表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憂憂、鬱鬱、最終電車。  作者: 阿片頭梔子
四月
5/7

四月、公園にて。

 僕はぐちゃぐちゃになった気持ちを紛らわすように坂道を走っていた。

 脇腹の痛みはすでに限界を迎えていたが、それでも止まることはなかった。

 そうして走り続け、僕はとある場所でその足を止めた。

「白金魚公園」

 何か嫌なことがあったり辛いことがあったりすると僕はいつもここにくる。公園の中にはベンチが一つだけ置かれており、しばらく人が来たような形跡はない。

 僕くらくらする頭と心臓を押さえながら、置かれているたったひとつのベンチに倒れこむように座る。

 白金魚公園は坂の上にあり、ベンチからは街を一望できる。何時見てもこの高さから見る自分の街に圧倒される。

 僕はこの場所が好きだ。

 目まぐるしく動く社会に取り残され、忘れ去られてしまった場所。ここにいると僕は何もかもを忘れることができる。世界が僕だけのものになる。

 やがて乱れていた呼吸も平常に戻り、心のもやも完全ではないが少しずつ晴れていった。

 こうしてひとりでベンチに座っていると、小学生だった頃を思い出す。

 「何して遊ぶー?」

 「やっぱサッカーでしょ。それか鬼ごっことかどう?」

 「えー?○○君の家でゲームしようよ。俺運動苦手だし。」

 「今日はうち無理。あとゲームばっかやってると怒られるから、今日は外。」

 あの頃は自分の将来なんて考えなくてもよかった。放課後のボール遊びや鬼ごっこやかくれんぼ、どんな遊びでも全てが楽しかった。小さな小学校だったのでいつもクラス全員で遊んでいた。

 僕は私立の少し離れた中学校を受験し、地元の中学校へと進学した同級生との交流はほとんどなくなった。最初の頃は僕を見かけると話しかけてくる友達もいたが、それも次第に少なくなっていき道端で会っても挨拶を交わすことすらなくなった。

 彼らは今頃何をしているだろうか。

 少しでも僕と同じように人生で迷っていてほしい。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ