16 成長を実感
シクロが洞穴を出ると、すぐにその気配に気づく存在がいた。
そう、例の人面の怪物であった。
「くこここ――」
「キモイんだよッ!!」
シクロは一瞬にして距離を詰め、素早くオリハルコンの剣を生成。
そして袈裟斬りで怪物を一刀両断。
「ぎゃっ!?」
断末魔の叫びを上げ、一瞬にして絶命する怪物。
当然――怪物はこの一匹ではない。
「くこここ!」
こいつは獲物ではなく敵である、と正しく認識できた怪物たち。
その内の一匹が、全力でシクロに向かって飛びかかる。
「――ははっ、遅いんだよッ!!」
シクロは――かつては目で捉えることすら出来なかった怪物の動きを、完全に見きっていた。
ひらりと身をかわしながら、怪物の勢いを利用してオリハルコンの剣を水平に振るう。
すると、怪物はあっさりと上下に両断される。あっけない決着であった。
「くここっ!!」
「くこここ――」
怪物達は、シクロが圧倒的な強者であると悟った。
コミュニケーションを取るかのように何度か鳴いた後は、シクロに背を向け、逃げ出した。
「……ははっ。今じゃボクが逃げる側じゃなくて、アイツらに逃げられる立場か」
呟きながら――シクロは素早く後ろに振り返る。
そして振り返りざまに、剣を一閃。カエルは真っ二つに両断される。
そこには、先程まで岩に擬態していたカエルの魔物がいた。
不意を突くようにシクロへと襲い掛かったものの、シクロは時計感知の効果を駆使し、事前にカエルの行動を察知していた。
故に、あっさりと後方からの不意打ちにも反応し、迎撃が出来たのであった。
「残念だったな、ボクの感知は完璧だ。いくら擬態しても――お前らの身体に血が『流れている』限り、認識できないなんてことはありえないんだよ」
そう呟いたシクロは、さらに攻撃を繰り出す。
今度は時計生成により水と砂を生み出し、これを超高速で圧縮して射出する。
いわゆるウォーターカッターの状態となった水の刃は、岩に擬態して隠れていたカエルの魔物たちを正確に貫き、切り裂いていく。
数にして、7匹もの隠れた魔物を正確に見抜き、一瞬にして撃破。
「……さて。この調子でどんどん行こうか」
こうしてシクロは順調にダンジョン脱出という目標に向かって進むのであった。