05 冒険者ギルド
「――なんだってッ!? 『賢者』が出たのか!?」
そんな声がどこからともなく響く。
すると、教会の奥から背丈の大きい筋肉質な男が姿を表した。
「は、はい、そうです!」
「そうか、この子が『賢者』となった子か!」
男はアリスに向き直り、笑顔をみせてから話し始める。
「はじめまして、お嬢ちゃん。俺は王都の冒険者ギルドのギルドマスターを務める者だ」
「ぼ、冒険者ですか?」
冒険者ギルドとは、世界のあちこちで暴れる魔物を討伐する仕事などを請け負う『冒険者』を束ねる組織のことだ。
そしてギルドマスターとは、そのギルドの一番えらい人になる。
つまりこの男は、王都の冒険者ギルドで最も偉い人間であると言えた。
そんな人間を目の前にして、アリスは緊張して固まってしまう。
そんなアリスを心配して、シクロが駆け寄る。
「アリスっ! 大丈夫、ボクがついてるから」
「お、お兄ちゃん……」
「ほう、君はこの子の兄かね?」
「はい。兄のシクロと言います」
シクロが言うと、ギルドマスターはシクロに向かって話し始める。
「悪いが、話があるのはこの妹ちゃんの方なんだ。『賢者』っていうのは、『聖女』にも匹敵する強力な職業スキル。数多の魔法系スキルを持つ『錬金術師』の、さらに上位スキルなんだ。冒険者ギルドとしては、世界の平和の為にも妹ちゃんを見逃すわけにはいかない」
「それは――」
「悪いが、話はここまでだよ。さあお嬢ちゃん。こっちへ来てくれ。これからの話をしよう」
「あっ……!」
不安げな表情を浮かべるアリスを、ギルドマスターは手を引いて連れて行ってしまう。
職業スキル持ちは、その未来を法律で定められているのだから、これ以上シクロがでしゃばることは出来なかった。
悔しげな表情を浮かべて、アリスを見送ることしか出来ないシクロ。
そんなシクロに、司祭が声をかける。
「……君はまだ儀式を終えていないだろう? 儀式を続けるぞ」
「あ、はい……すみません」
言われて、自分がでしゃばったことで儀式の流れが止まっていたことに気づくシクロであった。