10 囮猫 ~Scape Cat~
おや? ???の様子が…。
格納庫に向かって走る。
「ピコちゃん!
どこ行くにゃ!?」
ミーコに呼び止められる。
「ハンガーにゃ!
私にできることが有るかも知れないにゃ!」
「何するつもりにゃ!?
危ない事は止めるにゃ!」
ミーコが叫ぶ。
「危なく無いようにしてみるだけにゃ!
ミーコは早く退避してるにゃ!」
「~~~~~~~っ!
~~~~っ!
~~………。」
ミーコがまだ何か叫んでいたが、時間が無い。
まともに反応することなく走り続けた。
(戻ったら、凄く怒られるだろうにゃ。)
怒りを鎮める方法を考えておかなければならない。
………。
…。
と、言う間にハンガーに転がるように入る。
「親父っさん!
居るにゃ!
頼みが有るにゃ!」
「おう!
ここだぁ!
どうした!」
顔を油で黒くした、白黒ぶち柄が駐機ラックの下から這い出てくる。
「良かったにゃ。
今の状況は分かるにゃ?
追加装備の取り付けに何分かかるにゃ?」
「ああ、少しやべぇみたいだな。
アームラックで10分ちょい、載せ物はもっとだ
な。」
さすがは整備長、即答である。
「なら、なるべく早く。
アームに6ミリバルカン二基。
上に、パルスガンを付けて欲しいにゃ!」
「はぁっ!?
作業ポッドに銃を付けても、戦えるかっ!」
いつの間にか居た、もう一人の整備担当が話に割り込む。
「確かに坊主の言う通りだ。
それに、火器管制装置の接続にも時間がかかる。」
親父っさんも、頷く。
「撃てれば良いのにゃ!
牽制くらいにはなるにゃ!」
それを承知で頼み込む。
「駄目に決まってるだろ!?
それに、これは修理用のブツだ!
壊されたら大目玉をくらうぞ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないにゃ!
この艦が墜ちたら、みんなオジャンにゃ!」
坊主と口論する。
「……。
分かった。」
「親父ぃっ!?」
「ほんとにゃ!」
親父っさんが了承する。
「坊主、俺たちはメカニックだ。
なら、乗り手の要望を聞き入れろ。
そいつが無事に帰還するように機体を完璧に整備す
る。
それが俺たちの闘い方ってもんだ。」
そう静かに語ると、こちらに向き直る。
「だが、艦長に許可を取れ。
作業は始めさせて貰うが、ダメだったら大人しくし
ている事だ。」
「分かってるにゃ。」
そこまで強行するつもりは無い。
「何か手伝える事は無いかにゃ?」
人手は多い方がいいだろう。
「なら、パルスガンをポッドの上に持って来てくれ。
その間に6ミリを付けとく。
おい、坊主!
工具箱持って来い!」
………………。
…………。
……。
「パルスガン、持って来たにゃ!」
「こっちも丁度、左右に付いたぞ。
パルスガンを付けたら、すぐ出るだろ?
後は、二人で十分だ。
先に乗り込んでな!」
「親父っさん、ありがとにゃ!」
お礼を言い、自分のポッドに向かう。
…。
ゴッ!
「うにゃぁっ!?」
再びの衝撃にバランスを崩され、操縦席に転がる。
「イテテ…。」
ぶつけた場所を擦りながら起き上がる。
ボボンッ!
何処かが爆発する。
「ッ!」
シートに座り直し、安全帯を装着。
無線のスイッチをONにして、ブリッジに通信を継ぐ。
「ブリッジ、聞こえるにゃ?」
『……。
フローレンス伍長!?
何故ポッドに、いや、いい。
どうした!』
一拍の後、返答が入る。
「今、戦況はどうにゃ?
やばそうなら当官も出れますにゃ!」
『……。
確かに状況は逼迫している。
だが、作業ポッドでどうする!?
的にでもなるか!?
みすみす、死なせに行かせる訳にはいかん。』
「死にに行くつもりは無いにゃ。
でも、6ミリ二機とパルスガン…
「おい!装甲板も持ってけ!盾に使え!」
…後、装甲板一枚借りてくにゃ。」
外の方に目を向けると、左アームに、ポッドが丁度隠れるサイズの装甲板が、溶接されていく。
『………………………。
許可する。
だが、本当にやれるか?』
長い沈黙の後、許可が出る。
「当てる自信は無いにゃ!
でも、砲台には、なれますにゃ。」
やれるが「殺れる」だと、無理だと返す。
『できる範囲で良い。
無茶はするな。
危なくなったらいつでも帰還して来い!』
「おいっ!
作業、終わったぞ!
起動してみろ!」
「WP1、システムチェック!
[本体電源 OK]
[各モーター動作 OK]
[各推進装置動作 OK]
[上部装備接続 OK]
[右アーム装備接続 OK]
[左アーム装備接続 OK]
・
・
・
【コンデンサ残量 100/100】
〔 起動可能 〕
システムオールグリーン!
ハンガーロック、解除!
起動しますにゃ!」
ガキン…。
ロックが外れ、機体が浮く。
「ブリッジ、このまま後方に向かうにゃ。
ハッチの開放を要請するにゃ。」
『要請受諾。
フローレンス伍長、この艦にはカタパルトが存在
しない為、出撃直後、砲火にみまわれるリスクが
非常に高いです。
注意して下さい。』
通信官が説明する。
出撃直後は無防備になる為、普通であればカタパルトにより射出され、その時間が極力短くされる。
「なら、艦の速度はそのまま。
こっちもフルスロで発進するにゃ。」
そうすれば、相対的にそこそこの速度にはなるだろう。
問題があるとすれば、敵前に、放り出されるかたちになることだろうか。
『すまないな、伍長。』
艦長が謝る。
「問題無いにゃ。
すぐに救援が来るにゃ。」
戦闘開始からすでに25分は経っている。
救援到着まで、あって数分。
それくらいなら、何とか生き残れる。
「ハッチ開けるにゃ。」
『艦後方ハッチ、開きます。』
ハッチが開ききり、目の前に宇宙が拡がる。
『伍長、必ず生きて帰って来い。
これは命令だ。』
「了解!
ピコ・フローレンス!
WP1、出撃しますにゃ!」
任務開始である。
スペースポッドは
武装スペースポッドに
進化した!
読んでいただきありがとうございます