03 初戦闘
カリムとシクロが密かに会話をしていた一方で、ミストはしっかりと訓練を続けていた。
十分に訓練を済ませただろう、とカリムが判断し、続いてシクロの番。
そうして探索の訓練を十分に行った後。いよいよ、今日の本番。魔物とのパーティ単位での初戦闘がやってくる。
「そんじゃあ、いよいよ実戦や。ウチとシクロはんで牽制するから、ミストちゃんが魔法で魔物を仕留める。これで連携の確認と、ミストちゃんのレベリングを同時に行っていくで」
「はいっ!」
「……分かってる」
ミストとシクロ、それぞれが返事をして、いよいよ行動開始。
先頭を移動するのはカリム。その後ろに少し離れてミスト。さらにミストの傍らに、守るように立つのがシクロ。
この陣形で、それぞれが周辺を索敵、探索しながら森の奥へと進んでいく。
シクロは時計感知の効果で、どこに標的となる魔物がいるのか把握しているのだが、今回は訓練の意味合いもある為、あえて黙っている。
そうして――十分ほど歩き続けた先で、標的となる魔物と遭遇する。
「――グルルル」
唸り声を上げるのは、熊型の魔物。普通の熊とは違い、ナイフのように鋭すぎる爪と、立派な角を持っている。
「こいつは、この森では最強の魔物、キラーベアやな。ウチとシクロはんの援護があれば、ミストちゃんでも倒せると思うで」
「……が、がんばります!」
そうして、戦闘が始まる。
まず真っ先に前へと出たのは、カリムであった。
「――シッ!!」
カリムは剣を抜刀しつつ、キラーベアへと襲いかかる。
カリムの実力であれば、このままキラーベアの首を撥ねることも可能だ。だが、今回はパーティ単位での連携を確かめる為、あえて手加減する。
カリムの剣閃は、キラーベアを威嚇するように、薄皮一枚を斬るような位置を凪いだ。
「グオオオオッ!!」
攻撃を受けたことに怒り、キラーベアが立ち上がり、腕を振るう。
だが、残念ながら相手が悪い。カリムとのステータス差は圧倒的で、あっさりと回避は成功。
キラーベアの腕が空を切り、隙が出来る。
「――喰らいな」
そこを、シクロが突く。
威力を大きく弱めた――ゴム弾を使用する、ミストルテインによる威嚇、制圧用の射撃でキラーベアを狙う。
ゴム弾と言えども、ミストルテインの性能が破格であるため威力は無視できない。
次々とキラーベアに着弾し、重たい打撃でも喰らったような衝撃を与える。
「グルルルォオオオッ!」
正体不明のダメージを受けて混乱したキラーベアは、手当たり次第に暴れ、腕を振り回す。
そんなキラーベアに、付かず離れずで剣閃を繰り出すカリム。腕や足に浅い傷を負わせて、着実にダメージを与える。
「――離れて下さいッ!!」
ミストの声が響く。魔法を発動する準備が終わったのだ。
カリムはそれをしっかりと理解し、素早く後退。かつ、ミストの魔法がキラーベアを狙いやすいように射線を空ける。
「シャインランスッ!!」
そしてミストの魔法――光魔法の一種であり、現在のミストが扱える最も威力の大きな攻撃魔法、シャインランスが発動。
すると一瞬にして光の巨大な槍が生成される。
そして直後、槍は勢い良くキラーベアを狙って飛翔する。
「――グギャアアアアアッ!!!」
光の槍は――正確にキラーベアの胴体を貫き、そのまま勢いに乗ってキラーベアの巨体を引きずり、地面へと突き刺さり縫い付ける。
そして胴体を貫かれたキラーベアは、断末魔の叫びを上げた。
少しの間は、その生命力の高さゆえにジタバタと足掻いていた。
だが、すぐに完全に絶命し、身動きを取らなくなる。
「――すごいぞ、ミストっ!!」
真っ先に喜んだのはシクロであった。
ミストがキラーベアを一撃で倒したことを、自分のことのように喜び、ミストを抱き締め、頭を撫でる。
「ご、ご主人さまっ。恥ずかしいですっ!」
「ははは、そう言うなって!」
すっかりミストとじゃれ合うことに違和感を覚えなくなったシクロと、口では恥ずかしがりながらも抵抗しないミスト。
そんな二人の様子を見ながら、カリムが何かを吐き出すような仕草をしつつ言う。
「うーわ。砂糖吐きそう」
その後も、三人は何度か魔物と遭遇し、連携を確認しつつミストに撃破させ、レベリングを続けた。
やがて日も落ちてきて、森が薄暗くなり始める頃になり、ノースフォリアへと帰還する。
夜になれば特にやることも無い。以後何事もなく、一日が無事終わる。
――その一方で。王都では、大きく事態が進行していた。





