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旅日記  作者: 山菜歩
9/20

P.09:〜×月×日 ペルー某所にて〜

少々鬱展開気味です。

苦手な方は閲覧注意願います。

私は歩。

旅が趣味の人間である。

旅の相棒は大きな革のトランクひとつ。

気の向くまま、時間の流れるまま、私はどこまでも行く。

そんな旅の途中の話である・・・。


―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

危険度を完全に無視してこの国に入国していた私を、現地の人が驚きの表情で迎えてくれた。

何せ、紛争地帯という危険な場所である。

そして、私がここを訪れた理由を告げ、更に驚かれることとなった。


「人が乗る乗り物ではない」


そう言われる乗り物がこの地にあるらしいとの情報を手に入れ、私はここに足を運んだのだった。


普通なら、まっすぐに空港に向かえるのだが・・・。

時間はたくさんある。

モノズキな私は高山鉄道という「最凶」らしいの乗り物に乗ることにしたのだった。


だって。

高い山を登って、隣町まで行くなんてステキじゃない!

プラットフォームでトランクに腰掛けながら、私は鼻歌交じりで電車を待っていたのだった・・・。



実際乗車してみて。

・・・どこが、「人が乗る乗り物ではない」んだろう??

景色は荒涼としているけど、乗客もそこそこいるし、結構快適じゃん。


その時はまだ、そう思っていた。



―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


数十分くらい経った頃だろうか。


どさ。

どさどさ。


後ろから、重たい音がした。

荷物が落ちたのかな?と思って後ろを振り向いたら。


乗客3人が、倒れていた。


ひとりは顔面蒼白で、唸りながら頭を抱えている。

ひとりは、意識が混濁している。

ひとりは痙攣を起こしている。


・・・「人が乗る乗り物ではない」と言われた本当の意味を理解した瞬間だった。


高山病。


下手したら命を落としかねないぞこれ!!

炎熱地獄の列車には乗ったことはあるが、これは炎熱地獄以上の地獄だ。


携帯用の酸素ボンベを取り出し、私は口に当てて、新鮮な酸素を吸う。

動作確認の後、比較的軽症の人に酸素を吸わせた。

気休め程度にしかならないだろうが、ないよりマシだろう。


高山病の治療は低地に移動するしか方法はない。


あとの2人は・・・重症の状態だ。

即時に専門の集中治療が必要だ。

ここまで来ると、もう酸素ボンベは役に立たない。

私には、どうすることもできない。


車掌に状況を伝え、あとは間に合ってくれることを祈るばかりだ。



―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


幸い私は何ともなかった。

丈夫な身体でよかった・・・。



軽症の乗客は、低地に降りてしばらくしたら回復したようだった。

何を言っていたかはわからなかったが、握手を求められた。

感謝されているのだろうか?

私は握手に応じ、乗客にぎこちなく微笑んだのだった。


重症の乗客2人は、すぐに病院に搬送された。

私も救急車に乗り込もうとしたが・・・軽症の乗客が私を引きとめた。

乗客が首を横に振る。


私は歯軋りをしたが・・・頷いたのだった。

彼が言わんとした事が何となくわかったのだ。



私は彼に会釈をすると、悔しさを振り切って足早に空港へと向かったのだった・・・。




fin...


旅日記シリーズ第9弾。


最後までお読み頂き、ありがとうございます。


高山鉄道>>

ペルーの中央鉄道(カヤオ−ラ・オロヤ間)をイメージしています。

海抜4781メートルを走行するのだから、高山病のリスクも伴う、まさに「最凶」の鉄道です。


自然の前には、人間って無力だよね。

友人と話した時にそんな話題になった事があり、書かせて頂いた次第です。


次回は少し、登場人物の視点が変わります。

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