01 帝国内へ
お久しぶりです。投稿を再開します。
本当はもう少し話を先まで進めてから投稿するつもりでしたが、思ったよりも話が長くなりそうなので、章を二つに分けて先に十二章だけ投稿することにしました。
これから毎日一話ずつ投稿していきますので、よろしくお願いいたします。
神代の怪物――ベヘモスとの死闘を終えたシクロ達。
現在、バアルの先導に従い、魔王城を目指し帝国内を進んでいた。
シクロが『時計生成』で生み出す自動車『ファーヴニール』は、十分な走破性能を持つ。
少々荒くとも、軍が行き来できる程度の道であれば走行できる。
故に、一行はファーヴニールに乗って移動していた。
「はーい、ぺぺちゃん。ご飯ですよ~」
「くおん……」
怪物だったもの、『ぺぺもす』は現在、すっかりペット扱いとなっている。
エサ用の不味い木の実をトングでつかみ、ユラユラとぺぺもすの眼前で泳がせるミスト。
美味しくないので、ぺぺもすは仕方なし、といった様子で食い付いた。
「我慢しろよ、ぺぺもす。お前のエサになるようなものなんて用意してないんだ。どこかで家畜用のエサでも譲ってもらうまでは、適当に採取したもんで勘弁してくれ」
「く、くおん!」
家畜用でも、一番いいのを頼む、と思念を伝えるぺぺもす。
「贅沢なやっちゃなぁ……」
そんなぺぺもすの様子に、呆れた声を上げるカリム。
「何にせよ、補給と異変の報告に集落へ向かうのだ。大して変わらん」
部外者のように素知らぬ顔をしながら、会話に口を挟む同行者、バアル=ゼフォン。
そして一連の流れが耳に入っているのかいないのか、紙に筆を走らせるアリス。
これら全員が、シクロの生成した『ファーヴニール』内に乗り込んでいる。
「……アリスは、何をやってるんだ?」
運転の片手間、シクロは真剣な様子で紙と向かい合うアリスに声を掛ける。
「ちょっと新しい理論構築、みたいな?」
「何のために?」
「ベヘモスぐらいの強敵と、ダンジョン内で遭遇するパターンに備えてかな?」
アリスは言うと、紙から目を離してから語る。
「私達が強敵と遭遇した回数はニ回。一度はディープホールの最深部。もう一度が、ベヘモス。でも、ディープホールのボスは万全とは言えない状態の相手だった。そうでしょ?」
アリスはバアルに聞かれていることを踏まえてか、ぼかして言うが、つまり断罪神のことを言っていることは明らかだった。
実際、断罪神が自分の蓄えた力を不十分だと評価していたことをシクロは覚えていた。
「そう考えると、今後のダンジョン攻略でベヘモス級の敵が出てきても不思議じゃない。でも、ダンジョンでDEMは出せない」
「まあ、あんなデカイもの、普通のダンジョンじゃあ無理だろうな」
「だから考えてるの。DEM以外で、戦力アップする新しい理論」
アリスの言葉に、シクロは納得する。
しかし。
「そんな都合のいいもの、すぐに見つかるもんなのか?」
当然の疑問が口をついて出る。
「もちろん!」
すると、まさかの肯定が帰って来る。
「私なりに考えてみたけど、やっぱりお兄ちゃん一人で発揮できる最大パワーはDEMが限度。機械的な仕組みで、より大きなパワーアップをしようと思ったら、どうしてもスケールが大きくなっちゃう。でもね!」
ビシッ! と、自分を親指で指差してから言うアリス。
「私たち、仲間の力を合わせれば話は別なの!」
「……うん? 何を普通のことを?」
言葉にしたシクロだけでなく、全員が同じことを思う。
「いやいや、そうじゃなくて! 何か魔法とか、機械的な仕組みで、私たちのパワーをお兄ちゃんに預けて、自分のパワーと一緒に使ってもらおうっていうのが私の言ってる『力を合わせる』ってことなの!」
「具体的には?」
「……考えちゅーでーす」
つまり、思いつきを口走っているにほぼ等しいということである。
「……形になるのを期待してるよ」
「任してて、お兄ちゃんっ!」
とまあ、こういった話をしている内に、シクロ達一行は最初の集落へと到着し、立ち寄ることとなった。