表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/200

14 覚悟を決める




 その名前はミランダ=リリベル。シクロのご近所の薬品店を経営している女性であり、シクロもよく知っている人物だ。

 母が仕事で忙しい時は、ミランダに面倒を見てもらったこともある。シクロや妹のアリスにとっては、姉のような存在でもあった。


 そんなミランダが、悪辣な計画の標的にされようとしている。


(……警吏に知らせないと。せめて、犯人たちの顔を確認してから――)


 そう考え、シクロは角からこっそりと顔を出し、悪魔の計画を立てている者たちの姿を確認しようとする。

 そして――その姿を見て、絶望した。


(そんなッ!? あの制服――警吏の制服ッ!?)


 なんと、そこに居た男たちの中に一人――本来であれば街の安全を守るはずの存在、警吏の制服を着ている男が立っていたのだ。

 シクロは驚きつつも、急いで顔を引き、隠れる。


 そして考える。

 警吏が強姦魔の中の一人だということは――これから警吏に通報したとしても、その情報は握りつぶされるかもしれない。

 そもそも、犯人の中に警吏がいます、なんて言って信用してもらえるだろうか。


 色々な考えがめぐるシクロ。ただでさえ、この日仕事をクビになっており、頭がいっぱいだというのに。

 突然出くわしてしまった強姦計画の現場に加え、犯人一味の一人は警吏という状況。


 どうするべきなのか考えようにも、パニックに陥って冷静な考えがまとまらない。

 このまま男たちの前に飛び出して、殴り飛ばしてやろうか、などとも考えてしまう。


(――ミランダ姉さんを守るには……一つしかない、かな)


 そして、覚悟を決めてしまう。


 警吏に通報はするつもりだ。しかし、それだけでは不十分。

 だから――シクロはやるのだ。


(ボクが、直接こいつらの計画を止める! ミランダ姉さんの家の近くに隠れて、コイツらが出てきたところで騒いで人を集める! それしかない!!)


 こうして……シクロは恐るべき強姦計画を止めるため、動き出すのであった。




 まず、シクロは警吏の駐在所に向かい、通報する。


「あのっ! すいませんっ!」

「ん? どうしたのかな?」

「実はですね――」


 路地裏でシクロが見たことの、ありのままを警吏に通報する。

 もちろん、犯人一味の中に警吏がいたことも通報した。


 だが……信用は得られなかった。

 そもそも見間違いであることを疑われてしまったのだ。

 それでも警戒はしておく、とその場では言ってもらえたのだが……通報の内容をまとめる段階になり、シクロの職業が元時計技師、現在無職であると判明し、さらに信用を失ってしまう。


 これこそ、シクロが最も恐れていた展開であった。スキルという強力な力を持つ者がありふれているこの世界。仕事についていない無職など、到底ありえないからだ。

 どれだけ無能でも、スキルの力さえあれば仕事は出来る。だというのに職人ギルドをクビになるような人物は、どれだけ問題のある人物なのか。


 警吏から見て、むしろシクロの存在そのものが怪しく見えたに違いない。

 それがシクロ自身にも理解できていたため、通報を信用してもらえないかも、とは理解していた。


 だから――シクロは最後の手段に出る。

 自分の手で、直接ミランダを守るために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] どうもこんにちは。 時計使いという面白そうな話題を見つけたので読ませていただいています! 現在も更新中のようで、早く最新まで追いつきたいと思います! [気になる点] ただでさえ、この日仕事…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ