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26 次の段階へ

閑話にするか迷ったけど、本編カウントにします。


 翌朝ピコとナナは連れ立って、朝食をとりに食堂へと向かった。


「あっ。」


 食堂に入ると、ナナがどこかを見て声をあげる。


「どうしたにゃ?」


 気になってナナの視線の先を見ると、ミーコが朝食をとっているところであった。


パチ


 ふと顔を上げたミーコと視線が合い、ミーコは控えめに手招きをした。

 ちらりとナナを見てから視線を戻すと、ミーコは頷いた。

 ミーコは、ナナも伴って来て欲しいようだ。

 朝食を受け取り、ナナと共にミーコの待つ席に向かう。


「ミーコ、おはようにゃ。」


「…ミーコさん、おはようございます。」


「二人もおはようにゃ。」


 挨拶を交わして席につく。


 …………。


カチャ…カチャン


 周りはざわついている筈であるが、食器同士が触れ合う音が妙に響く。

 ピコ達は挨拶以降特に会話もなく朝食をとっている。


(き、気まずいにゃ…。)


(『疚しい事している自覚があるにゃ?』)


ビクウッ!


 内心で呟いた言葉に思わぬ反対があり、身体が跳ねる。


「ピコさん?」


 急に身体を跳ねさせたピコを、ナナが心配そうに呼ぶ。


「いや、ダイジョブにゃ。」


 大丈夫無い(だいじょばない)、動揺して片言になってしまう。


「ピコちゃん。」


 ミーコに呼ばれ、また身体が跳ねそうになったが抑えた。


「ナナの事は私も認めているにゃ。

 ならピコちゃんはどうすれば良いか…。

 分かるにゃ?」


 疑問形で聞いているようだが、そうでないことは明白であった。


(「でもミーコは嫌な筈にゃ。」)


 独占したいと言う理由ならば、ミーコが認めた以上問題はなかった。

 しかしミーコの場合は父親に対するトラウマからのもののため、ストレスを与えるような真似はしたくなかった。


(『ミーコはそれを“わたし”のために曲げてくれるっ

 て言ってんのにゃ。

 いい加減腹括るにゃ。』)


 「ミーコとナナ、どちらが大切か?」と聞かれたら、はっきりとミーコと答える。

 しかし「ナナを蔑ろに出来るか」と言われても、答えはノーだ。

 最初は保護した義務のように感じていた気持ちが好意に変わっていることには早々に自覚していた。

 

「ナナ、今までごめんにゃ。」


 まず謝るとナナは目を伏せ、ミーコは視線を鋭くする。

 ここで怯んではいけない。


「わたしヘタレらしいから…。

 …それでもいいにゃ?」


 ナナに自らの弱さを晒す。


「それでもじゃないです。

 そのピコさんだから…。」


 ミーコが“私”を受け入れてくれた時のような多幸感が溢れて来る。

 それほどまでに自分はナナにも惹かれていたのだと思い知る。


「…あのミーコさん。」


「ミーコでいいにゃ。

 これからは協力するんだからにゃ。」


 今までことあるごとに突っ掛かっていたふたりの和解に、ある種の達成感を感じる。


「ありがとうございます。

 …では私のこともナナサと呼んでください。」


「ナナサ?」


「はい!

 ピコさんが何モノでもなくなった私にくれた名前

 です。」


 ナナの自然(ナチュラル)にマウントをとる発言に、ミーコが和解の笑顔のまま固まる。


「ピコちゃん?

 ちょ~と、詳しくお話し聞かせてにゃ?」


 ミーコの追及は、バリー大尉らとの打ち合わせの時間ぎりぎりまで続いたのであった。(打ち合わせを理由に逃げたとも言う。)

















~惑星キャトラス 宇宙軍本部~


 要塞「マズル」攻略戦から半年以上が経過しているが、上層会議では今日も今日とて意見が纏まらない。

 ある者は早急な侵攻再開を、ある者はここらでの和平締結を、またある者は戦力の拡充を。

 結果として侵攻の停止期間が延びに延びて、促成された志願兵は正規カリキュラムの訓練を完了し、一部の優秀な者は更に士官としての習熟を行っている。

 しかし先日もたらされたドギヘルスの情報により、会議は飛躍的に進められることとなった。


「だから私は、早急にドギヘルス首都を制圧するべき

 だと言っていたのだ!」


 そう憤りを示すのは、早期侵攻派の筆頭チェンバー小将。(ハロルドの祖父にあたる。)

 

「それでは徒に死者を増やすと…、何度説明すれば理

 解出来るのだ。」


 頭を抱えるのは、和平締結派の筆頭の小将。


「ドギヘルスには理解されていないようですよ。

 戦いになるのは明確でした。」


 そう皮肉交じりに言う、軍備拡充派のフォレスト中将。


「期は熟している。

 侵攻を再開しなければならない。」


 軍備拡充派であったウィング中将の鞍替えに、ざわつく軍備拡充派と早期侵攻派の面々。


「その心は?」


 ウィング中将に理由を問う、委任派のキングハート中将。


「志願兵らも正規兵となり「マズル」攻略戦前程度に

 は戦力は回復した。」


「しかしそれでは戦力が足りないのではなかったの

 かね?」


 ウィング中将の意見に反論するキングハート中将。

 ドギヘルスの最終要塞戦に必要な戦力を要塞「マズル」と同等として、敵軍の妨害が無いわけが無い。


「しかし情報によるとこれ以上時間をかけてしまえ

 ば、拡充した戦力も意味を成さなくなる。」


 共有された資料には移動式要塞のものと同等の要塞砲が、攻略予定の要塞に建造されているとの記載がある。


「なるほど。

 こちらに利が最もあるのがこのタイミングだという

 ことかね?」


 半年以上かけても建造率は6割、今から侵攻の準備をしても十分間に合う。

 逆に、今侵攻の準備をしなければ間に合わなくなる状況であった。


「ドギヘルスは総力戦の様子、いくら軍を拡充しても

 戦力差は同等になどなりはせん。」


 侵攻側かつ軍人のみで戦っているキャトラスは、雄のみとはいえ徴兵しているドギヘルスに戦力で勝ることは不可能だ。


「ありがとうウィング中将、参考になった。」


 そう言ってキングハート中将が沈黙すると、発言をする者は誰もいなくなった。


「意見は出尽くしたようだ。

 それでは決を採る、侵攻再開に賛成の者は起立

 せよ。」


 キャトラス軍大将のタシロ将軍の号令に、起立する者としない者が分かれた。

 これまではここで規定の賛成数を得ることはなかった。

 しかし今回は拡充派と和平派に属していた者にも、起立している者がいた。


「賛成数、規定数以上。」


 記録官たちが確認を行い、記録長官が宣言する。

 要塞「マズル」攻略戦から8ヶ月が経とうとしたこの日、キャトラス軍のドギヘルス侵攻の再開が可決されたのであった。




 








 


 

食堂にいた方々

「仲いいなぁ…。(チベスナ顔)」



いつも読んでいただきありがとうございます。


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