表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/200

12 邪教徒とは?




 エリアヒールが使えることが分かり、シクロは興奮した様子でミストに語る。


「まず、神聖魔法の適性を持つ人自体が希少なんだ。だから、そういった人はだいたいが教会に連れて行かれる。そして、使える人でも最初はヒールが使えれば良い方だ。それなのに、ミストは最初っからエリアヒールが使える。これは、めちゃくちゃすごいことなんだぞ!?」

「は、はい。わかりましたご主人さま。だから、強く抱き締めすぎるのはおやめ下さいっ!」


 言われて、ようやくシクロは興奮のあまりやりすぎていたことに気づき、ミストから離れる。


「あー、ごほん。というわけで。ミストは、ものすごい才能を持ってるってことになる」

「そうなんですか? だとしたら、嬉しいです。ご主人さまのお役に立てそうですから」


 ミストの屈託のない笑みと言葉に、シクロは照れてしまう。


「あー、ありがとう。それじゃあ次のスキルを確かめてくれ」


 頬を掻きながら、次を促すシクロ。


「分かりました。次、いきます」


 そうして、ミストは次のスキルに魔力を流し込み発動する。


「……えっと、次も魔法スキルのようです。攻撃魔法がほとんどです。一つは攻撃魔法じゃないみたいですが」

「そうか。じゃあ、その攻撃魔法じゃないやつを発動してくれるか?」

「はいっ!」


 言われた通り、ミストは次の魔法を発動する。


 すると――ミストを中心として、球状の範囲を覆うように光の壁が発生する。


「えっと、ご主人さま、これは?」

「これは……もしかして、バリアー!?」


 また驚きのあまり声を上げるシクロ。


「ってことは光魔法の適性があって、しかも最初から中級レベルの魔法が使えてることになるぞ!! すごい、すごいぞミスト!」

「は、はいっ!」


 興奮するシクロに、ミストは少しだけ引き気味になりながら頷く。


「ミストにもわかりやすく説明すると、光魔法っていうのは攻撃魔法中心の魔法適性だ。神聖魔法が補助と治癒に特化した魔法なのに対して、光魔法が攻撃と少しのデバフ、それに防御って感じかな」

「そうなんですね。じゃあ、私は攻撃も防御も補助も、全部魔法で出来るということですか?」

「そうなるな。正に、聖女のごとしって感じだよ」


 シクロは嬉しそうに語る。

 そんなシクロを見て、ミストは疑問に思ったことを口にする。


「あの……ご主人さまは、スキルのことに随分お詳しいんですね」


 その質問があった途端、シクロは固まる。

 そして、暗く悲しげな声で答える。


「……ああ。昔、婚約者だった人が、そっち系の職業スキル持ちだったからな。それで覚えたんだよ」

「……そう、だったんですか」


 シクロの様子から、触れてはいけない話題だったのだと、ミストは悟る。

 そこで、話題を変えるためにミストから率先して話を切り出す。


「――ではっ! 次は3つ目のスキルですねっ!」

「……ああ、そうだな。次もすごいスキルだったりするんだろうな!」


 ミストの調子に合わせて、シクロも慌てて暗い雰囲気を払拭するように声を上げる。


「では、いきます!」


 ミストは、早速3つ目のスキルに魔力を流し込む。


「これは――えっと、また魔法? みたいです。でも、多分この魔法スキルは、一種類しか使えそうにありません」

「そっか。試しに使ってみてくれる?」

「はい」


 ミストは言われた通り、魔法を発動する。


「――あの、なんと言えばいいのか分からないんですが。色々と『直せそう』です」

「直せそう?」


 ミストの言葉に、シクロは首を傾げる。


「はい。例えば、あちらの花瓶に添えられた花を、もっと元気に出来ます。ソファの革が少し傷ついていますが、それも直せます。後は――ご主人さまの髪も、なぜか直せそうな感じがします」

「ボクの髪まで?」


 そこまで聞いて、シクロは考え込む。


「……いや。まさか、そんなことがありえるのか?」

「ご主人さま?」

「……でも、そうだな。うん。ミスト、その魔法だけど、ボクは心当たりがある」


 シクロは半信半疑、といった様子で語る。


「その魔法の名前は『再生魔法』。治癒魔法ですら治せない、ありとあらゆるものを再生する可能性を持った、伝説の魔法だよ。――それこそ、聖女ですら持っていない。歴史上の偉人と呼ばれるような人が持っていたとされるスキルだ」


 そこまで説明されて、ようやくミストも驚きを見せる。


「そんなすごい力が――私に?」

「そうだよ、ミスト。君には、聖女すら超える才能がある」


 そう語りながら、シクロは疑問に思う。

 どうして――ここまで光に寄った適性を持った職業が『邪教徒』なのか?

 というか、そもそも邪教徒とは何なのか?


 そして――そもそも、本当にミストは『邪教徒』なのか?


 これが――シクロが教会のスキル選定の儀に対して、初めて疑念を抱いた瞬間であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 職業は法皇、教皇等教会に不都合なものだったんですかねぇ
[一言] これは一神教で言うところの邪教徒なんですかね?
[一言] これ教会にとって都合が悪い事だから「邪教徒」って職業スキルを捏造して陥れたんじゃないの?教会側からしたら自分達が見出した聖女以上の力を持つ彼女の様な存在は教会の威光を妨げる邪魔者になるだろう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ