1 配属先けってー
初投稿につき、読みにくくなっています。ご注意ください。
暖かな日射し、爽やかな風に小鳥の歌声。平和な春の午後の一コマ。
少しの休憩のつもりだったのに徐々に眠気がやってきて、
「ふぁ…。」
ついつい欠伸が出てしまった。
このまま一眠りも良いかも知れない。そう思い瞼をとじ、
「フローレンス士官候補生!
教官長がお呼びだ!
直ぐに教官長室に出頭するように!」
「フニャッ!!」
突然の大声に座っていたベンチから転がり落ちる。
「何をしている候補生。
分かったなら早く行動しろ!」
「はいにゃ!
フローレンス士官候補生、教官長室に出頭します
にゃ!」
すぐさま立ち上がり、教官に敬礼をしてから駆け足で教官長室に向かう。
この一連の行動は三年の士官学校生活で身に付いた。
一週間後には卒業を控えて、昨日と今日、明日は配属先が卒業生それぞれに通達される。
配属先によってその後に大きく影響するため、候補生の間ではこの3日間は「配属先ガチャ」と呼ばれる。
人気の配属先に決定して歓喜に踊る者と、閑職に配属された者の煤けた後ろ姿はこの時期の一種の風物詩になっている。
2ヶ月前の配属先希望調査に書いた希望配属先を思い出しながら教官長室に向かっていると、
「よう。
ピコは今からガチャかにゃ?」
と、声がかかる。
声のした方を見ると、
真っ白な毛並みに長いしっぽ、蒼い瞳の細い体躯の雄ケットシーが片手を軽く上げ立っていた。
彼の名はスノウ・アルレビオ。
軍閥の名門アルレビオ家の次男、頭脳明晰、身体能力抜群の所謂生粋のエリートである。
また、先ほどの態度からわかるように、それらを鼻にかけない、むしろ軽さを感じる性格から友人も多い。
ピコ自身は少々苦手な性格ではあるが…。
「そうにゃ。
そう言うスノウはもう決まったのかにゃ?」
名家出身かつ最優秀成績者のスノウのことだ。
さぞ良い配属先になったのだろう。
そう聞くと、
「そうだにゃ。
第三宙域遊撃艦隊第一分隊一番攻撃隊に配属になっ
たにゃ。」
「第三遊撃1-1と言えば、ケートス隊にゃ!?
すごいにゃ!」
ケートス隊は所謂エース部隊で華々しい活躍をしている部隊だ。
その知名度は一般にすら知れ渡る。
さすが最優秀成績者である。
「ありがとにゃ。
少しプレッシャーだけど、頑張るにゃ。」
スノウは少し照れながら気を引き締めていた。
「あ、ヤバいにゃ。
教官長に呼ばれていたんだったにゃ。
じゃあまた後でにゃ。」
スノウに手を振り別れる。
「引き留めて悪かったにゃ。
いい配属先になるといいにゃ。」
スノウの言葉を背に受け、教官長室に向かって走る。
さて、自分の配属先はどこになるのだろう?
期待と不安を胸に教官長室のドアをノックした。
「ピコ・フローレンス士官候補生、出頭しました
にゃ!」
「ああ、フローレンス君よく来た。
そこにかけたまえ。」
部屋に入ると、
焦げ茶の毛並み、ゴールドの瞳。その眼光は右側の傷も相まって鋭い。
その威圧感は子供どころか、大人の雄でもびびってしまうだろう。
この部屋の主であるスコット・ボス教官長が大柄な身体をソファに預けていた。
「さて、フローレンス君の卒業後の配属先だが、希望
は後方支援となっているが、相違は無いかね?」
「はいにゃ。」
ここで、誰に聞かせるでもなく説明する。
ケットシーの軍人は、基本的に好戦的な性質をもっており、後方に好んで配属されたがる者は少ない。
「そうか。若い者は皆、戦闘部隊を希望するが…。
まあ、良い。
君の希望と適正を加味し、配属は補給・仮設営部隊
になる。
詳しくはそれに書かれている。」
教官長から封筒を渡される。希望通りに配属されたようで一息つく。
「ありがとうございますにゃ。」
「ああ、配属先でも励みたまえ。
キャトラスに平和と繁栄を。」
「キャトラスに平和と繁栄を!」
キャトラス軍の合言葉を掛け合い、教官長室から退室する。
配属先の通達が終了したら、後の8日間は各々自由に過ごすことができる。
「ふにゃ~ぁ…っと。」
解放感からまた欠伸が出てしまう。
「今日はこのまま寮でゴロゴロするにゃ~♪」
ピコは機嫌よくしっぽを揺らしながら三年過ごした自室へと帰っていった。
~スノウ視点~
「また後でにゃ。」そう言って走り去る、
白と黒、グレーがマーブル状になった毛並み(所謂、サバトラ柄)、グリーンゴールドの瞳に平均より小柄なピコの背中に声をかけ見送る。
彼女とは知り合って三年になる。
当時、好戦的な雄ケットシーに混ざり、おおよそ軍には入らないであろう雌ケットシー二人組みがいた。
軍には少なからず雌ケットシーも所属しておりそれだけで違和感を覚える程ではなかった。
しかし彼女らは性質が違うとでもいうのか、説明のしにくい、ただ「戦う者」ではないのが分かった。
実際、二人組みの片割れは衛生兵としての適正を見出だされ軍病院へと転向になった。
転向にならなかったピコもすぐに退校するだろう。
そう思っていたが、あれから三年たった。
後8日で60人の同期は各々の配属先に別れる。
いつの間にか自身がピコに感じていた気持ちがはっきりとすることはあるだろうか。
「まっ、今日の所は帰って寝るにゃ。」
奇しくも、ピコと同じ行動になったスノウである。
読んでいただきありがとうございます