四月、自宅にて。 2
朝食を終え、歯磨きをした後はリビングでテレビの報道番組を見ていた。
「これは、まぁどうなんでしょうねぇ。○○さんどう思いますか?」
「私としては~…」
今のトレンドや、社会情勢、ちょっとした事件や、芸能人のスキャンダルありとあらゆることをテレビの前の芸能人や専門家達があーだこーだ言っている。
そんな当人たちしかわからないようなことを知ったような風に話す大人や決めつける大人が嫌いだったが、目の前のテレビの映像だけでその人にレッテルを張り付けている僕はもう同類なのかもしれない。
こういった番組を見ていると、明るいニュースよりも暗いニュースのほうが人間は興味があるのだということがわかる。現に僕も、輝かしい賞を取ったなどというニュースより悲惨な連続殺人のほうが気になってしまうし、記憶に残る。明るいニュースも暗いニュースと同じくらいあるのだろう。ただ、暗いニュースが目立つせいで、これからの自分の将来に不安を覚えてしまう。
「本当に許せないですよ。今後こういったことはないようにしていただきたいです。」
「私もそう思います。それではお別れの時間です。今日は皆さんありがとうございました。」
見ていた報道番組が終わったところで、時計を見ると時刻は11時を指していた。
11時。
それに気づくと、僕はソファから飛び上がり半ばパニック状態に陥った。焦燥感が脳を覆い、絶望感が体にまとわりつく。脳の奥と体の表面が冷たくなっていく。
何故自分は朝からどうにもならないことや関係のないことで一喜一憂しているのだ。
勉強は出来なくても、テレビを見る以外にもっと有意義な時間の使い方はできただろう。
だから僕はダメなのだ。
何か、何かしなきゃ。
時間だけはあると思っておきながら、無駄に時間を使うと周りから置いて行かれるような感覚に襲われる。いや、実際遅れているのだ。周りは皆働いているか、大学に進学している。僕以外の浪人生は勉強しているのだ。
あぁ、逃げたい。ここにいたくない。
錯乱状態になりながら服を着替え、僕は家の鍵も閉めずに家から飛び出した。