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15 冒険者ギルドへ




 武器を買った後は、すぐに防具を買い揃えに向かう。

 武器とは違い、防具はサイズの合うものを揃えるだけであった為、さほど時間は掛からなかった。


 その後は洋服店でミストの普段着を買い、冒険者向けの雑貨店で必要な道具を手当り次第買い漁り――やがて買う必要のあるものも無くなった為、次の用事の為に目的地へと向かう。


 それは、冒険者ギルド。

 ミストのことも、冒険者として登録する為だ。


「冒険者のシクロだ。ほら、ギルドカード」

「ようこそいらっしゃいました、シクロ様。ご用件は?」

「この子の冒険者登録をしたいんだ」


 シクロは受付に向かうと、真っ先に用件を伝える。


「そうなりますと――そちらの方は奴隷ですから、パーティ登録しか出来ませんが、よろしかったでしょうか?」

「パーティ登録?」

「パーティを組んでいる間だけ有効な、特殊な冒険者としての登録のことです。今回の場合、シクロ様の所有する奴隷ですから、シクロ様がそちらの方とパーティを組むことで、限定的なギルドカードを発行します」

「ふーん」


 シクロは、職人ギルドでの経験から、家族に発行できる家族カードのようなものかな、と考えた。


「そんじゃあ、それでよろしく頼む」

「かしこまりました。では、こちらの用紙に必要事項を記入お願いします」


 受付が登録用紙を取り出し、これをミストが受け取って記入を始める。


「……終わりました」


 やがてミストが記入を終え、受付に用紙を返却する。


「――あら。失礼ですが、記入漏れがありますよ」


 受付が用紙を見て、ミストに尋ねる。


「スキルの欄が、未記入になっていますね」

「っ……! そ、それは、必須なんでしょうか?」

「ええ。ギルドから外部に向けて公表するようなことはありませんが、冒険者の技能を把握する上で必須事項ですので」


 受付に言われて、ミストは戸惑う。


 そんなミストをみて、シクロは支えるように言う。


「――大丈夫だ、ミスト。何があっても、ボクが味方だ」


 そして、ミストの手をぎゅっと握りしめる。

 これで勇気の出たミストは、意を決して受付へと告げる。


「私のスキルは……『邪教徒』です」

「ええっと……はい?」

「ですから、スキルは職業スキルの『邪教徒』ですっ」


 周りに聞こえないように、注意を払いながら受付に伝えるミスト。

 だが、そんな注意も受付が台無しにしてしまう。


「じゃっ!? 邪教徒ですって!?」


 大声で驚きの声を上げてしまう受付。慌てて口を抑えるが、もう遅い。

 既にギルド内の、他の冒険者達に聞こえてしまう。


「――邪教徒だって?」

「誰が?」

「あの小さい女じゃねえか?」

「ありえねぇだろ」

「近寄りたくねぇな」


 ザワザワと、冒険者達がミストとシクロを遠巻きにしながら騒ぎ出す。


 さらには――何か気に障った様子の冒険者が、ミストの方へと近づいてくる。


「おいあんた、邪教徒だってのは本当か?」

「何だテメェは? ボクのミストに何の用だ?」


 シクロは近づいて来た男の前に出て、ミストをかばうような位置に立つ。


「用も何も、邪教徒かどうか聞いてるんだよ」

「ああ。ミストのスキルは邪教徒だ。それがどうした?」

「どうしただと?」


 ピクリ、と男は眉を動かして苛立ちを顕にする。


「それはこの俺――『瞬聖』のライトハルトを前にして言っているのか?」

「あ? しゅんせー? 何だそりゃ。新手の魔物か何かか?」


 シクロが煽るように言うと、男はさらに怒りを顕にし、声を荒げる。


「どうやら俺の名前も知らない田舎者らしいなッ! 無礼者めが、礼儀を教えてやるッ!!」

「へえ? 何をくれるって?」

「その根性を叩き直してやるッ! 表へ出ろッ!!」

「……いいぜ。その喧嘩、買ってやるよ」


 シクロと男、ライトハルトは睨み合う。

 そんな二人に、待ったを掛ける人物が現れる。


「――二人とも、待ちたまえ! その喧嘩、ギルドマスターである私が預かる!」


 そう言って二人を制止したのは、騒ぎを聞きつけて現れたグアンであった。


「なんだよ、止めるつもりか?」


 シクロはグアンを睨みつける。これに、グアンは首を横に振って答える。


「違う。ただの喧嘩をギルドの前でやらせるつもりは無い。正式に、決闘をして決着を付けろということだ」

「――ほう? ギルドマスター。どういうことだ?」


 これに疑問を返したのはライトハルト。


「高ランク冒険者なら、高ランクらしい決着の付け方をしろというだけだ。気に入らないことがあるなら、決闘で相手に要求を飲ませればいい。場所も演習場を使っていいぞ」


 尤もらしいグアンの意見に、ライトハルトも納得する。


「確かにな。――ふん、田舎者、付いてこいッ! ギルドの演習場で決着を付けてやるッ!」


 言って、先に演習場へと向かうライトハルト。それを見て、野次馬と化した冒険者達も見物の為に演習場へぞろぞろと向かっていく。


「……なあ、おっさん。アイツ、結局誰なんだ? 有名人気取ってたみたいだが」

「シクロ君が知らないのも無理は無い。彼は遠征から昨日帰ってきたばかりの、Sランク冒険者パーティの内の一人だからね」


 言って、グアンは軽くライトハルトについての情報をシクロに伝える。


「――『瞬聖』のライトハルト。職業スキル『槍聖』持ちであり、教会の聖騎士としての身分も持っている冒険者だ。目にも留まらぬ速さの槍捌きから、瞬聖という異名がついた」

「はぁ、なるほどね。――それで邪教徒を目の敵にしてたってわけか」


 言って、シクロは不安げにしていたミストを抱き寄せて言う。


「安心しなミスト。――『高ランク冒険者なら、高ランクらしい決着の付け方』があるらしいからな。ちゃんと勝って来るさ」

「……はい。信じております」


 こうして――シクロと『瞬聖』ライトハルトの決闘が始まることとなった。

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― 新着の感想 ―
 この無能受付嬢はクビだな。
[一言] 受付嬢は殺すか奴隷落ちにすべし
[一言] 次回、受付嬢&瞬聖死す!
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