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11 意外と

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『この悪魔め!』


ドゴオォッ


 敵艦隊司令官の怨み言と共に重巡洋艦が沈む。

 「ツインズスター」を出撃して三度目の戦闘も、敵艦隊殲滅という結果となった。


『流石はキャトラス軍のエース部隊だな。

 申し訳なくなってくるよ。』


 同行する駆逐艦小隊を護衛するポッド部隊を統括する大隊長から通信が入る。

 

「貴隊からの補給があってこそにゃ。」


 当たり障りのない返答をしておく。

 今のところ敵の規模は巡洋艦一個小隊が最大であった。

 このくらいであれば携行武器を使用せずとも殲滅可能である。

 しかし消耗品のミサイル等をあまり節約する必要が無いため、侵攻速度は速い。

 

「1班、補給に下がるにゃ。

 2班は1班と交代するにゃ。」


『2班了解。

 行くぞお前ら!』


 待機していたシンの率いる第二分隊が「アンカーヘッド」から出撃する。

 シンとトーマスはともかく、エリカとメグに実戦経験が無いことを懸念していたが、2班の初戦(二度目の襲撃)では良くやっていた。

 ユキ含め、新メンバーがマルコシアス隊でやっていけそうで何よりだ。

 尤も、その他の懸念は多くあるのだが…。


 …………………。

 ……………。


『よーしそのまま、オーライ。』


 「アンカーヘッド」格納庫内、機体の速度を艦との相対速度が0になるように合わせ、高度を落として行く。


『オーライ…』


ガシュンッ


『接地確認、そのまま下ろしていいぞ。』


シュウゥ…


 サスペンションから空気が抜け、機体が整備ラックに収まる。

 

『OKだ、降りていいぞ。』


 エンジンを停止して機体から降りると、整備班がすぐさま機体の簡易チェックを開始する。


「ざっと見た感じ弾薬の補給と充電だけで良さそう

 だな。」


 整備班全体に指示を出し終えた親父っさんが報告してくる。

 重巡洋艦を旗艦とした艦一個小隊(艦載機総数32機)と交戦したマルコシアス隊第一分隊、通称「1班」の損耗は非常に軽微。

 一番消耗したランナー機でも携行散弾銃(ショットガン)2丁とミサイル4発で収まっている。


 ………。


「中佐、ガイ、相談があります。」


 ハンガーに併設された出撃待機所にバリキリー大尉がやって来る。


「わたしも居ますよ。」


 大尉の後ろからナナサが顔を出す。


「これまでに遭遇した敵艦隊についてですが……」


 ……………………………。

 ………………………。

 …………………。

 ……………。


 バリキリー大尉の話によると、これまで遭遇した敵艦隊はドギヘルス貴族の私兵団、その先駆隊ではないかとのこと。

 根拠として、規模の小ささと装備が挙げられた。

 これはピコも薄らと考えていたが、敵は足の速い駆逐艦隊で侵攻するキャトラスの艦隊を探っているようだ。

 ナナサの補足説明によると、一番初めに遭遇した艦隊と先ほど殲滅した重巡洋艦を旗艦とした艦隊は所属が同じだったという。

 つまり最初に遭遇した艦隊の連絡を受けて、より戦力が大きい艦隊が出向いて来たということになる。

 バリキリー大尉の見立てでは、以後敵艦隊の規模が大きくなっていくだろうとのこと。

 

「貴族の私兵で良かったのか微妙なところだな…。」


 敵勢力予想図を見てのガイウスの発言だ。

 現在マルコシアス隊を中心とする先行艦隊の存在を認知しているのは3家の私兵団。

 予想図には敵領域深くに進出する程、敵部隊の戦力が大きくなっていくことが示されている。

 正規軍であれば即座に敵領域深部の大部隊が差し向けられたことだろう。

 しかし功績を上げることを優先する各貴族家は連携というものをしない。

 結果として敵部隊との遭遇回数の割に、マルコシアス隊のみでの対応が容易になっている。

 逆にいえば、下された直令が不当なものであるという根拠が弱くなっているとも考えられてしまうのだ。

 

「実質一個小隊で少なくとも一個中隊以上の敵と連戦

 というだけでも高難度任務なんですけどね…。」


 ナナサの言葉にピコとガイウスがはっとする。

 マルコシアス隊は発足の特性上、同数かつ同程度の戦力での戦闘経験に乏しい。

 戦闘と言える経験としては敵の数が多いことがほとんどであり、苦戦=有名な戦い(例 「マズル」攻略戦)という上方向に感覚が麻痺していたのだ。


「ついでに言わせて貰えば、情報にあった「電磁バリ

 ア」を装備した艦の確認もまだです。」


 確かに、侵攻を妨害する貴族私兵団の艦には電磁バリアが搭載され始めたと情報にあった。

 そしてマルコシアス隊にパイルランチャーの配備は無い。

 有効な装備が無いわけではないが、苦戦は必至と言える。

 結局どうあっても直令が理不尽な内容であることには変わらず、現状敵の連携不足により当初の予想よりは楽に進行しているという結論に落ち着くのであった。












~ドギヘルス最奥辺境宙域~


 ガウルフ王家から各貴族家に命じられた「キャトラス所属機殲滅令」により各貴族家が私兵団を展開するなか、シバ-ズ家の私兵団艦隊はキャトラス軍侵攻予想ルートから遠く離れた宙域に追いやられていた。


「ご苦労なことだ。」


 艦隊を預かるシバ-ズ家私艦隊司令官は、連携が出来ないどころか足を引っ張り合う他家の私兵団に呆れかえっていた。

 キャトラス軍に「ゲート」への侵攻を開始する動きがあるとして、各貴族家に侵攻するキャトラス軍の撃退が命令された。

 殲滅兵器完成までなんとしても保たせたいガウルフ王家は破格の報奨を提示、各貴族家の全面協力を得た。

 しかし提示した報奨が破格過ぎたため抜け駆けに蹴落としが横行している。


(上が愚かなら下も愚かになる、か…。)


 他家はシバ-ズ家を功績の立てられない辺境に追いやったつもりだろうが、それはガウルフ王家にとっての悪手であった。


「艦長、レーダーに反応。」


「よし、予定通り駆逐艦に案内(エスコート)させろ。」


 艦隊から一隻の駆逐艦が離れて行き、キャトラス所属の輸送艦の前につく。

 そのまま二隻の艦はシバ-ズ家私兵艦隊基地に向かった。

 最も狼に近い者の雌伏の時はもうすぐ終わりを迎える。


 

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