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09 時計使いのスキル




 アリスが冒険者ギルドマスターの養子となってから半年後。

 シクロは――すっかり時計技師としての実力を高めて、一部では有名な技術者となっていた。


 この日も、とある伯爵家から修理依頼を受け、送られてきた機械式の時計を修理することになっていた。


「よし、これが今日の仕事かあ」


 シクロは、職人ギルドの仕事部屋にて、部屋の中央にでんっ、と置かれた大型の機械時計を眺める。


「見た目には壊れて無さそうだけど……『時計鑑定』っ!」


 シクロはスキルを発動させた。

 時計鑑定とは、時計限定の鑑定スキル。時計の情報が事細かに分かるようになるスキルだ。


「――なるほど。奥の歯車が歪んでズレちゃったんだな。なら部品を替えればどうにかなりそうだ。……『時計収納』っ!」


 原因が分かったシクロは、続けて時計使いの別のスキルを発動。

 時計収納とは、時計とその部品限定の収納スキル。異空間に物品を保存しておくことの可能なスキルだ。


 シクロは目の前に現れた黒い空間の穴に手を突っ込み、部品を取り出していく。


「必要なのはこれとこれと……あとこれかな」


 こうして部品を取り出した後は、修理に取り掛かる。


 シクロは元より魔道具を作る才能もあった為、手先が器用だ。

 今回の機械式時計でも、サクサクと分解し、部品を付け替えていく。


 そうして一時間もしないうちに、修理は完了した。


「――よし。後はこれで時計が動くかどうか確認すればいいかな。『時計操作』っ!」


 シクロは最後の確認として、また時計使いのスキルを発動。

 時計操作とは言葉の通り、時計を動かすだけのスキルである。時間を進めたり、巻き戻したりすることが出来る。


 機械式時計は、問題なく動作する。もしも部品が壊れていた場合は、たとえ時計操作でも動作することは無い。

 だから、シクロは動力をいちいち準備せずに動作確認出来るこのスキルを重宝していた。


「よしっ! 修理完了! ――『時計停止』っ!」


 最後に、シクロはまたまた時計使いのスキルを発動。

 時計停止も、名前の通り時計を停止させるスキルだ。動力の有無に関係なく、動作している時計を停止させる。


 時計操作を使うと動力なしでも動く。もちろん、そんな不気味な物品を納品するわけにはいかないので、シクロはしっかり時計停止で停止させ、元通りの状態に戻しているわけだ。


「……あれ? 誰か近づいてきてる?」


 シクロは、人が近づいてくる気配――というよりも、人が持つ時計が移動してくる気配を感じ取った。


 これもまた、シクロの時計使いとしてのスキル『時計感知』の効果だ。

 文字通り、時計の在り処を感知することができる。それがどのような時計なのかについてもある程度分かる。

 なので、例えば懐中時計などを身に着けている人の居場所などが分かるようになっているのだ。


「おかしいな。受け渡しの時間はまだのはずだけれど……『時計生成』っ!」


 シクロはさらに、最後の時計使いとしてのスキルを使う。

 これもまた、文字通りに時計を魔力を使って生成するスキルである。


 ただし、生成した時計は使った魔力に応じて、一定時間で消滅する。

 このデメリットを逆に利用して、シクロは時計を携帯せずともいつでも時間を確認できるようにしているのだ。


「……うん。まだお昼にもなってないし。なんだろう?」


 シクロは首を傾げる。何しろ、シクロの工房は職人ギルドの片隅の、一番しょぼい工房だからだ。

 わざわざ訪れる職人などシクロ以外に居ないし、用も無いのに近づく人間がいるとは思えない。


「まあ、いいか。受け取りなら、もう渡しちゃえばいいだけだし」


 そう呟いて、シクロは時計の気配が近づいてくるのを待つことにしたのであった。

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