閣下が回り込ませた男爵様率いる別動艦隊です!」


 分析官に言われ伯爵がレーダーマップを確認すると、確かに味方の艦を示す光点が、標的艦と例のデブリの間に入り込むコースを進んでいた。


「おお!

 良いタイミングだ!」


 思わず歓声を上げる伯爵。

 これで標的艦の部隊は(推定)デブリに隠された兵器を使用することは叶わず、伯爵と男爵の艦隊の挟撃を受けることになる。

 

ツツッ…


 レーダーマップ上で別動艦隊がデブリまでのルートを塞ぐ。

 

(よしっ、勝ったな!)


ドンッ、ドドドドドッ


 しかし確信するには早計。

 例のデブリ付近に展開した別動艦隊であったが、その内の一隻が散布されていた機雷に接触。

 それを皮切りに展開していた別動艦隊は、爆発によって見えなくなってしまったのである。


「んなっ!?」


 その爆発は伯爵の座す重巡洋艦からも目撃され、伯爵は目を見開いて驚愕する。

 伏兵はまだしも機雷を逃走ルートの先に散布しているなど誰が予想できるだろうか?

 

「閣下、どうしますか!?」


 副艦長が指示を仰ぐ声がうるさい。


「閣下!」


「っ、追え!

 男爵の仇、我々で取る!

 目にもの見せてくれる、全速前進だ!」


 悉く期待を裏切るような敵のやり方に、伯爵は全力をかけて屈辱を晴らすことに意識を向けたのだった。





 

 


 


 

 

次回「アンカーヘッド」

マルコシアス隊母艦の活躍にこうご期待!


いつも読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いします。


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