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6  ラウンド2 もう一体の獣

区切りの都合で短めです。

済まない。

 キングハート家が継いで来た血筋は、遥か昔最も大きな国家を支配していたと言われる金獅子族のもの。

 その王族の身体は他の金獅子族に比べ一回り大きく、黄金に輝く立派な鬣をしていたという。

 何故そんなことを考えているというと、原因はモニターに映る機獣である。

 その機獣は、以前開発本部で見せて貰った“私”が機獣を発現した際のように各パーツが組み換えられていた。

 基本的な構造としてはピコの機獣のように四足歩行型である。

 しかし細身の肉食獣を模したピコの機獣と異なり、前半身に装甲類が集中している印象を受ける。

 厚みのあるコックピットのある胸部。

 前肢には半分程の長さになったブースターが装着されており、元々太めの前肢を更にゴツくしている。

 反面後ろ半身は最低限の構造となっており、申し訳程度にマガジンボックスが変化した外装だ。

 とはいえ基礎がメタモメタル製であるため、バルカンの火力程度は通用しないだろう。

 乱戦時は兎も角、1対1でやりあっている現在ではさしたる問題ではない。

 装甲を兼ねた小型のロケットポッドは各ブロックに分かれ、鬣を模したように首周りに平行に配置されている。

 正直後ろ半身の装甲にした方がバランスが良いと思うが、大事な部分なのだろう。

 むしろ、空となったポッドを利用しているだけマシと言えなくもない。


『どうした?

 驚いて声もでないか?』


 無線からの声に意識を戦闘に戻す。


『ならこっちから行かせて貰うぜ!』


だっ!


 機獣の獅子(略して機獅子か?)が宙を蹴り迫って来た。

 

(遅い?)


 端から見れば、機獅子の動きは金色の線のように見える程の速さがある。

 そう、“見えている”のだ。

 

とんっ


 視認外の速さで跳躍しての攻撃を得意とする機獣にとって、機獅子の突撃は軽く避けられるものでしかなかった。


『おるぁっ!』


ドッ…ゴオォォンッ!


 シンの気合いと伴に機獅子は、機獣の後方に位置していたポッドより二回り程のサイズの岩塊(デブリ)を前肢で破砕する。


ガンガンガンッ!


 機獅子に破砕された岩石が幾つも機獣に当たる。


(「なんてパワーにゃ…!」)


 当たった岩石自体はダメージが無いものの、当たった衝撃から元の岩塊がどれ程の力で破砕されたのかが伺えた。

 直撃すれば機獣は兎も角、ピコは確実にコックピット内で挽き肉になるだろう。


(『掠るとも思ってないのによく言うにゃ。』)


 仮に先ほどの一撃が全力の下で放たれたのであれば、何百、何千と繰り返されたところで当たる自信は皆無だ。

 しかし初っぱなから情報の隠蔽をしてきた「賢い脳筋」のことだ。

 警戒するに越したことはないと考える。


(『………わたしはたまに馬鹿になるにゃ。』)


 私の呆れたようなもの言いに少しカチンときた。


(『事実、わたしは前提から間違っているにゃ。』)


 私の説明によると、先ほどの機獅子の一撃は機獣だから軽く避けられたものであり、超常の存在の力を介さないものにとっては「回避困難の絶対的な破壊」に他ならないとのことだ。

 機獣の速度は超常の存在の力を介したものに対して優位を取ることを想定しているため、過剰な程になっているらしい。

 つまり機獣はスピード型の構成であり、パワー型の構成である機獅子はいくら速度を出したところで直接的な攻撃を当てることは出来ないと言うことだ。


(「あー…、理解したにゃ。」)


 よくよく考えてみれば、スピード特化型の機獣は普通の兵器相手でもパワー不足を感じることが多々あった。

 伝説の神獣の顕現に、知らずの内に及び腰になっていたようだ。

 神の力とて有限であることは身をもって知っていた筈なのに、だ。


(「確かにわたしが馬鹿だったにゃ。」)


 普段から軽口を叩いてくる私にも原因はあると思うが、ここは反省するところだろう。


「ふぅ~…、っ!」


 大きく息を吐き気合いを入れ直すと、取るべき戦い方が頭の中に浮かんで来る。

 相手の最高速度を軽く凌駕しているならば、相手はこちらの最高速度について来られない。

 相手の装甲にダメージを与える火力はある。

 取るべき戦法は一撃離脱(ヒット&アウェイ)だ。


(「何だ…、結局いつも通りにゃ。」)


 そう思えば自然体になれた。


(『いつもは一回で終わるからにゃ。』)


 だから数が多ければ、または相手が大物サイズなら嬉しいわけだ。

 だが今闘っている相手はちょっとやそっとでは沈まないだろう。


(『そうにゃ。

 だから殴り放題にゃ♪』)


 …仕方がないことではあるが哀れ、機獅子は機獣にサンドバッグにされてしまうらしい。


(「ま、やるのはやるけどにゃ。」)


 結局、一番質が悪いのはピコであった。

いつも読んでいただきありがとうございます。


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