7 決定打
本編100話目になります。
ガイィンッ!
跳躍した機獣が構える機獅子に前肢を打ち込む。
「チッ!
硬い、にゃっ!」
ドカッ!
しかし機獣の打ち込んだ前肢は、機獅子の太い右の前腕一本で防がれた。
柔だとは思っていなかったが、予想を越えた耐久性に舌打ちをする。
そのまま動きを止めないように、機獅子を足蹴にして距離を取る。
とっ、トンッ
宙に一度着地して体勢を整え、もう一度跳躍で仕掛ける。
先ほどはボディのど真ん中を狙ったが、今度は右半身を狙う。
(「まず右腕貰うにゃ!」)
いくら硬かろうが不壊ではない。
ガードが崩せれば急所にダメージを与え易くなる。
ガギイィンッ!
今度は左で受け止められた。
右寄りの攻撃をわざわざ左で受けたということは、こちらの狙いがばれていると見て良さそうだ。
(『離れるにゃっ!』)
ドッ!
…ブン
私の警告に即座に飛び退く。
機獅子に視線を向けると、右前肢を振りかぶった後であった。
『勘が良いな…。』
シンの呟きが聞こえる。
そういえば無線のスイッチが入れっぱなしであった。
…まあ、別に作戦をいちいち口にする性質ではないし問題無いだろう。
問題は機獣の速さに反応できているということだ。
さっきは私の警告で避けられたが、掴まれてしまえばあの豪腕の餌食になってしまうだろう。
そしてその可能性は、機獣が機獅子の片腕を破壊するまで攻撃出来る可能性より高い。
どうせ複数回攻撃しなければならないならば、一撃あたりのダメージが低くなろうが手数で勝負しようじゃないか。
トンッ
機獣が再び跳躍を開始する。
………………。
…………。
…。
ガッ!………ガッ!…………ガッ!
機獅子に何かがぶつかり、その度に機獅子は僅かに体勢を崩す。
しかし機獅子はすぐさま復帰を行い、次の攻撃に対処している。
ガッ!
そう、これは攻撃なのであった。
機獅子に捕まることを避けた機獣は、機獅子の傍を掠めるように跳躍を繰り返す。
そして通過の際ついでのように軽い一撃を加えて行くのであった。
軽いとはいえ一撃は一撃。
その速度から繰り出される一撃は、ドギヘルスのポッドであれば撃墜するのに十分な威力を持っている。
いかに頑丈な機獅子と言えど、その両腕にはダメージを蓄積していく。
トンッ
機獣が幾度となく繰り返された跳躍を行う。
しかし結果はこれまでと異なった。
『ぅおらぁっ!』
バヂィッ!
シンの気合い一閃。
機獣の攻撃は見事に見切られ、機獅子の振るった前肢に弾かれる。
(「これもダメにゃ!?」)
跳躍による攻撃に対処され、手段が著しく狭まる。
『埒が明かねぇな。』
機獣に有効的な攻撃手段はほぼ無く、機獅子は攻撃を当てられ無い。
決闘はいよいよ泥仕合の模様となってきた。
『…ちっ。
出来ることなら使いたくなかったんだな…。』
舌打ちをし、そう呟くシン。
言い様からして「使えば勝てる」手段があるようだ。
実力で勝負したいシンにとって、その手段を使うのは不本意らしい。
(『随分嘗められたものにゃ。』)
機獣の跳躍もそうだが、その他相手には理不尽な手段であっても同格相手には手段の一つでしかなくなる。
私がそう感じるのも当たり前だ。
『鬣展開!』
ガシャコン
シンが何やらコールすると、機獅子の首周りに平行に配置されていた、ロケットポッドを兼ねた装甲ユニットが垂直に展開される。
しかしポッドのロケット弾は撃ち切った筈であり、残していたとしても精々が2、3発というところだろう。
当然、機獣を打倒するに足り得ない。
パカパカパカ…
「!」
ポッドの発射口のカバーが開くと、空の筈のポッド内に砲口を確認する。
(一体何処からっ…、まさかっ!)
いくら前半身に集中したと言っても貧弱な後ろ半身。
使われないレーザーナイフ。
大量に余っていた筈のバッテリー。
(レーザーの発出機構を複製したにゃ!?)
レーザーナイフの機構を解析し、メタモメタルで構築。
エネルギーをバッテリーに頼れば、限りはあるが多数のレーザー射撃が可能になる。
『食らえ!』
(ヤバいっ!)
バシュッ
砲口から発射されたのはレーザービームではなく、エネルギーの球体であった。
とっ
それなりの弾速だが、機獣なら回避は余裕だ。
しかし結果から言えば回避には失敗した。
くんっ
「っ!」
何故なら、弾道から外れ回避したと思ったのも束の間。
エネルギーの球体は突然軌道を変え、機獣に迫ったのだ。
ボッ!
反応が遅れたことでエネルギーの球体が接触、爆発を起こした。
(活性プラズマにゃ!?)
活性プラズマは電気エネルギーを過剰飽和させた、超高温かつ爆発性のあるパルス弾の原形である。
その爆発性から兵器への転用は難しいとされたが、威力はパルス弾に劣らない。
『まだまだ行くぜ!』
バシュッバシュッバシュッ…
続けて何発ものプラズマ弾が機獅子の鬣から放たれ、機獣に追いすがる。
とっ、たんっ、とんっ
跳躍は連続して使えないため、通常の機動で回避を繰り返す。
くんっ、くっ、くくんっ
しかしプラズマ弾の追尾性は高く、更に数が増えて行く。
そして遂に回避する先が無くなってしまった。
ボボボボボボッ!
「うにゃあっ!」
機獣が数多の爆発に包まれた。
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