表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/177

20 浸透

一般整備兵

「羽なんて飾りです!

 作者にはそれが分からんのです。」

 現在の敵の戦力は、軽巡洋艦クラス、駆逐艦が各一隻。

 無力化した駆逐艦二隻の艦載機を含め、装甲ポッドが17機。

 総合的な火力でいうと、重巡洋艦の爆装一個中隊より少し劣るくらいにはなるか。

 とはいえ単体火力となると艦は別として、ポッドは貧弱である。

 メイン火力のロケット弾は撃ち尽くし、残る武装はマシンガン。

 通常機ならば十分に通用する火力はある。

 むしろ積載リソースを弾数に振ることで運用コストの低減化と戦闘能力の両立を実現し、単純こそ至高(シンプルイズベスト)を体現した機体構成と言える。


(『効かなくても邪魔なのは変わらんにゃ。』)


ヒュッ


『消えただとっ!?』


 今まさに追い縋っていたポッドのパイロットは、機獣の機動が見えていない。


『上だっ!

 気を付けろ!』


 仲間の警告を受け動くが遅かった。


ガシャアッ!


 そのポッドは機獣に撥ね跳ばされ分解し、破片をばら蒔いた。

 

ゴシャァ!


 その一部始終を見ていたパイロットのポッドは、下方から急襲した機獣の左前肢を深く打ち込まれ機能を停止する。


『喰らえ化け物!』


ダダダダッ


 獲物を仕留め一瞬動きが止まった隙の攻撃。

 重りをつけた機獣は機動力が低下し、回避が間に合わない。

 

ガガガガッ!


『…っ、この!』


 回避が出来ないならば防げば良い。

 重りとなっていた敵機の残骸は機獣よりも面積がある。

 目論見通り、敵機の放った弾丸は全て残骸に受け止められる。


ブンッ


 下がる敵機に残骸を投げつける。


ガッ!…ボンッ


ボンッ


 残骸は盾になった際に耐久限界が来ていたのか、敵機に衝突すると爆発を起こす。

 そして衝突された敵機も爆発のダメージを受け大破した。

 

『卑怯者め!』


『それでも軍人か!?』


 おそらく残骸を盾にした事を非難しているのだろうが、その心意気に特大の鏡を進呈したい。


(『戦いに卑怯も何も無いにゃ。』)


 “私”の意見には賛同しかねるが、「勝てば官軍」という言葉があるくらいだ。

 それにこの状況に限れば、最初から多数で少数を囲んでいる相手側の方が卑怯と言えなくもない。

 これが戦略と認められる以上、残骸を盾にするのは戦術である。

 実際に漂流物(デブリ)帯が戦場になった場合、軍艦の残骸等を遮蔽物として戦闘が行われる。


『おい!

 何とか言っt』


バキャアッ!


 隙を見せた敵機を頂点部分から殴打する。

 コックピット部が陥没し、凹のような形になった敵機は爆発する事なく漂流していく。

 機獣は敵機を殴打した反動を利用しながら次の獲物に定めた敵機に直進する。


ガギィッ!


『来ると分かればっ!』 


 そう言ったパイロットは片方のアームを犠牲に衝突の衝撃を軽減し、残ったアームで機獣に組み付いた。

 軽減されたとして、衝撃はそれでも相当なものである。

 現に敵機の衝突部分の装甲は弾け、現状唯一の武器であるマシンガンも破損していた。


『ピピッピピッ!』


 複数の敵機が接近してきているようだ。

 自身が動きを止めさえすれば仲間がトドメをさしてくれるという、一定の信頼が伺える。


『これで終わりだ!』


 いや、まだ終わりじゃ無い。

 そもそもピンチだとすら思っていない。


ジャキンッ!


 機獣の背中にパルスガンが生える。


『!?』


『しまっ…!』


『…っ!』


タタタ、タタタ、タタタッ!


 パルスガンは砲台(タレット)のように旋回し、接近してきた敵機それぞれに三連バースト射撃を加える。


ボッ…ボンッ


 1機は咄嗟に回避出来たようだが、他の2機は撃破だ。


『畜生がっ!』


 撃墜を免れたパイロットは悪態を吐き捨て、離脱していく。


『……で…。』


 いまだに機獣を掴んで放さない機体のパイロットが唖然としたように呟いた。


『何だよそれはっ!?』


 何だと聞かれても見た通りである。

 元々装備していたのだから使えない理由が無い。

 先ほどまで使用しなかったのは直接攻撃した方が効率が良かっただけであり、格納していたのは機動の邪魔になるからに他ならない。

 

ガパッ


 だから機獣が口を開くと、喉奥にはバルカンが覗く。

 装甲が剥がれた機体に、バルカンの至近射撃を防げる筈もない。


ヴォッ!


 機獣が短く吼える。


『がっ…!』


 一瞬にして放たれた十数発の弾丸は全てがコックピットハッチを貫き、パイロットを絶命させる。

 この形態となってから三分弱。

 残る敵ポッドは丁度10となり、敵戦力は凡そ半分に減少した。

 

(『さぁ、まだまだいくにゃ。』)


 珍しくテンションの高い“私”が言う。

 全てを狩り終えた時、果たして満足しているのかが気になった。


 …………………。

 …………。

 …。


 それから五分以上が経過したが敵機は数を減らしたものの、6機が健在していた。


(『なかなかに巧くやるにゃ。』)


 これには“私”も称賛している。

 いくら回避に集中した行動をとっていたとしても並みの腕では、先に撃破された4機と同じ末路となっていた。

 しかしこの6機のパイロットは機獣の跳躍移動の欠点を既に把握し、捕らえないようにするどころか時折反撃まで加えてくる始末だ。

 

シュバッ


 おかげで跳躍移動を多用するわけにはいかなくなり、こうして敵駆逐艦からのミサイルが飛んでくるようになった。


タッ!


(「まあ、当たる方が難しいけどにゃ。」)


ボッ…


 跳躍移動時にすら周囲の様子を把握している機獣に、ポッドですら回避可能なミサイルに対処する事など造作もない。

 そうする意味は薄いがパルスガンの単発射撃での撃墜を片手間に行う。


ヒュッ


 ミサイルの爆煙を目眩ましにして跳躍する。


ガシャアッ!


 対処が可能と言っても綱渡りのようなもの。

 条件が悪くなれば当然、対処の難易度は上がる。

 敵機は更に半分の5機となったのだった。


 



 

有能な敵も恐ろしいが無能な味方はもっと恐ろしい。

※駆逐艦のクルーは無能ではないです。

(戦いに付いて行けていないだけです。)


いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆評価、いいね等、

よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ