18 光の戦士スターライト
弾けた光が、シクロとミストを包み込み――一つに融合する。
光は一人の人間の姿を象ると、周りで次々と弾けていく。
光が弾ける度に、装備らしきものが光の中の人物の身体を覆っていく。
全身が武装で包まれた後、最後に光は――大きく弾けて、巨大な武器を形作る。
それはなんと、ハンマー!
光の中の人物の身長以上に巨大なハンマーが形作られる。
そしてこれが最後と言わんばかりに、光の中の人物は手を伸ばし――光を突き破ってハンマーをその手に掴んだ!
「やった! 成功よ!」
アリスが喜びの声を上げると同時に光は収まり、光の中の人物が姿を現した。
「これは――どういう状態なんですかっ!?」
そこに居たのは――ミストの声で喋る、ミストによく似た人物であった。
しかし身長はミストよりも高く、カリムと同程度。
一方で髪は短くなっており、セミロング程度で落ち着いている。
「説明しよう! かつて断罪神との戦いで、お兄ちゃんとミストちゃんは魂レベルで一つとなった……その経験を活かして、二人を一人の戦士として融合、パワーアップさせる魔道具が、そのユニコンなのよ!」
アリスに言われて、ミストによく似た人物は自分の両腕を見る。
右腕と左腕、両方にユニコンが装備されていた。
他にも、全身を包む装備は鎧というよりもドレスに近い形状をしており、様々な部位にフリルやリボンがあしらわれている。
色も黄金とも、黄色とも言えるような色を基調としており、シクロとミストどちらの服装とも違った装いであった。
「なるほど、この『私』と『ボク』が一つになったような感覚はそのせいなんですね」
「さすが理解が早いね、スターライトちゃん!」
「スターライトちゃん?」
「お兄ちゃんでもミストちゃんでもない戦士なんだから、新しい名前が必要でしょ?」
アリスの理屈により、ミストによく似た人物はスターライトと命名される。
「ともかく今のスターライトちゃんならお兄ちゃんとミストちゃんの力を単純に合わせたよりもずっとすごい、超パワーを発揮できるってワケ!!」
「でも確かに……今なら、何でもできそうな気さえしてきますね!」
言うと、スターライトはニヤリ、と笑う。
それはミストであればやらないような表情。
「――出てきおるでッ!!」
そこで丁度、壁を破られたカリムが後退するように飛び退く。
ディアブロはゆっくりと、堂々と、三人と一匹へと歩み寄る。
「スターライトちゃん、何となく力の使い方が分かるでしょ!」
「ええ、もちろん!」
「やっつけちゃって!!」
「任せてください!!」
そしてスターライトが二人と一匹を守るように、前へ出る。
「掛かってきなさい」
煽るようなスターライトの言葉と同時に――ディアブロが突撃する。
大質量、超速度、超硬度の体当たり。
シクロ達では到底防ぐことも出来なかった一撃を――しかし!
スターライトは、片腕だけで受け止める。
「ハエが止まってしまいますよ?」
ニヤリ、と笑ってスターライトはディアブロを蹴り飛ばす。
その衝撃はスターライトの体躯からは想像も出来ない威力であり、目にも止まらぬ速さでディアブロの巨体を吹き飛ばす。
壁に追突するかという寸前になって――なんとスターライトが追い抜き、巨大なハンマーを振り下ろす。
バキバキ、と音を立てて装甲が砕け、床に埋まるディアブロ。
「冗談キツイですよ、ディアブロさん?」
スターライトは言って、手をクイッと動かし、ディアブロに立ち上がってみせろとジェスチャーする。
この煽りが伝わったのか否か。
ディアブロの目が光り、飛び上がってスターライトから距離を取りつつ立ち上がる。
即座に装甲の修復は開始するが、完全な回復までは時間が掛かる様子。
目も鈍く明滅しており、消耗を感じる有り様であった。
「残念です、まるで相手になりません」
はぁ、とため息を吐くスターライト。
「まあ、でも仕方ないですよね? 生まれたてでよちよち歩きの赤ちゃんですもんね? 教えて貰わないと戦い方も分からないでしょう?」
ひたすら煽るスターライト。
これが融合したことによる影響なのか、それとも圧倒的な力からくる万能感によるものなのかは不明だが――ディアブロには確かに効いた。
次の瞬間、ディアブロの姿が消える。
超スピードで細かくステップを繰り返しながら、目にも止まらぬ速さでスターライトの周囲を駆け巡る。
一つ一つの動作は直線的であるものの、これだけのスピードで、これだけ細かく軌道変更をされてしまうと、最早捉えることは不可能に思えるほどであった。
だが――スターライトは不敵に笑う。
「お上手ですねぇ」
次の瞬間――背後から奇襲を仕掛けたディアブロの動きを捉え、的確に裏拳で迎撃する。
無論、ディアブロもこれで終わらせはしない。即座に体勢を回復し、再びスターライトを翻弄しようと駆け回る。
そして何度も――襲撃する。
だがその都度、スターライトが容易く迎撃し、跳ね返されてしまう。
「馬鹿の一つ覚えと言いますけど、つまり馬鹿でも一つは覚えていられるんですよ」
言うと――次の瞬間、スターライトを引き裂こうとしたディアブロの腕による一撃が受け止められ、動作が封じられる。
「無駄なんだよ、って、分かってもらえます?」
スターライトはそのまま力技で、ディアブロを床に叩き伏せる。
メギャ、と異音を立てて、ディアブロの足関節が不自然な方向に折れ曲がった。
さながら、三メートル超えの巨体を持つディアブロが、可憐な女性の姿をしたスターライトに跪くかのような構図であった。