15 本領の発揮
お詫び
2024/1/12の投稿を予告せず無しにして申し訳ありませんでした。
理由としては作者のポカで予約がされていないというものでした。
更新を楽しみにされていた方もいたと思いますが、今度も本作を楽しみにして頂けたら幸いです。
ヒュッ…ドゴォッ!
ランナー機からリリースされたミサイルが敵艦に大ダメージを与える。
ドオォォン
そのダメージが止めとなり障壁を展開していた巡洋艦が沈む。
『三番艦もやられた!』
『三番艦付きの部隊は他の艦に降りろ!』
『他ってどれにだ!?』
『どれでもいい!
どうせ物質は余ってるんだ!』
混乱する敵部隊の一部。
射撃が乱れ、キルゾーンに空白が出来る。
『攻撃の手を緩めるな!』
それに気が付いた敵のパイロットが味方を叱咤するが遅い。
再び射撃が届く前に空白地帯に滑り込み停止、狙いをつける。
ガウンッ!
一発撃って即離脱。
タッチの差で、先ほどまでいた場所に弾丸が殺到した。
『報告!』
『駄目だ、やられた!』
『くそっ!』
限りある内の一発は、どうやら致命打であったらしい。
そうなるように撃ったとはいえ、射撃の技量も上がったものだと思う。
ダダダダダッ
ダダダダダッ
感傷に浸る間も無く、異なる方向からの銃撃を回避する。
タタタッ!
そしてカウンター気味にパルスガンを数発。
ボッ
『うわっ!』
命中しダメージを与えるも敵機は残存していた。
先ほど態々止まって撃ったのもこれが理由だった。
現在相対する敵艦隊のポッド。
それら全て、正規軍機に比べ“固い”のである。
タタタッ、タタタッ!
『うっ、止め』
ボンッ
損傷して鈍った敵機に止めを刺す。
固いと評したが、機体自体は正規軍のものと比べて目立った違いは無い。
ならば何故こうも耐久性に違いがあるのか。
その理由はおそらく装備にあるのだろう。
ダダダダッ
敵機の主兵装は実弾系のマシンガンであることは共通。
しかし正規軍機と異なり、ロケットポッドは装備されていないようなのだ。
ダダダダッ
そして空いた場所にはマシンガンの弾“等”が詰め込まれているのだろう。
相変わらず誘爆の危険性はあるが、ロケット弾の爆発に比べれば銃弾の爆発などたかが知れたものだ。
逆に詰め込まれた銃弾が擬似的な装甲の役割を果たすこともあるのではなかろうか?
まあ、それは気にしたところでという話だが…。
何はともあれ、機体を脆弱にしていた装備が取り払われたことで、敵機は元作業機らしい頑丈さを取り戻したということだ。
射撃がこれまでに比べ効果的でないと言っても、その他の手段もある。
ゴォッ!
例えば近接武器。
しかしこれも少々面倒だ。
というのも、
『ひっ、来るな!』
ビシュッ
敵機から放たれる熱光線。
クルッ、スパッ!
回避した流れのまま、光線を放った敵機を袈裟斬りにする。
…ボッ
二つに分かたれた機体から流れた燃料に電気火花が引火したようだ。
撃墜。
話を戻して、近接も面倒な理由が、ロケットポッドの代わりに敵機が装備している熱光線銃だ。
ブラスターはキャトラス、ドギヘルス双方において、パルス系の前に開発された実体系エネルギー兵器だ。
詳しい構造を省いて説明すると、「超高温で燃焼する物質に着火したものを射ち出す兵器」である。
弾自体を燃やしている性質上射程や連射性に難があり、キャトラスでは後に開発されたパルス兵器がエネルギー兵器の主流になっている。
そしてドギヘルスではパルス兵器の小型化に難航し、艦載機の兵装は実弾系が主流であった筈だ。
と、まあ、不利な点が際立つ説明になったが、現状近距離戦に用いるのであれば実弾火器よりは効果が見込める。
前述したように、弾自体が燃えているため中距離以上の射撃には向かないが、逆を言えば弾が燃焼しきるまでは効果が続くのだ。
この事実は、球体であるために実弾をある程度逸らせるキマイラでの近接を躊躇うに値する。
総じて、現在相対している敵機とは「有効手段を取れば有効手段で返され、互いに効果の低下する手段での消耗戦」が発生している。
そして消耗戦の有利は”数”なのだ。
『隊長、ミサイル残弾無しです!』
最初にミサイルを使い切ったのは、戦闘慣れしていないメグだった。
「艦に下がって補給と待機にゃ。」
『ピコ、俺も下がるぜ。』
訂正、シンが真っ先にミサイルを使い切っていた。
ミサイル以外の武器でバリアの無い敵艦や敵艦載機の数を減らしていたようだ。
「分かったにゃ。
ディック、状況は?」
シンは万が一の時は機獣形態になればいいため叱責を後回しにしたが、ディックはどうかと確認する。
『ラス1っす!
『シュバッ!』』
…ドゴォ!
丁度最後の一発がバリア持ちの敵艦に叩き込まれた。
『隊長、済まないっす!』
ランナー機も補給のため艦に離脱する。
「ブリッジ、状況!」
『敵艦隊のおよそ2割を撃滅、このままでは…。
……隊長、付近にデブリ帯があります。』
予定より多くの敵が残っているが作戦が破綻する程では無い。
可能であれば“それ”は許容したくなかったが…。
「そこに向かうにゃ!
到達したら期を見て“転進”するにゃ。」
~ドギヘルス貴族私兵連合艦隊~
(迂闊だな。)
傍受した通信内容に伯爵は内心で嘲笑する。
「敵無線の傍受」という手段を取り始めたのは向こうだった。
辛酸を舐めさせられた正規軍が、慌てて指揮官級に傍受装置を配備する様を見て愚かなものだと思ったのだった。
「正規軍に配備されている物を配備されていない私兵団は他家に馬鹿にされる」と傍受装置を配備したが、今はコレが役に立った。
敵の通信にあった“転進”という言葉と、補給せずに戦闘を継続していたらしい敵艦載機。
戦況は非常に有利。
(逃げられるとでも?)
「男爵に通信だ。
敵艦の転進を妨げるようにな。」
標的は自ら網に掛かりに行ったことに気付かない。
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