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04 聖女と賢者




 マリアが連れて行かれるのを、シクロとアリスは唖然と見ていることしか出来なかった。

 司祭たちの切羽詰まった様子に、なんとも言えない迫力を感じて近づけなかったのだ。


「……それにしても、まさかマリアが『聖女』様になるなんて」

「ねえお兄ちゃん。聖女って、『職業スキル』の中でも特にすごいやつなんだよね?」

「うんそうだよ。何十年も持ち主が居なかった、本当に希少な『職業スキル』だって言われてるはずだよ」


 シクロはアリスの問いに答える。


 この『職業スキル』とは。読んで字のごとく、何らかの職業を表すような名前を持つスキルのことである。


 基本的に、スキルとは『力持ち』や『器用』、『魔力増大』などといったように、効果そのものを名前で表している。

 こうしたスキルを『一般スキル』と言って、1つのスキルに対して1つの効果が発揮される。


 これに比べて、『職業スキル』は『聖女』や『鍛冶師』、『聖騎士』や『勇者』など。名前だけでは効果が分からないという特徴がある。

 そして――何よりも重要なのは、この1つのスキルに対して複数の効果が発揮される場合がほとんどなのだ。


 例えば『鍛冶師』には『力持ち』や『鉱石鑑定』に『武器鑑定』、『火属性耐性』などのスキルと同じ効果が含まれていることが知られている。

 そうした理由から、『職業スキル』とは『一般スキル』よりも上位のスキルであるという認識をされている。


 そして――だからこそ、この国ではそんな特別な才能を持つ人材を無駄にしないために、ある法律が存在する。

 それは、『職業スキル』持ちは、そのスキルの名前の通りの職業に就かなければならない、という法律である。


 例えば『鍛冶師』持ちなら、どんなにか細い女の子であろうと、武器が嫌いであろうとも、スキルの効果は絶大なので必ず鍛冶師としては大成する。

 だから、国によって本当に鍛冶師として働くように定められているのだ。


 そして今回のマリアの場合は、『聖女』なのだから当然教会の聖女として働くことが義務付けられている。


「……マリアに負けないように、ボクも立派なスキルを手に入れないとね!」


 と、意気込むシクロ。婚約者が聖女で、自分がただの『器用』とか『力持ち』では示しがつかない。

 だからこそ、よりいっそう良いスキルが欲しくなってしまう。


「どうする、お兄ちゃん? 先に行く?」

「……いや、もうちょっと覚悟を決めてから」


 だからなのか。シクロは緊張して、アリスに先を譲る。


「わかった。……お、お兄ちゃんの為じゃなくて、私が先に行きたかっただけなんだからねっ? 勘違いしないでよねっ!」

「うんうん、分かってるよアリス。行っておいで」


 こうして、アリスが儀式を受けに向かう。


 水晶の前に立ち、祈りを捧げる。

 すると――また、マリアの時のようにとてつもない光が辺りを埋め尽くした。


「なっ!? またなのかっ!?」


 儀式を執り行っている司祭が驚きの声を上げる。


 そうして少し経つと、光は収まる。

 水晶には、しっかりと文字が浮かんでいた。


 これを読んで、また司祭は目を見開き、声を上げた。


「け、けけっ、『賢者』だとォ!?」


 ――なんとマリアに引き続き、アリスまで職業スキルを手に入れてしまったのである。

お読みいただきありがとうございます!


本日の連続投稿はこの話で終わりです。

明日からも1日4回、9月5日まで連続投稿が続きますので、是非お楽しみください!


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