プロローグ
初めての執筆になるため、表現などの違和感、誤字脱字あるとは思いますがよろしくお願いします。
「ここは……?」
そこは何もない真っ白な空間だった。突然知らない場所で目が覚めたにしては、不思議と心は落ち着いていた。
俺は確か仕事が終わって帰っている途中だったはずだよな……?なんでこんな場所にいるんだ?思い出そうとするが何も思い出せない。
「目が覚めましたか。」
突然、何もいなかった空間に一人の女性が現れた。金髪に宝石のような青い輝きをした瞳、色白でモデルのような体形をした万人が美女と評するであろう容姿をしている。あと、巨乳だ。巨乳なのだ。なぜか誰に説明しているわけでもないのに二度思ってしまった。
「あの……よろしいでしょうか?」
美女は困惑しながら問いかけてきた。
「あぁ、すみません……。あの、ここはどこなのでしょうか?あなたは一体……?」
「そうですね、ではまず自己紹介から始めましょうか。私の名はイルミナスといいます。数ある世界の一つの管理者をしています。一般的に神と称されている存在と同じ存在です。」
美女……イルミナスさんは何かとんでもないことを言い出した。
「あの……なにかの冗談ですか?」
「そう思われるのも無理はありません。大抵、ここに来られる方はそういった反応になりますから。では、冗談ではなくここがどこで、なぜあなたがここにいるのかお見せしましょう。」
そういうと彼女はこちらに手をかざした。その瞬間、頭にある映像が流れ込んできた。
……これは、そうか思い出した。
「どうやらご自身に何が起きたか思い出されたようですね。そうです、あなたはすでに亡くなっています。現在、あなたは魂のみでその存在を構成されています。」
「えぇ、思い出しました。確か仕事が終わって帰る途中、歩道に突っ込んできた車に轢かれたんですよね。」
「そうです、記憶を一時的に失っていたのは耐え難い苦痛と恐怖のせいですね。ちなみに死んだという事実を聞かされ混乱していないのはこの空間の影響です。ここはあなたのような方と対話するために作り出した場所ですから。」
なるほど、妙に冷静に現状を受け止められているのはそういうことか。しかし、死んじまったか……親よりも先に。なんともやりきれない気持ちになるもんだ、漫画やアニメならこういう展開にテンションを上げるヤツもいるかもしれないがとてもそんな気持ちにはなれそうもない。特別家族仲が良かったわけではない、ごく普通の家庭だったと思う。それでもいろいろ迷惑をかけたし、心配もかけた。これから仕送りでもしていこうかというさなかでこれだ、考えれば考えるほど胸が苦しくなる。
「先ほどは失礼しました。あなたが……神様であることはなんとなくわかりました。」
「いいえ、お気になさらないでください。ここは人間の常識が一切通用しない場所です。一度の説明で理解、信用されないことは想定しています。それでは、話を進めさせていただきますね。繰り返しますが、あなたは亡くなられました。通常、人は死ねば魂が肉体から離れ異界に行き、その後の転生まで魂は異界にて保管されます。疑問に思われているかもしれないのでご説明しますが、死後に天国と地獄という概念は存在しません。そもそもそれらは人々が法の下、秩序ある生活を生み出すために作られた考え方なのです。善行、悪行は場合によっては反転しますし、明確な境界線がありません。転生後に生前の記憶を持ち越すことは例外を除きありえませんので、生前に何をしたかは関係ないのです。」
「ではどれだけ人を殺そうと不幸にしようと真っ当に生きた人間と死後に差はないと?」
「人としては受け入れがたいかもしれませんが、そういうことになります。あなたには都合上お教えしましたが、これは当然人の世に出てよい事実ではありません。天国と地獄という存在に疑問を持つ者はいても確信を持つ者はいません、そうでなくてはならないのです。」
確かにそれはそうだろう。俺は信仰心をあまり持っているほうではなかったが、死後の行き先については気になったことがないかと言われれば嘘になる。そんな時にどれだけ悪さをしても死後は関係ないと言われれば、俺は犯罪者になることに対して危機意識が薄まらない自信はない。これはとんでもないことを聞かされたもんだ。
「例外を除きと言われましが、私がその例外ということでしょうか?」
「そうです。薄々感づいていらっしゃるかもしれませんが、あなたにはこれから私の管理する世界に記憶を保ったまま転生していただきます。こちらも気づかれているかもしれませんが、転生者はあなたが初めてではありません。頻繁に転生していただいているわけではありませんが、それなりの人数が記憶を保ったままこちら側の世界に来ていただいています。理由は様々ですが、今回あなたに行っていただく理由はつまるところ歴史の変動です。」
お、おいおいなんかとんでもないことを言い出したぞ!!俺に歴史を動かす力なんかねーぞ!?
そんなことを思っているとイルミナスさんは優しく微笑みながら説明してくれた。
「詳しくご説明しますと、私には大まかな未来が視えます。今回視た未来は、あなたが転生した結果によるものです。未来についての内容は違った方向に変動してしまう可能性があるため説明できませんが、私の管理する世界において必要なこととだけ言っておきます。」
「大まかということは、詳細は分からない、あるいは変わるかもしれないということでしょうか?」
「その通りです。未来とは人々の想いとそれに伴う行動によって生じるものです。人の思想は周りの人や環境、ちょっとしたことでいくらでも変わります。ごくわずかな変動であるならば数秒ごとに起こるほどです。未来を視ることのみに力を使えばすべてを見通すこともできましょうが、生憎と管理者としてやるべきことは多いためそういうわけにはいきません。」
「なるほど……ちなみにの転生についての拒否権はありますか?」
「もちろん断っていただいてもかまいませんよ。そうなった場合、また適正者が現れるまで待てばいいだけの話ですから。」
「適正者?」
「はい、当然のことながら記憶を保つ以上、転生者は誰でもいいというわけではありません。また、世界にとって必要な素質や才能も人格とともに必要としますので、自然と選ばれる人間は限られてきます。」
つまり俺がこれから行くかもしれない世界は、あるとは思えない俺の素質と才能が必要ってことか?うーん……考えてもわからんな。
「他に聞いておきたいことはありませんか?あれば可能な範囲でお答えしますよ?」
イルミナスさんがそう言ってくれたのでいくつか質問をすることにした。えーと……
1.あなたの管理する世界とはどんなところか。
2.なぜそもそも、転生者が必要なのか。
こんなところかな。
「なるほど、では一つ目からお答えしましょう。私の管理する世界はあなたの世界とは違い科学ではなく魔法が発達した世界です。世界全体の規模としましては、最も大きな大陸がユーラシア大陸のおおよそ三倍ありますね。ほかにも大陸はありますが、この大陸が私の世界の中心的な存在だと思っていただいてかまいません。
二つ目ですが、私の世界は少々変わった発展の形をとっています。基本的には現地の人間による文化的、経済的成長を促しています。そこに異なる世界の知識や技術をもった人間を送り込むことによって、大小差はありますが変動を起こすことで、思いもよらぬ成長を遂げるという要素も入れた形でこちら側の世界は形作られてきました。
必要かどうかと問われれば、正直なところ絶対になければならない要素ではありません。そもそも管理者が世界の成長に手を加えること自体が、あなたにとっては違和感を感じてしまうかもしれません。これに関しては、その世界の管理者の方針次第という反面が強いですね。世界を創造した時点で放置し静観する者もいれば、積極的に干渉する者もいます。私の方針としてはちょうどその中間くらいにいますね。
なので長くなりましたが強制はしません。こちらの世界で転生しない場合、元の世界の管理者によって通常通りの転生が行われるでしょう。」
なるほど、確かに価値観的に驚かされる部分もあるが、そもそもこの方は人ではなく神様なわけだ。人一人の考え方と食い違いがあったとしても何らおかしくはないだろう。それに正直、少々異世界というものに興奮もしている。……最後にダメもとでひとつお願いをしてみるか。
「イルミナスさん最後に一つだけいいですか?」
「なんでしょうか?」
「俺の死んだ後の家族の様子を窺いたいんです。」
「それは……正直おすすめはしませんよ?過去に希望された方は何人かいましたが、そのすべてが視なければよかったと後悔されていました。」
「……それでも視たいんです。なにができるわけでもありません、それでも!もう一度だけ親の姿を視させてくれませんか?」
「わかりました、では地球の管理者に要請します。……準備が整いました、目を閉じて意識を集中させてください。」
俺は彼女の言う通りにした。少しすると頭の中にとある映像が流れだした。
ここは葬儀場だろう、母さんと父さんが俺の遺体の入った棺桶の前に立っている。母さんはひたすらに泣いていた。優しい人だった、友人や家族のことを何より大切にするお人よしだった。父さんは眉間に皺を寄せとても悲しい顔をしている。仕事人間だったけど心の強い人だったし、とても頼りになった。
二人とも本当にいい人だった。自分が悪いわけではないと、不幸な事故だったということはわかっている。それでもこのなんともいえない不快感を消し去ることはできない。これは確かに視ないほうがよかったと感じてもおかしくないな。でも俺はよかったと感じてる。親に別れを告げる意味も含めて、この悲しみは必要なはずだ。
……父さん、母さん本当にごめん、そしてそようなら。
「イルミナスさん、ありがとうございました。おかげでなんとか次のことを考えられそうです。」
「そうですか、それはよかったです。まだ時間はありますがどうされますか?こちら側に来るか、それとも通常通り地球で生まれ変わるのを待つか、どうしますか?」
「そちら側に転生させてください!正直、少々興奮してます。漫画やアニメは大好きですし、こういった経験は今を逃せば二度とできないでしょう。」
「わかりました。こちらの勝手な都合に付き合っていただき本当にありがとうございます。それでは、さっそく転生させていただきます。転生先はランダムですが、安定した家庭に生まれるようにしておきますのでご心配なく。」
「わかりました。何から何まで本当にありがとうございました。それでは、さようなら!」
俺がそういうと視界がぼやけていった。最後に一瞬彼女がほ微笑んで、
「いってらっしゃい。」
そう言ってくれた気がした。