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閑話 道化

何故力を求めるのか…。

~惑星キャトラス 宇宙軍本部~


「侵攻再開にあたっての難点は「いかに損耗なく前線

 に軍を集結させるか」であるが、意見のある者はい

 るか?」


 タシロ将軍の言葉に、いくつかの手が挙がる。

 進行役は一人ずつあてていく。


「境界領域に予め集結、全軍で突破するしかないので

 は?」


 侵攻派の小将の意見だ。

 一番のメリットとしては、常にドギヘルスの妨害部隊より大きな戦力であるというところか。

 

「それでは動きが鈍くなる。

 いくつかの艦隊を編成して、別ルートからの同時侵

 攻が良いでしょう。」


 元和平派の小将の意見は、要塞「マズル」攻略でも採用されたやり方だ。

 実戦証明されたやり方は悪くは無いが、前提が抜けていた。


「敵の戦力が大きい現状、各個撃破されて終わりです

 な。

 私としては、少数の部隊を先行させての敵妨害部隊

 の排除を具申する。」


 フォレスト中将の意見は、要は囮作戦だ。

 「妨害さえ無くなれば集結に問題は無い」という、議題を真っ向から否定する意見であった。

 

「精鋭部隊を決戦前に消費すると?」


 並みの部隊では妨害部隊全ての排除など不可能である。

 チェンバー小将の指摘は、そういうことであった。


「ええ、戦いは結局のところ数です。

 精鋭部隊が決戦の場にいてもいなくても、大勢には

 さほど影響は無いでしょう。」


 囮となる精鋭部隊のことを考慮しないのであれば、尤もらしいやり方ではある。


「フォレスト中将にはアテがあるのか?」


 精鋭部隊と言えど無敵ではない。

 「マズル」攻略戦では精鋭部隊にも被害が出たのだ。

 この囮作戦での戦力比は、攻略戦以上になるのは必然であり、全滅も有り得なくは無い。


「ええ勿論。

 ウィング中将にも心当たりがあるのでは?」


 そう言ってフォレスト中将はアテである部隊の特徴をあげていく。

 曰く、その部隊の隊長は若くして輝かしい戦果をあげている。

 曰く、その部隊は一人一人の能力が高く、小隊規模の部隊で大隊規模の部隊を殲滅が可能。

 曰く、要塞「マズル」攻略戦において唯一欠員の出なかった不死身部隊。

 曰く、新兵器の試験という名目による軍の支援の下、戦力増強の著しい最強部隊。


「…一個小隊に負担を押し付けると?」


 ウィング中将は苦々しい表情で問う。


「これ以上無い最小限の犠牲でしょう。」


 会議室の雰囲気は、もう決まったようなものであった。


「不安があるというなら、かの部隊が現在教導してい

 る者を正式配属してしまえばいいでしょう。」


 駄目押しをかけるフォレスト中将。


「それでは教導の意味が無いではないか!」


 チェンバー小将が声をあげる。


「…そうですねぇ。

 確かに士官クラスばかりでも良くない。

 なら教導対象で階級が高い者を別部隊の隊長とする

 のはいかがですか?」


「………それならいいだろう。」


 フォレスト中将はある意味チェンバー小将を買収したのであった。


「なら一人抜ける分は俺の息子の長男を送ろう。」


 キングハート中将が決定事項のように宣言する。


「………否やは無い。

 しかし直令状にこの場にいる全ての者の署名を求

 める。」


 ウィング中将のせめてもの抵抗であった。


「何故だ!

 そんな決まりは無い筈だ!」


 精鋭部隊は独自の采配での行動が許されている。

 しかし本部が発行する、直令状の指示には従わなければならない。

 そしてある小将が言った通り、直令状は小将以上一名の署名で効力を発揮するため、小将以上全員の署名など必要ないのであった。


「まあまあ、一部隊にこの国の命運をかけるようなも

 んだ。

 誠意としては安いもんじゃないか?」


 キングハート中将の発言に、ほとんどの者は反論を失う。

 

「うむ、我々もリスクは負うべきだろう。」


 直令状は強い強制力を持つ反面、署名した者に強い責任が生じる。

 万が一直令状の命令が不当なものであるとされれば、内容によっては署名した者は処刑で済まないのだ。

 特にこの場合は、家族や親類縁者にまで処刑が及ぶほどのものであった。

 タシロ将軍の肯定により、キャトラス軍上層部の親類縁者根絶やしの可能性を秘めた直令状が発行される事となったのであった。



















~フォレスト家 フォレスト中将視点~


「虎と獅子が手を組むとは…。」


 自宅の執務室で今日の会議を振り返る。

 作業ポッドの軍用化の采配と、孫娘が所属する部隊が軍に多大な恩恵をもたらしていることで発言力を増すガウル・ウィング。

 その前での会議ではそれを思い知らされた。

 だからかの部隊を無きものとすることで、発言力を削ごうとした。

 成り上がりのチェンバーをこちらに引き入れる事には成功したものの、たかだか小将では神血の二家とやりあうには役不足であった。

 

「お祖父様、うまくいきましたでしょうか?」


 孫娘がやってきた。


「ああ、だがちと面倒な事になってな…。」


 ガウルの力を削ぐのもそうだが、かの部隊を槍玉に挙げたのは孫娘のためが大きい。

 というのも、孫娘はアルレビオの倅に惚れているらしく、アルレビオの倅が惚れていると言ったかの部隊の隊長の排除を頼まれた。

 ついでに孫娘が嫌う(アカデミーの成績で勝てなかったらしい)ウィングの孫娘もかの部隊にいたのも丁度良かった。


「そうなの?

 じゃ、頑張って下さいませ。」


 そう言って孫娘は上機嫌で去っていった。


(他人事のように…。)


 キングハートの直孫がかの部隊に所属となる以上、万が一があれば孫娘も処刑の対象となるのだ。

 

「排除したとして自分に心が向くなど…。」


 そう呟き、処刑回避のためにかの部隊が生き残れるよう、これまでで築いた権力をふるうのだ。


盛大な墓穴を掘っていますね。


いつも読んでいただきありがとうございます。


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