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11 ベヘモス騒動の後始末




 シクロ達一行はぺぺもすを連れて、魔王軍と合流する為に歩き出した。


 そして、道中でシクロはぺぺもすについての詳細を全員に伝える。


「……本当に大丈夫なのか?」


 訝しげに尋ねるバアルであったが、それにはシクロも同意する。


「正直、悪さする気満々だと思う。けどまあ、今さら殺すってのも何ていうか、後ろめたいんだよな」


 言って、シクロはぺぺもすに視線を向ける。

 ちょうどミストが抱きかかえ、よしよしと頭や身体を撫でて可愛がっているところだった。

 ぺぺもすも満足しているのが、表情からよく伺える。


 見るからに愛嬌のあるぺぺもすの造形は、それだけで殺処分を躊躇う効果があった。


「まあ、ボクの目の届く範囲で悪さするようならすぐに殺す。こっそり魔力を何かしらの方法で増やして強くなろうとしてても殺す。だからまず大きな問題にはならない、と思う」

「ふむ……この貧弱な生物が今のまま人に危害を加えるのも難しいか」


 シクロの物騒な言い分に、バアルも理解を示す。


「ならばもう一つ、聞いておきたいことがある。残ったベヘモスの死体の扱いについてだが」

「ボクが全部引き取らせてもらう。どっちかだけに渡すと、戦力のバランスが崩れて死人が出るからな」


 言いながら、シクロは既に『時計収納』で収納済みとなっているベヘモスの死体から、鱗を一枚だけ取り出して見せる。

 それ一つで盾にもなりそうな大きさの鱗を手に、シクロは語る。


「これ一つでも、オリハルコンに匹敵する素材だと思う。こんなのが大量に軍へ流れたら、間違いなく死人が増える」


 均等に王国軍と魔王軍に配ったとしても、全てが軍で使われる保証も無ければ、全軍に装備として行き渡る訳でもなく、どのような装備に利用するかにも選択の余地がある。

 結果、戦力に極端なムラが出来る形となり、両軍に余計な犠牲が出るのは予想出来た。


「でもまあ、個人的なプレゼントとして、アンタには幾らか融通するつもりだよ。足止めにも協力してもらったしな」

「そうか」


 短い返事ながらも、バアルは喜んでいるようであった。

 スケイルメイルにするにしろ、新しい槍の素材にするにしろ、現状のバアルの装備を遥かに上回る性能になることは間違いない。


 元よりスキル持ちの魔族であり、単独で戦況をひっくり返す実力があるからこそ、バアルに渡す分には問題無い。


 むしろバアルは指揮官として後方から指示を出すのが基本であり、戦場に出るのも不利な戦況をリセットするための急場しのぎが多い。

 強ければそれだけ軍の被害が減る、という見方も出来る。


「その代わり、必要以上に王国軍を叩くのは勘弁してくれよ?」


 故に、シクロもその点に念を押す。


「当然だ。こちらの目標は侵略でも虐殺でもない。必要以上の戦果は王国軍の反撃を激化させ、結局こちらの被害が増える」


 当然、バアルも指揮官である以上、そういった部分はよく理解しており、シクロに頷いて見せる。


「ありがとう、バアルさん」

「礼には及ばん。――こちらこそ、あの怪物を撃破してくれて助かった。感謝する」

「じゃあ、助かったのはお互い様ってことで。気にしないでくれ」


 言って、シクロはバアルに右手を差し出す。


「しばらくは一緒に行動することになるんだし、仲良くしよう」

「ふっ。王国の人間と友誼を結ぶとは思ってもみなかったな」


 バアルは言って――笑みを浮かべながら、シクロの右手を右手で握り返す。


 その握手は初対面時の義務的なものではなく――確かな信頼関係が結ばれた証。

 こんな関係が、人と魔族の友情が、少しでも広がるといいな、と思うシクロであった。

これにて第十一章、東の辺境は終了となります。


個人的には、ずっと出したかった巨大ロボが出せて大満足の章となりました。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もしよろしければいいねや評価ポイントを頂けると今後の創作の励みになります。


続きはまだプロットもちゃんと仕上がっていないので、書き上がるまで少々お時間頂きます。

お待たせすることになりますが、今後とも当作品『時計使い』をよろしくお願いいたします。

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