自分
自分は普通に産まれてきた女の子のはずだった。
最初に違和感があったのは幼稚園の頃。
「可愛い男の子」と言われて親が「女の子なんです」と申し訳無さそうに言う言葉に男の子と何が違うのかと疑問に思ったのが最初。
その後は成長につれ「ボーイッシュ」で育ってきた。
でも、ずっとずっと身体が「女の子」であることが気持ち悪くて、大っ嫌いで。
高校生の時に周りが彼氏とそういうことをしたと聞いて自分もすれば周りが言う普通の女の子になれると思って出会った人とした。
でも、何も思わなかった。
むしろ、気持ち悪かった。
その時は避妊なんて分からず言われるがままでその1回でそのまま妊娠。
このまま産み育てれば母親になれる、そうすれば世の中の普通の女の人になれると思って中退して産み育てることにした。
でも、感覚は母親というより父親で。
離婚後は実家に子育てを任せ仕事にのめり込んだ。
苦しかった。
どこに居ても母親、女という言葉が付きまとう事に。
同僚にトランスジェンダー女子が居た。
親しくなった頃にポツっと今の自分の苦しさを少しだけ話した。
「女やない男なんだ。まーちゃんに影響されたとかやななくて昔っから」
泣きながら話した僕のその言葉を聞いた同僚…まーちゃんは自分の行っているジェンダークリニックを教えてくれた。
先生に話をした。
「性別違和は病気じゃない、性別の選択だよ!ホルモン注射する?改名とかは?」
その言葉を聞いた時、泣けてきた。
普通にならなければならない。
そう言い聞かせる度に辛くて、苦しくて。
もういいんだよって認めてもらえた気がした。
自分を偽らず隠さず生きていいと言われた気がした。
それでも、問題はまだまだ山積みだった。
母親と妹にはカミングアウトした。
「だろうと思った、いつ言ってくるのかと思った」
嬉しかった。
でも、条件がついた。
子供の前では母親で居ること。
子供の学校にカミングアウトはしないで母親として参加すること。
親父にはカミングアウトしないこと。
あくまでも「母親」ということを忘れないこと。
子供の成長は嬉しかった。
でも「親」ではなく「母親」で居なくてはいけないのは苦痛だった。
その苦痛を忘れたいが為に家族を顧みず仕事にのめり込んだ。
会社にはカミングアウトしたが「どっちでもいい、お前はお前。」と言われ受け入れてもらえた。
世間と会社と家庭の受け入れの差にどんどん自分がわからなくなり自分を追い込んで身体の限界まで仕事をした。
ある日を境にまーちゃんが僕を連れ出し今は世間から見れば非常識で可笑しな生活を送っている。
簡単に説明するとこんなのが僕だ。