03 情報提供
シクロは、ディープホールで起こったこと、経験したことの全てを話した。
自身の能力に関してはボカしながらだったものの、遭遇した魔物はもちろん、エルダーレイスと戦い、勝利し、身体を乗っ取られかけたことも。
その影響で髪の色が変わってしまったみたいだ、ということまで話してしまう。
そうしてシクロの方から思い付けるだけの話を全て話した後は、デイモス、そしてグアンの二人から質問を受ける。
例えば、話に出てきた魔物の手応え等。自分たちの知る魔物と比べてどの程度強かったのか。あるいは、辺境伯の領軍で対処可能なレベルなのかどうか。
そうしてディープホールについての話をするだけで、かなりの時間が経過してしまう。
やがて十分に話を済ませた、と考えたデイモスが話を区切る。
「――よし、ありがとうシクロ君。これだけの情報があれば十分だよ」
「そりゃあ良かった。報酬は、忘れずによろしく頼むぞ」
「もちろん。――さて。それでは次の話題に移ろうと思うんだけれども」
まだ話があるのか、とシクロはうんざりした表情を浮かべる。
「ふふ。そう邪険にしないでくれたまえ、シクロ君。今度はそこまで長い話になるわけじゃないさ。まず――これは情報料のついでの報酬とでも思ってもらえればいいんだけど、君の懲役刑を我がノースフォリア領内に限り撤回させてもらうよ」
「……ん? それ、何の意味があるんだ?」
シクロは首を傾げる。正直言うと、シクロは既に犯罪奴隷としての身分からは開放されている。今さら懲役刑を撤回すると言われても遅い。意味が無いのだ。
「まあ、簡単に言えば君は我が領内に限り犯罪者『ではなかった』ことになるってことさ。前科者じゃなくなるってこと」
「それが何だってんだよ」
「名誉的な意味が強いけど、いちおう社会保障的な意味合いもいくらかあるね。まあ、SSSランクともなればあんまり関係ないだろうけど」
デイモスは言った後、より真剣な表情を浮かべる。
「どちらかと言えば、これは我々にとっての意味が大きい判断になる」
「……って言うと?」
「つまり、我々は君のことを犯罪者だとは思っていない、ということだよ」
シクロはそこまで言われて、ようやく驚き目を見開く。
「つまり、ボクが捕まったのは冤罪だったって言いたいわけか」
「そうだよ。犯罪奴隷がSSSランクになったと聞いて、慌てて経歴を調べさせてもらったよ。……裁判の記録もこちらに送られてきているけど、酷いね。証言や状況証拠ばかりで、物的証拠が何も無かった」
デイモスは眉を顰めて、王都での裁判について批判した。
「正直、こんな杜撰な裁判でSSSランクの冒険者に前科を付けるなんて冗談じゃ済まない。王都の方がどういう判断を下すのかは知らないけれど、少なくともノースフォリアの自治権が及ぶ範囲でならこの判決は無効にさせてもらうよ」
「……そう言ってもらえると、助かるよ」
この時、シクロは考えていた。少なくとも、デイモスに関しては、他の人間よりは多少信用してもいいだろう、と。
とはいえ、切っ掛けがSSSランクの冒険者、というある種の権威によるものだというのは気に入らない。だから、あくまでも信用するのは少しだけに過ぎない。
「さて。君の経歴についての話も終わったし。いよいよ最後の頼みだ」
デイモスは、また話を仕切り直し、最後の要求を口にする。
「シクロ君。SSSランクの冒険者である君に、指名依頼だ。――ディープホールの『深部』を調査、攻略して欲しい」
その依頼内容に――シクロは、ニヤリと自信有りげな笑みを浮かべるのであった。
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