03 スキル選定の儀式
スキル選定の儀式は、教会で毎年一斉に行われる。
スキル選定の神に祈りを捧げ、そしてスキルを貰うというシンプルな方法。
これには色々と道具が必要で、だからこそ教会で行わなければならないのだ。
だから――教会には、沢山の少年少女が集まっていた。
「うわあ、すごい人数ですね」
「そうだね。毎年、王都の子どもたち全員を集めてやるらしいからね」
「お兄ちゃん。はぐれたりしないでよねっ!」
「ふふ、はいはい。分かったよアリス」
そうしてシクロは、アリスとマリア、二人の手をしっかり握って進んでいく。
妹の性格を熟知しているシクロにとって、つんつんした言葉の裏にある本音を読み取るのは難しいことではなかった。
そうしてしばらく経ってから、ようやくスキル選定の儀式が始まる。
前の方に並んだ者から、順番にスキルが与えられていく。
どんなスキルが与えられたのかは、儀式に使う道具の一つである巨大な水晶玉の中に文字が浮かび上がるので、これで分かるようになっている。
ただ――この文字が、現代語ではなく古い神様も使っていたとされる古代語で書かれているのだ。
だから、スキルの名前は儀式を行う司祭様でないと分からない。
「――君のスキルは『力持ち』だね」
というふうに、スキルが与えられた後は、司祭様がどんなスキルを貰えたのか教えてくれる、という仕組みだ。
とまあ、そんな仕組みで成り立っているスキル選定の儀式は、人数が多いのもあってサクサクと進んでいく。
シクロたちの前に並ぶ人たちも、どんどん少なくなっていく。
やがて、シクロたちの順番となった。
「まずは、私から行きますねっ!」
そう言って、前に出たのはマリア。
儀式の水晶の前に立ち、祈りを捧げる。
すると――なんと、まばゆい光が辺りを埋め尽くしたのだ。
「うわああっ!?」
「なんだこれ!?」
子供たちが口々に騒ぐ。
そして司祭も驚いていた。
やがて光が収まると、水晶に文字が浮かんでいた。
司祭が慌てて文字を読むと、目を見開いて驚く。
「な、なんと!? せ、せっ、聖女! 聖女様が現れたぞっ!!」
そして、大きな声で宣言した。
すると、どこに控えていたのか、沢山の司祭らしき人が姿を表す。
そしてマリアを取り囲むようにして言った。
「聖女様。今後のご説明をいたしますので、是非こちらへご同行願います」
「えっ? えっと、あの」
マリアは司祭と、シクロの方を交互に、何度も見た。
けれど、それを遮るようにまた別の司祭が立ちはだかる。
「どうか聖女様。悪いようには致しませんので」
「……はい。わかりました……」
こうして――何が何やら分からぬうちに、マリアは教会の人間によってどこかへと連れられて行くのであった。