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14 仕込みは上々

視点が乱舞します。

 超硬突撃槍。

 合流の際に「アンカーヘッド」に積まれてきたパイルランチャー一式に紛れていた試作携行武器である。

 これを簡単に言うなら「ひたすら硬い巨大な円錐槍」である。

 全長としては斬艦ブレードの1.5倍程、柄が伸びる円錐底面は拡げられ、ポッドの前面の2/3をカバーする。

 斬艦ブレードのような特殊な機能は無く、強いて言えば「硬い」ことが特殊機能と言える。

 素材は圧縮超硬鋼。

 一般的な切削工具に使用される超硬鋼を5倍の密度に圧縮した特殊鋼である。

 その硬さは硬質特化変性メタモメタル以上だ。

 その硬さゆえに切削加工は不可能であり、ひたすら研磨で形成する。

 研磨剤は硬質特化変性MMの顆粒であり、製造コストはFMMキマイラ一機分以上という。

 つまりコレがあるからパイルランチャー一式がマルコシアス隊に割り当てられなかったと言える。


「これで好きなだけ敵艦貫けよYou!」


 と、いい笑顔でサムズアップする開発部の面々が脳裏に浮かぶ。

 殴りたい、その笑顔。

 話を戻すと、ピコが使用する前提で製造されたコレであるが、ピコには斬艦ブレードが健在である。

 ブレード程取り回しが複雑でない刺突武器と言っても、二本持ちは勘弁である。

 そこで手を挙げたのがディックで、機体性質からも問題なしということでランナー機に装備された。

 メグのみ量産品の携行武器はいかがなものかと、自らの携行武器の予備を貸し与えたシンは「流石は兄貴」と言えた。


『敵艦隊、捕捉しました。』


 思考から引き戻すブリッジからの連絡に、ピコは操作レバーを握り直した。

















~ドギヘルス貴族私兵団連合艦隊~


「先行する艦が救難信号を受信、侯爵家私兵団所属駆

 逐艦のようですが…。」


 通信官からの報告に伯爵は思案する。


(抜け駆けに失敗したか。

 そんな輩を救助する必要は無い。

 しかし侯爵家に貸しを作るのもいいか?

 幸い我々以外の艦隊はまだ影も見当たらない。

 彼らのおかげで標的が近いということも分かった。

 しかし何故止めを刺さない?

 …いや、止めを刺せない程に消耗しているのか。

 ……………。

 ………。

 …。)


 伯爵は事実を半々の正確さで推察し結論を出す。


「とりあえず放っておけ。

 優先順位を間違えるなよ。」


 救難信号をいつから発しているか不明であるが緊急性は低いとして、手柄を取った伯爵。

 救助活動の素振りを見せずに近くを過ぎる同国の艦に怨嗟の声をあげる、行動不能となった駆逐艦のクルー達。

 そんなものは聞こえないと、悠々と進む艦隊。

 その末路を知った救助されたクルー達がほくそ笑むのは、無理からぬものであった。
















~マルコシアス隊 ピコ視点~


 戦闘の火蓋を切ったのはあちら(ドギヘルス貴族)側であった。

 射程に入るなりのミサイルの斉射。

 火力としては、小さな基地が吹き飛ぶ規模の攻撃が一隻の艦に向く。

 だが撃ち方が悪い。

 攻撃目標が多ければそれなりの効果があったであろうミサイルの斉射。

 しかし一つの目標に集中したためか、ミサイル同士が接触し爆発。

 誘爆が次々と発生し、無事に「アンカーヘッド」に向かってきたのは十数発。

 それらもバルカンとタマの操艦により回避され、被害は皆無であった。


『敵艦載機の発艦を確認。』


『了解。

 1班は出撃してください。』


 淡々としたブリッジからの報告に、これまた淡々とバリキリー大尉が出撃を指示する。

 ハンガーで待機していた4機のキマイラは、予定通り各カタパルトへと移動させられる。


『一番、二番カタパルトスタンバイ完了。

 射出向きは後方。

 射出操作をパイロットに委譲。』


『一番カタパルト、ディック・ランナー』


『二番カタパルト、メグ・サンライト』


『出るっす!』

『出撃します!』


バシュウゥッ!


 閃光が走り、カタパルトが空になる。

 すぐさまリニアカタパルトのリチャージと機体のセットが完了する。


『一番カタパルトスタンバイ完了。

 射出操作をパイロットに委譲。』


 メインモニターに、


[YOU HAVE CONTROL]


 と表示され、ハッチの警告灯が赤から緑に変わる。


『二番カタパルトスタンバイ完了。』


 シンの準備も完了したようだ。


「一番カタパルト、ピコ・フローレンス」


『二番カタパルト、シン・キングハート』


『出るにゃ。』

『出るぜ!』



 
















~ドギヘルス貴族私兵連合艦隊~


「標的から艦載機の発艦を確認。

 数は4…?、のようです。」


 標的が擁する部隊の総数は5だという情報は以前からある。

 報告する分析官の戸惑いはそれに起因するのであろう。

 伯爵はそんな分析官を鼻で笑い、己の判断の正しさを確信する。


(先の防衛戦ではキャトラスの腕利きも相当数撃墜し

 たという話だ。

 やはり戦いは数だ。)


 だからこそ多少の遅れを覚悟して自分より下位の貴族を集めた。

 ミサイルの斉射が思ったような効果を出せ無かった時は苛ついたものの、結果は変わらないのだ。

 標的の部隊は大隊をも鎧袖一触に殲滅するというが、貴族家の私兵団と貧乏正規軍を同列に語るのは愚かと言える。

 更に伯爵には秘策があり、連合を組んだ貴族とも話はついている。

 万に一つも標的を逃すことは無い。


今まで(正規軍相手)であればどうにかはできたのだろうが…。

 残念ながらその傲慢が命とりになったな。

 我が貴様らに引導を渡してくれる。)



 

次回から戦闘になる予定です




いつも読んでいただきありがとうございます。


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