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21 狩りの終わり

破滅は止まらない

~ファーテイル私有巡洋艦「エスピオナ-ジ」~ 


「閣下、このままでは全滅です。

 撤退の指示を。」


 また一つ減った光点に「エスピオナ-ジ」の艦長は、司令官であるファーテイル現当主に二度目の進言をする。


「ならん!

 なんとしてでもアレを破壊しなければならない。」


 この場の誰が見ても不可能なことを言い、艦長の進言を却下する当主。

 無論当主としてもそれが不可能であることは理解していた。


(ここで逃げ帰ってはファーテイル家は二度と這い上

 がれなくなってしまうではないか!?)


 当主はこの期に及んですら自己の立場の心配をしているのだ。


(戦力を残しての撤退など許されるものか…!)


 当主の思惑は「任務を達成するべく全力で事に当たったが、全ての戦力の喪失により撤退せざるを得なかった。」という状況として、酌量して貰おうというものであった。


「貴官らは我がファーテイルの精鋭である!

 必ずやドギヘルスに仇なすあの機体を打倒し得ると

 信じている!

 無論、それをなし得たあかつきにはファーテイル家

 の総力をもって報いることを約束しよう。

 各員、支援射撃を継続せよ!

 我らが英雄の力となるのだ!」


 当主にとって所詮、彼らは替えの利く駒に過ぎない。

 金と時間をかけて仕立てた駒を失うのは痛手ではあるが、そのことが言い訳に説得力をもたらすのだ。


「!

 …総員、聞こえていたな?

 ファーテイル機動艦隊は不退転だ!

 閣下の期待に応えて見せるぞ!」


 当主の言葉を疑わない艦長を始めとした各クルーは、愛国心と忠誠心をもって士気を振り絞る。

 気持ちの昂りにまかせ戦闘に全力をかける。


(そうだ、それで良い…。)


パチンッ…


 当主はほくそ笑み、艦長席のマスタースイッチの一つを操作した。

 この時点をもって、彼らの未来は確定されたのであった。

 












~ピコ視点~

 

 ミサイルを利用して敵機を撃破したことで支援攻撃を躊躇うかと思えば、そんな事はなかった。

 

『ピーッ!』


タタッ!


ボッ…


 今処理したミサイルで何発目だろうか?

 もはやお構い無しにロックが完了しては撃ってくる。

 それは駆逐艦だけではなかった。

 

ドゥッドドゥッドゥッドゥッ

 

 巡洋艦の主砲の艦砲射撃が絶え間なく戦闘区域を横切る。

 数撃てば当たるというような砲撃は、そこにいる全てのものを脅威に曝す。


『エスピオナ-ジ、何をしている!?』


『これでは戦闘どころじゃ無い!』


『砲撃を中止しろ!

 …くそっ!』


『聞こえていないのか!?』


 ポッドのパイロット達が砲撃を止めるよう呼び掛けているが砲撃は止まない。

 装甲を増設し鈍くなった機体では回避に精一杯で戦闘どころの話でないのか、こちらにとっては隙だらけの状態となっていた。

 機獣にとっては巡洋艦一隻の主砲弾幕など薄いというのも烏滸がましい。

 軽やかに舞うように余裕で回避する機獣は次の獲物を定めた。


(『警告を黙らせるにゃ。』)


 先ほどからロックオン警告が鳴りっぱなしであったが、“私”は元から断つのが希望のようだ。


タッ、トンッ、タタッ


 敢えて跳躍はせずに、機獣は宇宙を駆ける。

 砲撃に自ら突っ込むような可能性のある真似はする必要が無い。


『不味い!』


『砲撃を即刻中止しろ!

 敵の足止めの邪魔だっ!』


 敵機が機獣の狙いに気付くが、援護には向かえないでいる。

 自分たちを支援する筈の砲撃に妨害され、抑えていた敵が自由に動くのを見ているのみ。

 敵ながら、憐れに思えて仕方がない。


シュウゥッ


 標的となった敵駆逐艦はミサイルを撃って、こちらを近づけさせまいとする。


タンッ


 機獣はミサイルを飛び越して尚も近づく。

 標的を見失ったミサイルは彼方へと遠ざかって行く。


バララララララッ


 対空バルカンの弾幕が張られる。

 自動(オート)砲台(タレット)の狙いは正確ではあるが機獣の機動についてこれる程ではなく、吐き出された弾丸は後方を通過して行く。


タタタタタタタタタタタッ!


 駆逐艦の周囲を回るような軌道を走りながら、背部のパルスガンのトリガーを引きっぱなしにする。


トンットッ


 駆逐艦の周囲を一周し終えて、二駆けでバルカンの射程から離脱する。


ボッ、ボッ…、ボガアァンッ!


 船体に満遍なくパルスガンの銃撃を叩き込まれた駆逐艦は数回の小爆発の後、大爆発を起こし大量の金属片へとその姿を変えたのであった。


 …………………。

 …………。

 …。


『一撃だけでもっ!』


グワシャッ!


 敵ポッドの最後の一機を仕留めた。

 敵駆逐艦を宇宙の藻屑としてから更に自由に動けるようになった機獣は、残る敵ポッドの排除にかかった。

 正面からでは機獣の攻撃に対応出来ていた彼らは、味方からの砲撃に共に曝されつつも抵抗した。

 しかしその抵抗は数分という短時間に留まり、全滅という結果となった。


(それだけの腕があるなら軍で優遇された筈なのに

 にゃ…。)

 

 そうであれば少なくとも、敵の領域内で撤退も許されず戦死するような事にはならなかったであろう。


(…いや、これで良かったのにゃ。)


 逆に考えれば、ここで全滅させられた事で友軍に被害を出さずに済んだという事でもある。

 それに彼らも敵に同情される事など望んでいないであろう。

 気持ちのリセットが完了する。


(『終わったみたいな空気のとこ悪いけど、巡洋艦が

 逃げて行くにゃ。』)


バッ!

 

 レーダーを確認すると、確かに大きい光点が中心からゆっくり離れて行っていた。


 

結局いつものパターン


いつも読んでいただきありがとうございます。


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