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18 思わぬ効果




 エルダーレイスとシクロの最後の攻防が始まる。


「ちくしょう! 離れろッ!!」

『ふん、力ではどうすることも出来まいッ!』


 取り付いたエルダーレイスを剥がそうと暴れるシクロ。だが、エルダーレイスはまるで癒着でもしたかのように、シクロの身体にぴったりとくっついて離れない。


『ククク、このまま貴様の肉体は呪い殺されるだけよ!』

「くそ、だったら……『時計生成』ッ!」


 シクロは巨大な光球を生み出す。

 それを――自らの身体に当たるほどに近づける。


『グアアッ!? 貴様、自らもろともッ!?』

「我慢比べといこうじゃねぇかッ!!」


 エルダーレイスはシクロの光球に肉体を焼かれながら、そしてシクロは光球の熱に加えてエルダーレイスの呪いによるダメージを受けながら。

 体力の残ったほうが勝つ、というチキンレースが始まった。


 だが――さすがにシクロの方が分が悪かった。

 熱と呪いの二重のダメージにより、シクロは一気に衰弱していく。


「……くそッ!!」

『ぐうっ、だがあともう少しで、貴様の肉体に入り込めるぞッ! そうなればもう攻撃も不可能だッ!!』


 シクロが気づくと、エルダーレイスの肉体はもう半分以上がシクロの身体に溶け込むようにして入り込んでいた。


「ちくしょう、このままじゃ……」


 シクロは朦朧とする意識の中で考える。自分の身体を、エルダーレイスの呪いか何かの力が侵食していくのも感じながら。

 どうにかエルダーレイスを、身体から追い出す方法は無いかと。


「気休め程度、だろうけど……ッ!!」


 そしてシクロは、咄嗟に『時計収納』を発動。

 収納空間の中から、ストックしていたエネルギーキューブを取り出す。


 エネルギーキューブは摂取することで、僅かではあるが治癒の魔法に近い効果がある。

 これを使い体力を回復し、エルダーレイスとのチキンレースで優位に立とう、と考えたのだ。


「――あぐっ!」


 既にエルダーレイスに乗っ取られ始めているのか、自由の利かない腕を必死に動かし、どうにか口の中にエネルギーキューブを放り込む。

 すると――シクロも予想していなかったほどの、驚くべき効果が現れた。


『ぐああぁぁぁああッ!!? なんだこれはァッ!?』


 エルダーレイスが突如苦しみの声を上げる。それも、今までに無いほど強烈な叫び声だった。


『ま、まさか……これは……生命の輝きか……っ!』


 呻きながら、エルダーレイスはようやく乗っ取れそうだったシクロの身体から離れていく。

 これが最後のチャンスだ、とばかりにシクロは攻撃を仕掛ける。


「消え去れッ!」


 とびっきりの強い力を込めて、巨大な光球を生成。

 ふらついており、回避行動を取る余裕もないエルダーレイスを巨大な光球はたちまち飲み込む。


『ぐあああぁぁッ!! 貴様ァッ! よくも、よくもぉぉおおおッ!!』


 そして――エルダーレイスは恨みの叫び声を上げながら、光球のダメージを受け、煙のように立ち消えていく。


「……今度こそ、やったか?」


 その後、シクロはしばらく周囲を警戒していた。

 だが、エルダーレイスが再び現れる様子は無かったので、ようやく息を吐き、警戒態勢を解いた。


「――はぁっ! 危なかったぁっ!!」


 思わぬ苦戦をしたことで、シクロは激しく後悔をしていた。

 もっと慎重に戦っていれば。あるいは、戦いに入る前から警戒しておけば、もう少しは安全に勝つことが出来ていたかもしれない。


 そうして、シクロは自分が力を手に入れて随分と自惚れていたのだと理解した。


「もっとこれからは、気を付けていかないとな。ボクより強いヤツなんて、きっといくらでもいるはずだから。それを忘れちゃ駄目だ」


 そう一人つぶやくと、シクロはパンッ、と自分の頬を叩いて気合を入れる。


「――よしっ! 反省は終わり! 出発しよう!」


 シクロは立ち上がり、身体を伸ばし、ストレッチをする。


「それにしても……エネルギーキューブが無かったら、危なかったな」


 エルダーレイスに対して、想像以上に有効だったエネルギーキューブ。

 エネルギーキューブが言わば生命エネルギーの塊のようなものだと考えると、ゴースト等と同類のエルダーレイスに効いたというのも納得出来なくはない。


 とはいえ、あの場面でエネルギーキューブを口にしたのはほぼ偶然の思いつきだった。

 それが無ければ、負けていた可能性は高い。


「って、そういえばエルダーレイスに身体を乗っ取られそうになってたんだったな。……異常は、無いよな?」


 不意に不安になって、シクロは自分の身体を触って確認する。

 特に違和感のある場所は無く、ダメージもエネルギーキューブのお陰で徐々に回復しつつある。


「怪我は――ってうわッ!? なんだこれ!?」


 最後にシクロは、オリハルコンの剣を鏡のように使い、顔周辺にも傷が無いかを確認した。

 すると――剣に映ったのは、まるで別人のように髪の色が変わってしまったシクロの姿であった。


「髪が……真っ白になってる? うわあ、呪いのせいかな、これ。治るかなぁ……」


 ぼやきつつ、シクロは自身の髪を触って確かめる。白く色が抜けた以外の異常は、特に感じられない。

 ひとまず、髪のことは保留しておくことにした。


 最悪、髪が白いだけなら特に実害も無い。もし治らなくとも、他に実害が無ければ問題にはならない。

 よって、シクロは特に気にしないこととした。

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