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憂憂、鬱鬱、最終電車。  作者: 阿片頭梔子
四月
3/7

四月、自宅にて。

 目が覚めると時刻は午前9時を過ぎていた。

 高校を卒業してからというもの、朝早く起きることは少なくなっていた。今思うと、6時に起きることができていたことが不思議だ。少し寝すぎたせいなのか体がだるい。

 洗面所に向かい顔を洗う。今日は特に外へと出る用事がないので、寝ぐせは直さないでもいいだろう。鏡を見ると、髭が伸び始めていた。電動髭剃りを手に取り、それを鼻の下、あご下へとあてる。

 髭が伸びるのも早くなった。

 自分が徐々に大人になっていく。それは悲しみより諦めに近い感情だった。


 両親は共働きなので、家には僕一人しかいない。

 ダイニングテーブルの上には朝食であるホットサンドが置いてあった。母さんいわく、楽だしそれなりにおいしいという理由で朝食は大体ホットサンドになった。朝はご飯派の父さんは我が家の朝食はホットサンドブームにより乗っ取られてしまったと嘆いていた。

 すっかり冷めたくなってしまったホットサンドを電子レンジに入れて温めなおす。

 こうした日常のちょっとしたことにも勉強は入り込んでくる。電子レンジは水分子に電磁波を当て、振動させることによって熱を生み出す。たしか、極性分子やら電荷の偏りやらが関係していたはずだ。

 最近の電子レンジはチンって鳴らないのにレンジでチンっていうよな。

 そんなことを考えながら、電子レンジから温められたホットサンドを取り出しテーブルの上に置く。冷蔵庫から牛乳を取り出し、ガラス製のコップへ注ぐ。イスに座り、小さくいただきますを言う。

 ホットサンドを口に運びながら、今日のこれからの予定を考える。

 浪人生なのだから勉強をするべきなのだろう。予備校から貰った学力診断テストをやって自分の学力を測り、そこから次の模試に向けて勉強をする。これがスタンダードなやり方だ。

 しかし、勉強をする気にはなれなかった。自分はまだ到底勉強と向き合えない。

 ただ他にしなければいけないこともなかった。今の僕には時間しかない。


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