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魔法について思い、拠点から出て遭遇する

 翌日。

 久し振りにしぶりにゲームの情報収集を行ったが、どれもこれも手持ち情報と似ている事ばかり。パーティメンバーで情報収集を行っているのはベネディクトだったので、今度新着情報がないか尋ねてみよう。

 昼食を取り、ログイン前に白紙の紙とペンを用意する。追加で作る必要性のあるものを書き出す。

 スマホサイズの鑑定プレート。治療用の医薬品。道具入れ。防護服。魔力タンク。

 とりあえずこんな所かと、ペンを置く。あとは必要に応じて作ろう。自分の道具入れに材料を入れておけばいい。

 そして、いつも通りにログインする。集会所に顔を出すが、誰もいなかった。時差を考えれば当然か。

 何故同じ所在地同士でまとめてくれなかったのか。運営にケチを付けたくなった。

 気を取り直して拠点に戻る。倉庫で人数分の鑑定プレート、道具入れ、防護服マント、魔力タンク(ブレスレット)を作る。某ライトノベルに、魔法陣の上に材料と完成品を置くと自動で作成される自動錬成と複数同時に錬成する複数錬成なる魔法が有った。参考になった。大変感謝しております。ありがとう厨二好きな作者。色々と助かりました。

 作った品々を持って集会場に向かう。集会所のテーブルの上にメモ書きと一緒に置いておけば良いだろう。書置きを書いていて、ふと、自動錬成と複数錬成を使う時の苦労を思い出した。


 この自動錬成と複数錬成は便利だが、魔法陣がなければならない。この魔法陣が曲者だった。

 参考にした作品では、『属性、威力、射程、範囲、注入魔力、誘導性、持続時間、弾道、拡散率、収束率、等々……』を魔法陣に描くらしい。

 ここで問題にぶち当たった。

 

 問:魔法陣ってどうやって描くの?

 答:不明。五芒星描くだけじゃ駄目? 駄目でした。


 ソロモン王の魔神七十二柱を召喚する際の魔法陣とかっていうのは、真偽はともかくネットで見つけた。参考にならなかったが。手持ちのライトノベルや漫画を参考に考えるしかなかった。

 詠唱しながら宙に書いた特殊な魔法文字が魔法陣に自動で変わる。

 詠唱すると、魔法陣が勝手に目の前に浮かび上がる。

 詠唱すると魔法が発動する。そもそも魔法陣なんて必要としない。

 手持ちの参考はこんな感じのものだった。ぶっちゃけ参考にならん。

 なので、自力で魔法陣の書き方について研究する事になった。

 研究の果て、魔法陣は完成した。独創的だが、起動するので問題はない。他の魔法も独自の魔法陣できちんと起動したのだ。不備不足があれば、その都度加修正を加えればいい。それに想像構築と言う、魔法陣をイメージするだけで使用可能な技能も習得出来たので今のところ不備はなかった。

 そんな流れがあって出来た魔法陣だが、その都度描く気にはなれず、鉄板を作って魔法陣を刻み恒久的に使える魔法陣を作った。そのうち他の魔法の魔法陣も試しに描いて起動するかチェックしよう。



 そんな予定を立てたが、このゲームは魔法陣なしで魔法が使用出来る。魔法陣を作っておいて何だそれは、とツッコミが入りそうだ。

 魔法陣をイメージで構築出来る『想像構築』とは別で、もう一つ習得したものが有る。

 それは、魔法について詳細なイメージを固めるだけで魔法が使える『想像構成』と言うものだ。

 正直な話、想像構築よりも想像構成の方が使える。ゲームなのにどうして脳内のイメージ通りの魔法が使えるのかは不明だ。未知の新技術と言う事にして置こう。



 書置きを残して拠点に戻り、久しぶりに地図を開く。

 この地図、メモ書き機能がないので不便だが、両手を使わなくて済むので利便性は微妙な代物だ。クレームを入れる事が出来るのなら、メモ書き機能を付けてくれと、一言言いたい。

 地図で、地形が以前と同じであるか確認する。同じならば、鉱石探査を使ってで追加の資材の回収がしたい。倉庫に修復や急遽必要な道具作成用の材料はいくらかあるが、有っても困る事はないだろう。

 資材回収で思い出す事が有る。

 このゲームには所謂『勇者の道具入れ』のような何でも入るアイテム収納器が存在しない。故に、創らねばならなかった。

 自由度の高いゲームであるからか、初期装備と呼ばれるものが与えられない。何でもかんでも自分で創れと言わんばかりの設定なのだ。

『きちんとした設定が存在しないクソゲー』だの『企画が通った事自体が奇跡』だの、口コミで感想を書かれても文句が言えない。

 逆を言うと好き勝手出来る。好き勝手出来る分、自制とモラルが問われるだろうが。逸脱者が増えたら自称警察が生まれるかもね。

 そんな事を思いながら、拠点の外に一人足を踏み出した。



 約三十分後。

 戦利品片手に拠点に駆け込んだ自分は、単身で拠点の外に出た事を後悔していた。

 何故かって? ゲームでお馴染み、水色のスライムに遭遇したからだよ。

 ダンジョンアタックとか、クエストとかやらないと出て来ないよねって、高を括っていたら徒歩十分で遭遇しました。

 目も鼻も口もなく、小学校の理科実験で作るような『洗濯糊に着色したお湯と薬剤を混ぜて作りましたよ』って感じの見た目で、少し動いただけでゼリーみたいにプルプル揺れている。

 正直に感想を言おう。気持ち悪かった。

 そんな気持ちの悪い物体がこっちに迫って来る。そして、思っていた以上に動きが早い。スライムが自転車より速いってどうよ?

「こ、光壁!」

 思わず腰を抜かしたが、防御系の魔法を発動させた自分は偉いと思う。白く発光する膜が自分を球状に包む。数秒遅れてスライムが膜に激突。見た目以上の速度が有ったのか、膜は魔法名にある『壁』にふさわしい強度を発揮し、スライムはベチャッと飛び散った。

 四方に飛び散った水色の物体を数十秒観察し、動かない事を確認してから、ほっと息を吐いた。

 白く光る膜を見ると、そこには未だにスライムの残骸が張り付いていた。

 危機を脱したと言う安心から、少し余裕が出て来たのか、壁に叩き付けられた卵みたいだなぁと、暢気な感想が出て来た。

 

 ここで、発動させた魔法について説明しよう。

 今回使用した魔法は、光壁、と言う光属性中級広域防御魔法――簡単に言うとバリア系の光の魔法だ。

 発動させると光の膜が術者を中心に球体状に展開される。膜のような見た目だが、これでもそこそこの強度がある。

 さて、そこそこの強度で何故『中級』と言う難易度なのかと言うと、それはこのゲームの仕様っぽかった。

 と言うのも、小石を一つ投げて『特定』の一個を狙うような魔法だと、威力は『初級、中級、上級、最上級』の四段階に分かれる。

 しかし、砂利を撒き散らして『不特定多数個』を狙う魔法で、初級が作れなかった。故に広域魔法は『中級、上級、最上級』の三段階に分かれる。単体の発展として広域魔法を作ったので威力の段階は同じものを使用している。

 分けるのが面倒だったのと、広域魔法は同じ階級の魔法と比べると威力は若干落ちるが、一つ下の階級の単体魔法と威力が違うので中級として扱っている。

 こう言った事情から、広域魔法には初級が存在しない。

 例えるなら水か。一滴だけ降って来るのと、雨のように降って来るのでは威力が段違いなので、この仕様に納得はした。


 自力で作った魔法が、想定通りの威力を発揮した事に安心していると、スライムの残骸に異変が起きた。

 残骸の色が消え、水に溶けるように数秒で宙に溶けて行く。置き土産のように、コロンッと、水色の小石が地面に落ちた。スライムは周囲の残骸含め、全て消えている。

「えーと、……何これ?」

 スライムを倒したと言う事なのか?

 光壁を解除し、恐る恐る直径五センチ程度の水色の不透明な石を拾う。よく見ると丸かった。不透明な丸い石だからかターコイズの玉を思わせる。作り立ての鑑定プレートを取り出し、スキル魔法の鑑定を使って、掌の小石を調べる。


 鉱石:水性スライムの魔石

 性質:魔力に反応して接触物を溶かす。


 以上が、プレートに表示された鑑定結果だった。

 自分は直ぐに周囲を見回した。スライムの影は存在しない。

 ダッシュで拠点に戻った。

 戻った理由?

 それは鑑定結果に有る。魔石を見るのは初めてだが、漫画などに存在する魔石には『魔物の特性が魔石として残る』ってのが有った。

 魔石の性質は、接触物を溶かす。つまり、スライムに襲われて引っ付かれたら溶かされるって事だよね? 捕食対象を溶かすとは、スライムの定番(?)攻撃みたいだな。

 スライムなんぞに、捕食されたくもない。

 装備を見直してから、もう一度外に出た。


ここまでお読み頂きありがとうございました。

第六話になります。

最初期の菊理は障壁を張って腰を抜かす普通の人でした。それがどうしてああなった?思うこの頃。経験って怖ろしいね。


連投はストックがなくなったので、ここでストップです。

更新は遅くなると思いますが、続きは書き溜まり次第投稿して行きます。


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