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16 混乱

章も後半、何も起きないわけは無く…


 …………………。

 …………。

 …。


 分隊ごとの行動を開始して一時間程になるだろうか。

 10分程の休憩をとって、コックピットでの待機に戻る。


『レーダーに反応。』


 どうやら戻って早々出撃になるらしい。

 

『すみません、詳細解析中です。』


 反応の詳細情報が無いと思えば解析中らしい。

 練度の高い者は積極的に前線へと派遣されている。

 つまりこの艦のクルーも経験不足である。


『詳細を報告、敵駆逐艦三隻です。

 救援要請を発信します。』 


 少々まずい事になった。

 多少の違いがあると言えど、キャトラスの艦もドギヘルスの艦も艦載機の数は同規模だ。

 つまり敵は一個中隊となる。

 それだけの規模の敵が侵入している事も問題だが、現在こちらの戦力は一個小隊だ。

 敵の三分の一の戦力で相対しなければならない。

 しかもその内半数は量産機であり、経験不足。

 ピコとディックが引き付けても艦に抜ける敵機があるだろう。

 

「出撃シーケンスの大半をカット!

 緊急発進(スクランブル)にゃ!」 


 救援が期待できるガイウス分隊の乗る駆逐艦との距離は巡航速度で二時間、互いに全速力で接近すれば三十分程で合流が可能だ。


『中佐、あの数を相手にするんですか!?』


 ブリッジから「無茶を言うな」と非難を含めた通信が入る。


「全速で分隊との合流を目指すにゃ。

 それまでわたしとディックが前で敵を引き付ける

 にゃ。

 ハロルド小尉とアクト曹長は艦の護衛と援護を頼

 むにゃ。」


『了解っす!』

『『了解。』』

『…了解しました。』


『ピコ中佐、発艦準備完了しました。』


 ナナの通信通りピコの機体は発艦レーンに配置され、レーンの両側にはハンドミサイルランチャー。

 一応持って来ていた物だが、現状ではありがたい。

 両アームにランチャーを握らせる。

 斬艦ブレードはおいて行く。


「キマイラ1、ピコ・フローレンス。

 出撃する(でる)にゃ!」


 …………。


 マルコシアス隊ピコ分隊は敵艦隊と接触する前に全機発艦を完了することができた。

 現在は全速を出しガイウス分隊との合流を目指す母艦の、やや後方を維持し後退中だ。

 しかし、エンジンの推力は敵艦の方が大きい。

 じわじわと距離を詰められている。


『敵艦より艦載機の発艦を確認。

 総数12です。』


 やはり逃げ切れなかった。

 敵艦隊を感知してから10分余り、遂に敵機に食い付かれた。


「わたしとディックは少し前に出てランチャーを空に

 してくるにゃ。

 ハロルド小尉とアクト曹長はその場で待機、警戒を

 続けるにゃ。」


 うまく行けば敵機の半数は墜とせる。


『隊長、いくら何でも危険です!

 俺も前に出ます!』


 アクト曹長が指示を拒否してついてきた。


『…ちっ、余計なことをする。』


 こうなればハロルド小尉も仕方なさそうについてきた。

 ミサイルは既に敵機をロックしている。

 下がらせる為の説得の暇は無い。

 

「ディック、撃つにゃ!」


シュバババッ!


 合計で12発のミサイルが敵編隊に向かって飛翔していく。


ドッドドウッドッ…ドンッ


 疎らなタイミングで、10の倍程の光球が炸裂する。

 レーダーに表示される光点は3つの消失に留まった。

 

『なっ…!?』

『…なるほど、だからか。』


 小尉と曹長は今の攻防に真逆の反応を示した。

 先ほどのミサイルは敵機の撃破を目的としたものではない。

 ミサイルの射程内という事は、既に敵ロケット弾は発射されている。

 ピコとディックのみであれば回避という選択も取れた。

 しかし小尉と曹長には回避が難しい為、ミサイルの誘爆による数減らしを試みたのである。


(うまくいって良かったにゃ。)


 2名を後方に置こうとしたのは、うまくいかなかった場合に回避の猶予を作る為であった。

 結果としてうまくいったから良かったものの、失敗時に自由に動けないという圧力に僅かに精神を消耗した。


『隊長、敵機が来るっす!』


 ディックからの無線に気を取り直す。


「わたしとディックで撹乱するにゃ。

 小尉と曹長は援護、生存を優先するにゃ。」


 2対9であれば対応出来ない数ではない。

 近い敵と遠い敵ならば、近い敵から対応するだろう。

 何機かは援護の処理に回るかも知れないが、乱戦よりは対応しやすい。


『隊長、俺も』

「曹長!

 …命令に従うにゃ。」


 アクト曹長がまたもや指示を無視しようとするのを遮り、「次は無い」と釘を刺す。

 そもそも長距離主体の機体で乱戦など、余程追い詰められない限りやるものではない。

 であればまだ、小尉のアサルト仕様機の方が適切である。


『曹長いい加減に気付け。

 貴様の行動が隊長達の足を引っ張っている。

 大人しく従うんだな。』


 ハロルド小尉がアクト曹長を諭す。


『そんな言い方無いでしょ!?

 俺だって………っ!』


 元々小尉と曹長の性格は合わないようであった。

 想定外の規模の敵との相対に緊張が限界なのか口論が始まる。

 非常にまずい事態に陥った。


『ふたり共、今はそんな場合じゃないっす!

 最低でも自分の身は守るっすよ!

 隊長、行きましょうっす。』


 ……必要な指示は出した。

 現状はこれ以上かまけていられない。

 後どうするかは彼らの判断に委ねるしかないのだろう。

 

ゴウッ


 ピコとディックの両名は敵編隊を向かえ討ちにスロットルを上げたのであった。














~???~


 思い返せばいつもそうだった。

 こちらが良かれと動こうとした時に限って邪魔をする。

 普段の態度から敵対したいのか味方をしたいのかがはっきりしない。

 ただ一つはっきりしていることは、「死ねばいいと思うくらいに嫌な奴だ」ということだ。


いつも読んでいただきありがとうございます。


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