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憂憂、鬱鬱、最終電車。  作者: 阿片頭梔子
四月
6/7

四月、公園にて。帰り際。 2

 気が付くと、少しの間眠ってしまっていた。昼寝には一時の疲れを落とし、爽やかに起きることのできるものとだるさだけを残していくものがある。目覚めは後者のものだった。

 鞄も何も持たずに家から出てきてしまったので、時刻は分からなかったが、感覚的に1時を過ぎていることは分かった。

 また、今日も何もせずに午前が終わった。

 もう僕の心には焦燥感と絶望感は存在していなかった。代わりに、昼寝の後の酩酊感と憂鬱感が存在していた。

 四月の天気は安定しない。さっきまで群青一色だった空には、分厚い灰色のカーテンがかかっている。

 もう何もする気になれなかった。一日を取り戻す気力はなく、今日もまた今日が消化試合になっていく。

 僕はベンチから立ち上がり、来た道を歩いて戻る。何故ここまで全力で走ってきたのか、もう、わからなかった。

 坂道から電車が見える。あの電車は僕を乗せずにどこへ行くのだろう。がたんごとんという音と共に電車は遠くなっていき、やがて見えなくなった。


 * * *


 帰り際、何人かの中学生や高校生とすれ違った。彼らはもうすでに今の自分が置かれている状況を理解し、環境に適応しているようだった。そんな彼らが眩しくて綺麗だった。

 家に帰ると、何をするでもなくただぼーっとしていた。いつの間にか夕暮れが僕の部屋を寂しく照らしていた。こうして日々は消えていく。

 やがて喉が渇き、キッチンへと向かう。コップにいっぱい水を入れて一気に飲み干す。それを何回か繰り返す。だんだんと気持ち悪くなっていく。そして僕はトイレで吐いた。

 僕がトイレから出ると、リビングに父さんがいた。父さんは僕を驚いた顔で見る。

「なんだ、いたのかお前。家中電気ついてないから外出かけてると思ったぞ。」

「あぁ、ごめん。」

「体調でも悪いのか?気分が悪そうだぞ。また無理してるのか?」

 父さんは心配そうな目で僕の顔をまじまじと見る。僕はそれをありがたいと思うと、同時にうっとおしくも感じる。

「なんでもないよ。大丈夫だから。」

 父もそうか、というとそれ以上は何も聞かなかった。

 大丈夫だから。そんな言葉だけが空に浮いた。








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