10 あの日の真相
「え? ブジン、さま? なんで?」
「ははは! 察しが悪いとは思っていたが、ここまでとはなぁ!!」
ブジンはミランダが見たことも無いような醜悪な表情で、声を上げて笑う。
「そもそも、おかしいだろ? あの馬車を手配したのも、御者を手配したのも俺だぞ? 御者がグルだったんだから、当然そんなヤツを手配した俺もグルに決まってんだろ!」
「そん、な――」
ミランダは、これまで信じ続けてきたブジンという希望に裏切られ、絶望する。
あまりにもの事態に、現状を受け入れない為の理屈を必死に考える。
「ち、ちがうわよね? ブジン様は、あくまで私を助けるために、ここに潜入するためにそんな嘘を――」
「……ぷっ、クハハハッ!! マジかよ、心底おめでたい頭してんだなァ! 取り柄は顔と身体だけってところか? よくもまあそんなオツムで薬師なんてやってられたなぁ?」
ブジンに煽られ、目の前が真っ暗になるミランダ。
それでもミランダは状況が受け入れられず、ブジンに否定してもらおうと必死になる。
「う、うそよね? ブジン様は、だって、あの時も私を助けて――」
「はぁ? まだ分かってねえのかコイツ?」
ブジンは顔を顰めながら、ついに真相を話す。
「そもそも、俺はお前を助けたことなんて一度もねぇんだよ!」
「え? だって、ブジン様はシクロくんを止めてくれて……」
「はぁ? いい加減理解しろよバーカ。逆だよ、逆」
逆、と言われてようやくミランダも理解が出来る。
だが――それでも、理解したくはなかった。
「いやっ! 嘘、そんなの違うわっ!」
「違わないなァ? 俺がテメエをレイプしてやろうとしてたところに、あのクソガキが邪魔に入りやがったんだよ。お陰で、テメェを犯すってだけの為にえらい手間をかけされられたぜ」
ついにブジン自身の口から、はっきりと真実を告げられた。
ここまで言われてしまえば、もうミランダも理解するしかなかった。ブジンこそが本当の強姦魔であったのだと。
「じゃあ、私は今まで……」
「そうだよ。テメエは今まで、自分をレイプしようとしてる男を相手に、ニコニコヘラヘラしてやがったんだよ。自分を守ってくれたガキンチョのことなんかちっとも気にせずになぁ!」
「うぅ、そんな……シクロくん……」
項垂れるミランダ。シクロに対する罪悪感が湧き上がり、現状の絶望感とも混ざり合って最悪な気分に陥っていた。
そんなミランダをみて、ブジンは舌舐めずりをする。
「へへっ。そうだよ。そうやって自分のしでかしたことに絶望するツラが見たかったんだよ、俺は!」
言って、ブジンは腰に装備していたナイフを抜く。
そしてミランダの身体を縛っていたロープを的確に切り裂き、自由にした瞬間に押し倒す。
「きゃあっ!!」
「もっと泣け、叫べよ? でなきゃ、こんだけお預けされた分の価値がねぇ。絶望して、泣き喚くテメェを――ぐちゃぐちゃに犯して性奴隷にするのが、ずっと楽しみだったんだからなァ!!」
ブジンはミランダを押し倒した姿勢のまま、その服にも手をかけ、ナイフで切り裂いてゆく。
「やめて、イヤぁああっ!!」
叫び、もがいて抵抗するミランダ。
しかし、ブジンは王都で衛兵が出来る程度には戦闘能力の高い男である。当然、ただの薬師に過ぎないミランダでは無力過ぎた。
こうしてミランダは誰にも知られぬまま、王都から遠く離れた街の地下で、牢獄に囚われたまま、ブジンによって弄ばれることとなった。
行方不明になったことは、やがて王都のご近所さんの間でも噂となる。
旅行途中に襲われたのだろう、と誰もが噂する。
そして――まさか衛兵であるブジンに捕まっているとは誰一人として考えはしなかった。