14 お買い物
領主邸にて一晩を過ごし、翌日。
シクロとミストは、早速武器や装備を買い揃えるため、街へと出ていた。
朝食も領主邸で頂いてからの出発なので、二人ともお腹は空いていない……はずだったのだが。
「――ミスト?」
シクロが気づくと、ミストの歩調が遅れ気味だった。
見ると、ミストの視線が屋台の串焼き屋に奪われていた。
「……ミスト。食べたいのか?」
「――はっ!? ご、ご主人さま!?」
慌てて誤魔化すミスト。
「そ、そんなことありませんっ! さあ、ご主人さまっ! 武器を見にいきましょう!」
そんなミストの様子に、シクロは苦笑を浮かべる。
「我慢しなくていいぞ。串焼きぐらいなら、いくらでも買ってやる」
「……本当ですか?」
ミストの問いかけに、シクロは頷く。
「ああ。……実を言うとな。ボクは『時計使い』っていう特殊な職業スキル持ちなんだ」
「時計使い、ですか」
「ああ。ミストほどじゃないけど、このスキルのせいで色々苦労したからな。だから、ってわけじゃないけど――ミストが幸せにしていてくれたら、ボクも自分が報われるみたいな気分がして、幸せになれるんだ」
シクロは、照れくさそうにしながら本音を語る。
「だから、ミストには遠慮なくやりたいこと、欲しいものを教えて欲しいんだ」
「――ご主人さま」
シクロの思いを受けて、ミストも感じ入るところがあったのか、真剣な様子で頷く。
「分かりました。そういうことでしたら――私、遠慮なく幸せにしてもらいます。ご主人さまに、たくさんのものを貰ってしまいますねっ♪」
少し茶目っ気を出して言ったミストに、シクロも同じように答える。
「ああ。遠慮なく、どしどし貰ってくれ!」
「――はいっ!」
そうして、二人は互いの意志を確認しあった後、なんだかんだで二本の串焼き肉を買い、一本ずつをそれぞれが頬張りながら武器屋へと向かった。
武器屋に到着すると、ミストのスキルに合った武器を探す為、様々な武器を試し切りさせてもらうことになる。
「――試し切りは、ここでやってくれ」
武器屋の店主が案内したのは、店の裏手に作られた試し切りの為の広場。
藁の束や木材が無造作に置いてあり、これらで試し切りをするのだろう、とシクロは予想する。
「助かるよ、店主さん。武器はまとめて持ってきていいか?」
「ああ。試し切り用の武器ならいいぞ」
店主の許可も出たので、シクロは試し切りに使える武器をまとめて広場へと運ぶ。
中には棍棒や鎖鎌など、変わり種の武器もあった。
「――よし、それじゃあミスト。こいつらを順番に試していってくれ」
「はいっ!」
こうして、ミストの試し切りが始まる。
最初は剣や槍など、スタンダードな武器から始まった。が、どの武器を使ってもフラフラとした動きしか出来ておらず、とても適性があるようには見えない。
そうして刃のついた武器を全て試した結果、どれも適性が無いということが判明した。
「うーん、刃物が駄目ってなると、打撃武器になるのか? ミスト、次はこれを使ってみてくれ」
「はい!」
シクロがミストに渡したのは、あまり武器として使う者の居ない短杖。
魔法を使う者が最低限の護身に使うことならあるものの、近距離戦闘で主武器として使う者は少ないのが杖という武器だ。
「――いきますっ!」
今度こそ、と意気込んでミストは短杖を振るう。
すると――今までは素人丸出しの動きだったミストだが、いきなり鋭い振り下ろしを繰り出した。
標的にされた木材は、見事に短杖に打ち付けられ、バキッと音を立てて折れる。
「……っ! 出来ました、ご主人さまっ!」
「よし、えらいぞミスト! 適性は杖にあったみたいだな!」
喜ぶミストを、シクロは頭を撫でながら褒める。
「ってなると、短杖だけじゃなくてもっと長いものでも使える可能性があるな。もう少し試してみようか」
「はいっ!」
そうして――最終確認として、いくつかの武器を試して、適性の確認は終了した。
結果、ミストの適性は『杖適性』。ある程度の長さまでの棒状の武器なら、何でも上手に扱えることが分かった。
ただし、槍のように長い棒になってくると杖として認識されないのか、スキルの効果は出なかった。
また、棍棒のように形が杖と呼ぶには歪なものにも効果は出ない。
そうした検証の結果、ミストに最も適した武器は中程度の長さの杖だろうということになった。
「――店主さん。試し切りが終わったから、武器を選びたいんだが」
「そうか。何が良いんだ?」
「中ぐらいの長さの、近接戦闘用の杖が見たいな」
「杖か……数は無いが」
言って、店主は店の奥へと姿を消す。
やがて、数本の杖を抱えて戻ってくると、机の上に並べて説明を始める。
「戦闘用の杖ってなると、魔物の素材を使った合成棍か、金属製の杖か。どっちもお嬢ちゃんの体格に合わせて、何本か持ってきたぞ」
「悪いな。――ミスト。持ってみて、一番良さそうなものを選んでいいぞ」
「わかりましたっ! えーっと……」
ミストは店主が持ってきた杖を順に手に持ち、軽く振って使用感を確かめていく。
やがて候補は数本に絞られ、最終的には二本の杖で悩むことになった。
「どうした、ミスト」
「えっと、こっちの杖の方が使いやすいんですけど、威力ならこっちの金属製の杖の方が良さそうで……」
「なるほど。じゃあ、両方買っちまおう。店主、頼む」
「あいよ」
「えっ!? ご、ご主人さまっ!?」
悩んでいた二本の杖を両方ともシクロが受け取り、そのまま店主に渡してしまい、ミストは驚く。
「気にするな。ボクには収納系のスキルがあるからな。状況に合わせて持ち替えて使えば良いんだよ」
贅沢な使い方を提案するシクロに、ミストは呆れ半分嬉しさ半分の笑みを零す。
「はい――わかりました。ありがとうございます、ご主人さま」





