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閑話 ケートス隊の新年パーティー

明けましておめでとうございます。

新年一発目は久々のスノウ視点でお送りします。

本編はまた今度

~スノウ・アルレビオ視点~


 年が明け、軍属4年目となった。

 入隊してからドギヘルス軍とは牙と爪を交えていたが、まさかこれ程の大戦に発展するとは思っていなかった。

 自身が敵わないと思っていたケートス隊や他エース部隊のベテランパイロットが次々に戦死していくなかで、運良く生き残り一小隊を率いる中佐となった。

 そして一つの因縁を終わらせた要塞「マズル」攻略戦から初めて迎える新年。

 この日ケートス隊を含めるエース戦闘機部隊のパイロット達が集められ、フォレスト家主催の新年パーティーが開かれていた。


「………………。」


 フォレスト家は法律で保護される古血かつ、現当主がキャトラス軍中将の位にある。

 しかしそれをふまえて、どうしても引っ掛かることがあった。


「ようスノウ!

 楽しんで…はなさそうだな。」


 酒の入ったグラスを片手に、先輩が歩み寄って来る。


「何辛気臭い顔してんだよ?

 せっかくのパーティーだ、楽しもうぜ?」


 グラスを持っていない腕を肩に回し、先輩が酒臭い言葉を吐く。

 もうお分かりだろうが、先ほどから、否、パーティーの招待が来てから引っ掛かっているのがこれである。


「今はドギヘルスとの戦争中ですよね?」


 あまりにも呑気な先輩に、つい言葉に棘が出てしまう。

 酒に酔うことや新年を祝うことが悪いとは言わない。

 しかし大量に戦死者の出た要塞「マズル」攻略戦からさほど経っていない現在、パーティーに参加して楽しむなど不謹慎ではないかと思ってしまう。


「そうだな。

 もう何百年以上続いているんだか…。」


 先輩の言葉にはっとする。

 数十年毎に多数の戦死者を出す大戦が起きているが、戦争が勃発してから終戦したことなどない。

 それをふまえ「生まれてから一度もパーティーを楽しまなかったか?」と問われれば、アルレビオ家も名家である以上誕生日パーティーなどを開催している。


「先輩、その…」


「スノウ様、こちらに居りましたのね!」


 ばつが悪くなり先輩に謝ろうとしたとき、パーティー会場であるフォレスト家のホールに若い雌の声が響き渡る。

 

「スノウ様お久しぶりです。

 会えなくてエミリー寂しかったです…。」


 エミリア・フォレスト。

 フォレスト中将の孫娘で幼少期に顔を合わせたとき以来何かと寄って来る上、事実無根の噂を声高に広めるので苦手としている。


「…エミリア様、お久しぶりです。

 軍では若輩者ゆえ、何かとやることが多く…」

(訳:貴女とは知り合い以上の関係ではない。

   軍に入隊して忙しくしているので相手をしてい

   る暇なんか無い。)


 苦手だからと言って無視するわけには行かず、挨拶を返すが言葉が尻萎みになる。

 というのも、


「まあ!

 お痛わしいスノウ様。

 フォレスト家であれば雑務になど煩わされずに済み

 ますわ!」


 言い切る前にエミリアは大きな声で話す。

 何も知らない者がエミリアの言葉を聞けば、いかにもスノウが前線で戦うことを嫌がっているような口振りである。

 更にそれとなくスノウがフォレスト家に婿入りするようなことも匂わせている。

 この“匂わせ”のせいで、軍閥の一部(主にフォレスト派)からは「アルレビオ家がフォレスト家と縁付くことを画策している」と認識されている。

 スノウにそんなつもりが無いことは当然、アルレビオ家としても軍内の権力闘争からは距離をおいている。


「エミリア様、私はフォレスト家には…」


「アルレビオ中佐、少し良いか?」


 一応訂正しようと口を開いたところでフォレスト中将に呼ばれる。

 フォレスト中将の側にはストライプ隊と合併したライトニング隊隊長と、ケートス隊の隊長が立っていた。


(独立部隊の行動に関する話だろうか?)


「失礼します。」


 まだ時期が決まったわけではないが、ドギヘルスに対する最終侵攻は確実とされている。

 面子からそう判断して中座する。

 

 …………。

 …。


 この時スノウが中座し残された二名の会話が前例の無い直令に繋がるなど、一名を除き誰にも予測することなど出来なかった。














~先輩とエミリアの会話~


「ああ…行ってしまいました。

 まだお話の途中でしたのに、お祖父様ったら…。」


「今は中将も隊長も含めた軍全体が大変ですから

 ねぇ…。」


「あら?

 貴方はスノウ様の隊の?

 誰だったかしら?」


「……チェシャ・グリムと申します。」


「あ、そ。

 …ところでスノウ様は何を言おうとしていたかご存

 知?」


「あ~…。

 多分隊長は「フォレスト家には婿入りしない」って

 言うつもりだったんでしょうね。」


「………あらあら、そうなの?

 (以前は「今は誰とも付き合うつもりは無い」と断

 られましたが…。)

 何故か知っていらして?」


「隊長には戦争が終わったら気持ちを伝えたい相手が

 いるっぽいですよ。」


「(何ですって!

 わたくしのスノウ様が!?)

 ………………貴方は誰かご存知のようね?」


「済みません、そこまではいくらお嬢様と言えどプラ

 イベートなので…。」


「(チッ、役立たずね。)

 そうね、プライバシーは大事ね。

 …わたくし用事を思い出したので失礼しますね。

 パーティーを楽しんでくださいな。」


「お気遣い有り難うございます。」


 ……………。

 ………。

 …。


(何よ!

 フォレスト家であるわたくしにプライバシーなど些

 末な問題ですわ。

 スノウ様を誑かした雌を必ず特定してスノウ様の目

 を覚まさせてあげますわ!)


「そこの貴方!

 ちょっと良いかしら?

 頼みがあるの。」

先輩の名前が判明しましたね

エミリアお嬢様、てら~…。(訳:こわ~)



いつも読んでいただきありがとうございます。


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